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【外信コラム】北京春秋 悲しみの現場で
「あいつらは怠けているから仕事がない。言葉(中国語)もできないしな」。
「開業するにも嫌がらせを受ける。もうかる仕事は全部、連中が握っている」。
今月上旬、新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで起きた暴動を取材したときに聞いた言葉だ。前者は漢族、後者はウイグル族の言い分だ。
ウイグル族の物ごいが目立つ街には、双方が狂気に近い状態で襲撃し合った結果、第三者からみても悲しくなるほどの憎しみと心の傷が残っていた。「民族団結」と政府が声をからすわけだ。
ウイグル族には「漢族」と間違われるので「日本人記者」と明確にした上で取材した。漢族への取材は状況によっては、中国人と思われるようにしなければならなかった。いずれも殺気立った現場で最低限の安全を確保するためだ。
困ったのは通信手段だった。国際電話は固定電話も携帯電話も規制で通じない。東京本社からの電話は受けられたが、それでも「10回かけてようやく1回通じた」と聞いた。インターネットも遮断され、唯一、通じた場所は当局が設置した「臨時プレスセンター」だが、国内外メディアで常時あふれかえり、回線の“争奪戦”が展開された。
とは言っても、通信・交通手段も食糧もなく、原稿や写真を送るために山を下りなくてはならなかった昨年の四川大地震の取材よりは恵まれていた。(北京 野口東秀)
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