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きょうの社説 2009年7月20日
◎ルビーロマン ブランド化へ真価問われる
流通2年目を迎える石川県産ブドウの新品種「ルビーロマン」の出荷が始まった。初競
りの最高値は昨年の2倍である1房21万円をつけて幸先のよいスタートとなったが、販売が本格化する今期は、全国ブランド化に向けて真価が問われる年である。今期の出荷量は、昨年の約5倍に当たる約4千房(約2トン)を見込んでいる。昨年の 平均市場価格は1房約9800円だったが、ことしは昨年より若干小ぶりな房も流通させるというから、県民が新品種を味わう機会も増えるとみられる。地元での評判や浸透具合は、全国展開を図るうえでも大事な指針となろう。 その一方で、流通量が増える分、「高貴な宝石」「貴婦人」などのイメージで売り込ん できた高級感をいかに維持するかが課題となる。 県がブランド化を目指す戦略作物のひとつであるルビーロマンは、昨年夏に初めて県内 市場に出回り、国内最大級の粒の大きさと鮮やかな赤色で全国的にも注目を集めた。今後の首都圏などへの出荷を見据えて、今年は東京の市場への輸送試験も計画している。 全国発信に向けては、夕張のメロンや宮崎のマンゴーのように「石川といえばルビーロ マン」と言われるようにまで認知度を上げるイメージ戦略、販売戦略を展開していく必要がある。「一度は食べたい」と思わせるルビーロマンによって、石川への関心を高め、人を呼び寄せる力を持つブランドを目指してほしい。それが長年、新品種の開発を進めてきた県の取り組みに見合う成果でもあろう。 生産面では、県が増産を図っているものの、高い栽培技術が求められるため、様子見し ている農家もいるといわれる。きめ細かい技術指導のほか、一層の高品質化に向けた技術開発を着実に進めてほしい。 さらに、ケーキや菓子をはじめ、従来の発想にとらわれない関連商品を開発して、付加 価値を高めることはできないだろうか。将来的には、ルビーロマンの産地という背景を生かした石川のワインづくりも考えられよう。得難い地元の食材を生かし切る多角的な取り組みを期待したい。
◎日米中で「底入れ」 世界経済のけん引役に
今年下半期の世界経済を占う上で、重要な三つの経済指標が公表された。一つは、米国
の09年実質国内総生産(GDP)の上方修正、二つ目は中国の4〜6月期GDPのV字回復、三つ目は日本経済が来年にはマイナス成長を脱し、1・75%のプラス成長に回復すると予想した国際通貨基金(IMF)の年次審査報告である。日米中の景気が最悪期を脱し、底入れの過程に入ったのは確かなようだが、楽観は禁物 だ。欧州の景気回復は遅れており、当面は日米中の三国、特に日中を軸としたアジア地域が踏ん張って、世界経済をけん引していくしかない。 注目点は、中国が世界同時不況からいち早く抜け出した可能性である。中国の4〜6月 期のGDPが前年同期比7・9%の高い伸びを示し、今年上半期では7・1%増加した。まさに急回復といってよい。4兆元(約56兆円)の景気刺激策が内需拡大の原動力となり、日本も中国向けの輸出が回復してきている。 懸念材料は、投機資金が株や不動産、セメントなどの商品市場に流入し、「ミニバブル 」の発生がみられることだ。中国政府は今年8%前後という成長目標の達成に向け、追加の経済政策を打ち出す構えであり、むしろバブルが弾けた後の反動が怖い。 米国経済の底入れも疑問符付きである。09年の実質成長率が4月時点の見通しから上 方修正され、マイナス1・0%〜マイナス1・5%に引き上げられたのは良かったが、失業率の見通しは4月時点より悪化し、米政府の予想を上回るペースである。回復が一過性に終わる懸念は消えない。 日本企業は米国経済の回復をにらみながら、当面は中国市場に活路を見い出そうとして いる。が、中国、米国ともに問題を抱えており、輸出頼みの回復は限界がある。IMFは、09年の対日経済審査報告で、来年以降のプラス成長を予測しながらも「内需主導型の成長に転換しない限り下振れリスクが残る」と指摘した。日本が内需拡大に真剣に取り組まざるを得ない理由である。
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