日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 何やらウイグル三昧で食傷気味だ、というお叱りを受けそうですね。

 しかし、日本のメディアにかつてこれほどに「ウイグル」という単語があふれたことがあったでしょうか?

 この好機を逃すとまた忘れ去られてしまうことになるので、日本人のため(将来を考えると断じて他人事ではないのです)、ウイグル人のために、当ブログはできる限り、まあ私の士気と体力が保たれている間はこの問題を追いかけたいと考えています。もちろん、他の話題にも目配りしていくつもりですけど。

 騒乱の発生したウルムチ市は圧倒的な軍事力によって表面上は事件が沈静化した感があります。ところがそれに取って代わるかのように、今回の事件を政局にしようとする動きが出始めているようにみえます。「ウイグル三昧」とはいいながら、政争というか権力闘争というか、そういう動きが垣間みれるようになったことを無視する訳にはいきません。

 ひょっとすると、舞台はウルムチから北京(中国政界)に移りつつあるのかも知れません。

 前回紹介したように、事件に関する当局発表を覆すような動きが出始めていることは要注目です。当局が「死者は現時点で197名」と発表し、7月5日のデモ隊への発砲については一切言及していなかったのに対し、あろうことか中国国内メディアから、

「7月8日時点で死者は200名以上」

「散発的な銃声が聞こえた」

 という、ちゃぶ台を引っくり返すようなルポが飛び出しました。前回紹介した『中国新聞周刊』の報道がそれに当たります。

 ――――

 なぜ当局発表に敢えて異を唱える記事が差し止められずに活字になったのかは目下のところ不明です。しかし今回のような大事件の場合、中国国内メディアは国営新華社通信から配信される記事を引き写すのが、しきたりといえば、しきたり。当局発表についてはなおさらのことです。

 ところがそれがないがしろにされてしまったのですから、これは政治的意図を秘めた記事ということを考えざるを得ません。

 こうなると当局発表の信憑性がますます疑われることになるのは必定。政治的な側面でいえば、当局発表を出した政治勢力に対し、反対勢力がそれを突き崩すような動きに出ている、ということになります。

 仮に当局発表が限りなく頼りない最高指導者・胡錦涛サイドから出されたものだとすれば、『中国新聞周刊』による報道はアンチ胡錦涛諸派が足を引っ張ったもの、要するに胡錦涛イジメということになります。差し止められなかったのは、仕切り役である党中央宣伝部がゴーサインを出した、ということになるでしょう。

 で、中国国内で『中国新聞周刊』がいうなればスクープをモノにした、という異例の事態まで話が進んだ訳ですが、今度はこれに続いてまたまた新展開。

 当局がいままで沈黙していた7月5日のウイグル人によるデモ隊と治安部隊の衝突状況において、実は治安部隊が発砲していて死者が出た、ということが新たに地元当局者によって明らかにされたのです。



 ●暴動でウイグル族12人射殺 中国、自治区幹部が認める(共同通信 2009/07/19/00:32)

 【ウルムチ18日共同】ロイター通信によると、中国新疆ウイグル自治区のヌル・ベクリ主席は18日、ウルムチ市内で5日に起きた大規模暴動に参加したウイグル族のうち12人を警官が射殺したことを明らかにした。

 ウルムチでは13日に傷害事件を起こしたウイグル族2人が警官に射殺されているが、暴動参加者の射殺を当局者が認めたのは初めてとみられる。主席は空中に向けた威嚇射撃を無視してウイグル族が住民を襲うなどしたためで「当然の行為」だったと語った。

 12人のうち3人は現場で死亡、残りの9人は病院への搬送途中や搬送後に死亡したという。(後略)



 この報道、厳密にはロイター通信、シンガポールの親中系華字紙『聯合早報』、そしてトルコの通信社による共同取材によって明らかになったものです。

 ●『聯合早報』(2009/07/19)
 http://www.zaobao.com/special/china/cnpol/pages2/cnpol090719.shtml

 取材を受けたのが新疆ウイグル自治区のトップである王楽泉・同自治区党委書記ではなく、ナンバー2のヌル・ベクリ自治区主席というのも何となく気になります。これは邪推の極みというべきものですが、今後何日か様子をみて、王楽泉が公の場に出て来なくなったのであれば、またまた下衆の勘繰りに取りかからなければなりません。

 ともあれ、自治区政府主席が正式な取材の場で語ったことですから、これが現時点でのオフィシャルということになります。……とりあえず、

「7月8日時点で死者は200名以上」

「散発的な銃声が聞こえた」

 という『中国新聞周刊』の報道のうち、後者については「追認」という形で当局が情報を開示したことになります。この「当局」にしても、地元当局が先走りしているのか、あるいは党中央の支持に基づいて地元当局が新ネタを披露したのかも興味をそそられる部分です。

 現在、ウルムチ市は外地からどんどん増派された治安部隊によって実質的に戒厳令状態にあります。「実質的に」というのは正式な戒厳令が布告された訳ではないので、行政は治安部隊ではなく自治区政府によって従来通り行われているという意味です。

 ただし、それは形の上だけのことで、イニシアチブは治安部隊が握っているのかも知れません。……その治安部隊がどの政治勢力の影響下にあるか、ということも重要であるように思います。

 ――――

 いずれにせよ,一昨日の『中国新聞周刊』と昨日の「発砲した」発言で、ウイグル人云々とは別に、中国政治における何事かがにわかに剣呑さを増しているといった印象です。その感触に間違いがなければ、引き続き何らかのサプライズが飛び出してくる可能性があります。





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