大相撲名古屋場所8日目(19日、愛知県体育館、観衆=8000)乱れ飛ぶ座布団を背中に浴び、口をゆがめた朝青龍が花道を引き揚げてきた。よもやの逆転負けで、大鵬に並ぶ史上2位の22度目の全勝ターンに失敗。大きく乱れたマゲと体の砂が、横綱が受けた屈辱を物語っていた。
「勝ったと思った。(館内に)大勢来ていたから、いい相撲を取りたかった。勝負に負けた。焦りがあったかな」
風呂場で悔しさを洗い流したのか、支度部屋ではいつもの険しさはない。だが、稀勢の里について問われると「強くなった? そんなことはない。攻めてこないからな。勝っているから番付が上がるのが当然」。プライドが許さないのか、勝者を評価しなかった。
嫌なデータもある。2人横綱になった平成19年名古屋場所以降、中日までに黒星を喫した6場所で優勝したのは1回だけ。「中日まであんまり負けたことがない。もう終わったことだし、しようがない」と話す朝青龍の表情は暗かった。(伊藤隆)