Hyperion
小説版 時空警察ハイペリオン

(P-1)

中央線はまた人身事故で止まっていた。電車は荻窪駅でもう5分以上停車したままだ。中央線での人身事故は最早日常茶飯事だ(…って、いったいどーなってんの?)。もう誰も文句も言わない。
このままだと集合時間の16時に間に合わない。…確かにもう少し余裕を見て家を出れば間に合ったかもしれない。ううん、新宿なんかに寄らずに、渋谷からそのまま井の頭線に乗っていれば余裕で間に合った筈だ。
ちょっと新宿に寄ってみたかったんだ。そういえば、始めてこっちに来た時も、一番に新宿へ行ってみた。
そう言えば、あの子たちに始めて会ったのも新宿だった。
東口交番前で、肩を震わせてぼろぼろ泣いている女の子がいた。両手には大きなバッグを持って、迷子になった家出娘みたいな感じで咽び泣く女の子…大人の女とは言わないけど、子供でもない…そんな年の女の子が大声を出して泣いているのはやっぱり奇異な光景だった。
ひとり大声で泣く女の子に、近くにある交番にいる警官は声を掛けようともしない。行き交う人々も見て見ぬ振りをするばかりだ。
頭の悪そうな髪の毛の赤い男の子たちが、そんな彼女に声をかけた。何を言っているのか聞こえないが、優しくなだめてるような感じじゃない。男の子たちは女の子の髪をくしゃくしゃしたり後ろから肩を掴んだりし始めた。
見てるとなんかムカムカして来た。
「ちょっとあんた達…」
思わずそう言って止めに入ろうと身体が動いた。でもその前に
「あら、さりあさん!お待たせしちゃいました!」
泣いている女の子と同年代ぐらいの女の子が男の子達の間に入り、何事もなかったように笑顔で声をかける。
用語集

女の子が泣き止むのを見るとその子は男の子たちに向き直り
「さりあさんに何か御用ですか?」
と笑顔を絶やさず言った。丁寧だが迫力のある口調だった。 頭の悪そうな男の子達は、なんだか頭の悪そうな事を言いながら去って行った。
「るり香ぁ!久しぶりぃ!」
さりあと呼ばれた女の子はさっきまで泣いていたのが嘘みたいにコロコロ笑い、るり香と呼ばれた子とハグったりしてる。二人は顔見知り?のようだ。
「春日さりあ!夏沢るり香、ね」
そして、あたしも二人を知っていた。会うのはこの時が始めてだったが。
さりあとるり香は私に名前を呼ばれて、しばらく無言でいたが
「あなたは、もしかして…」と、るり香。
「ひかりちゃん!ひかりちゃんでしょ!」とさりあ。
始めて会う子にちゃん付けされるのは何だが、その通り。あたしの名はひかり。三ツ星ひかり。
あんた達と3ヶ月間、この時代で一緒に研修する事になった、時空刑事候補生SIGNA(シグナ)の一人だ。

あたし達は2207年からこの時代(2007年)へ来た。この時代の人に詳しく説明しても理解出来ないだろうし、理解されちゃうともっと困るので詳しくは話せないけど、SF小説や映画に出て来る『タイムパトロール』って知ってるよね?
時間移動が出来る様になってもう50年以上経つんだけど、時間移動が可能になったと殆ど同時に過去へ行って時間の流れ時間移動が可能になったと殆ど同時に過去へ行って時間の流れを自分の都合のいいように変えようとする「時間犯罪」を起こそうとする連中が出て来た。…ていうか、そもそも時間移動を可能にしようとした動機が、この「時間犯罪」を起こす為だったらしいんだけど。

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