「すべてはここの国防委員会から始まった」。不発弾による市民の被害が絶えないクラスター爆弾。日本政府が禁止条約の批准手続きを終えた翌日、ベルギー議会に訪ねたフィリップ・マウー上院議員(65)が述懐した。
国防委員会で禁止を求めたマウー議員の提案に当初、軍は「廃棄したら大変なことになる」と反対したという。世界初の禁止法案が議会で可決されたのは06年2月。「それがオーストリア、ノルウェーへと広がり、禁止の国際的なドミノ現象が起きた」
外科医として国際医療団体「国境なき医師団」などの活動に参加し、紛争に巻き込まれた市民の手当てにあたってきた。対人地雷、クラスター爆弾に続き、ベルギーは世界に先駆けて劣化ウラン弾を禁止した。「いずれも市民が死傷し、使用後も被害が長期にわたって続く」兵器だ。
劣化ウラン弾禁止法発効に合わせ、ベルギー議会では日本の報道写真家、豊田直巳さんの写真展「ウラン兵器の人的被害」が開催中だ。写真の少女が指のない手を空に差し出し、見る者に行動を促す。
マウー議員が劣化ウラン弾の先に見据えるのは核兵器だ。今月、米露首脳は戦略核兵器の削減で合意し、オバマ大統領の掲げる「核なき世界」の目標は主要国首脳会議(サミット)で共有された。
世界的な服飾デザイナーの三宅一生さんは米紙への寄稿で原爆体験を語り、こう訴えた。「世界中の人々がオバマ大統領に声を合わせよう」
対人地雷禁止条約の締約国は156カ国に達した。クラスター爆弾に続き、劣化ウラン弾、そして核兵器の全廃へと道は開けるか。「なせば成ると信じることだ」。マウー議員の言葉が胸に響いた。
毎日新聞 2009年7月20日 0時15分
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