2009年7月20日4時39分
20代の海外旅行者数がこの10年で4割近く減ったことが、旅行大手JTBの調べで分かった。安定した職に就けない若者が増える一方、正社員も収入や休暇が減っている。就職氷河期を経験した「ロストジェネレーション」の余裕のない暮らしぶりが海外旅行需要にも表れている。
JTBが法務省の出入国管理統計などをもとに観光、出張などで海外へ出かけた人数の推移をまとめたところ、98年には414万人だった20代が、08年は262万人と37%減。この間の20代の人口減少率22%を大きく超える落ち込みぶりだ。特に20代女性の98年の海外旅行者数は261万人と、男女・年代別で最も多かったが、08年は160万人に激減。出張が多い30〜50代男性に海外旅行の「主役」の座を譲った形だ。
一方、60代の海外旅行者はこの10年で154万人から214万人に39%増。この世代の人口増加率13%を大幅に上回って伸びている。
JTBグループの調査会社が08年の海外旅行経験者約2700人に行ったアンケートによると、1回の旅行日数は最短の「1〜4日」が33%で02年から9ポイント増。旅行費用は1人1回平均25.9万円で02年から3.4万円減った。行き先も韓国、中国がハワイや米本土を大きく上回り、「安・近・短」志向が鮮明だ。
調査会社の分析だと、金融不況が起きた97年を境に、勤労者の世帯収入や有給休暇の取得日数が減少に転じ、特に若者が観光で海外を旅行する余裕が失われているという。(野沢哲也)