2009年7月18日
寛が「遠征」というものを具体的に理解し始めたのは、たぶん3歳の頃。
以来「いつえんせいにいくの?」「いつえんせいからかえってくるの?」と、僕がそばにいない期間を把握するようになりました。
一緒にいる時間は少ないけれど、寛は完全にパパっ子です。
今日も僕が昼頃起きてきたら、待ち構えていたように、寛が聞いてきました。
「パパー、ベースボールにいついくの?」
「んー?あと2時間くらいかなあ」
「あとにじかんかあ・・・」
平日は学校があるので、僕が起きたらもう寛は家にいません。
2時間だけでも、なんとか遊んでやりたい、と、いとおしさがこみ上げます。
寛は物言いたげに、僕のそばから離れません。
きっと、少しでも、ぎりぎりまでそばにいたい、という気持ちでいっぱいなのでしょう。
しばらくして。
「パパー・・・ベースボール、あとどれくらいでいくの?」
「うん、あと1時間くらいかなあ」
「そうなんだ・・・」
悲しげな寛の顔に、いっそあと少し行くのを遅らせようか、とまで思った僕の親心。しかし、3度目の「パパー」で、その気持ちはすっぱり失せました。
「パパー、はやくベースボールにいってください!」
「はい〜?」
どうやら僕が出かけた後に、どこかに連れて行ってもらう約束をしていたらしく、いなくなるのを今か今かと待っていたらしいのです。
何かが音を立てて崩れ落ちた、昼下がりの出来事でした。
アイオワ州デモインにて 田口壮 
2009年7月17日
近頃、アイオワカブスにはインターンの大学生が来ています。
最近日本でもよく耳にするようになったインターンシップ。
学生が、将来希望する職を経験して、卒業後の道筋を作ったり、
もしくは、未知の職種に接触して、自分の適性を考えながら、今後の進路を考える
きっかけにもなります。受け入れ側が、そのまま採用することも
ままあるというから、たいていの場合インターン生は、アルバイト感覚ではなく、組織の一員として本番モードで
働きます。働くはずです。
ところが、I(アイ)カブス(地元での呼び方)にやってきたインターンは、何かが違う。
まず、誰よりも遅く来る。そして、誰よりも早く帰る。
土日は、
「近所の野球大会があるから」
「バレーボール大会に出るから」と、
休んでしまう。
野球に土日の休みがないのは承知なはずなのに。
そして、ふと見ると何かを食べている。
少ないクラブハウスの備蓄が、みるみる減っていくのです。
シロアリのような恐ろしさです。
彼の希望は「チームトレーナー」らしいのですが、マイナーリーグのトレーナーは、選手の身体の管理以上に、チーム内の雑務をすべて引き受ける「何でも便利屋さん」でなければ
なりません。うちのトレーナーのマットなどは、球場のトレーナー室に住み込んでいるも同然で、携帯電話は鳴りっぱなし。気の毒になるほど働いています。常にへろへろです。
インターンくんの働きぶりは、そのマットがレポートにして
大学に送ります。このままでは、有意義なことは何一つ書いてもらえません。
「俺に書かせろ」と僕も思わず名乗り出たいほど、働かないけどよく食べる。
いったい何のために、何を目指してここにやってきたんでしょう。
野球ビジネスは人気があるので、インターンになるのも決して簡単なことではありません。
このひとつのポジションを、もっとやる気があって、もっと本気だった学生が得られなかったのは、その学生にとっても、アイカブスにとっても、大変残念なことです。
現在僕の代理人・アラン(ニーロ)のところで働くヨシ(長谷川嘉宣君)と出会ったのは、まさに彼がインターンでメンフィスレッドバーズの一員として働いていた時でした。
そこでの熱心な勤務ぶりや信頼できる人柄などが、その後彼の希望だった「スポーツマネージメントビジネス」に
つながっていき、今では頼りになる敏腕エージェントとして世界を駆け巡っています。
しかしアイカブスのインターンくんの仕事ぶりは、今後何かにつながる気配がありません。
あえて言えば、選手の食料危機につながっていく、という見方が今のところ有力です。
アイオワ州デモインにて 田口壮 
2009年7月16日
昨日の夜中過ぎに、セントルイスからアイオワに戻ってまいりました。
いよいよ後半戦の始まりです。
僕がセカンドにいるときに、マット(クレイグ・内野手)がホームランを打ったので、
てけてけ走っていたら、サードベースコーチに入っていたボビー(ディッカーソン・監督)が、
血相を変えて
「うわーっ、走れー!!!」
何や何や?とびっくりして、とりあえずそこから全力疾走でホームイン。
しかし後ろを振り返ると、後続のランナーたちは、ゆっくり走って還ってきます。
そしてその横でボビーが・・・笑っていました・・・。
「ごめん!入ったかどうか分からなかったの!」
アイオワカブスは素敵なチームです。
アイオワ州デモインにて 田口壮 
田口選手宛のファンレターはこちらまで letter@taguchiso.com
|