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内部留保の意味も知らずに内部留保を切り崩せと言わないで欲しい

内部留保というバズワードがちらほら出てきました。

トヨタ内部留保13兆円 正社員化 財源は十分
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-11-20/2008112005_01_0.html

雇用を守れという主張そのものは言えばいい。

ところがその後ろ盾となっている理屈がめちゃくちゃ。嘘つきなのか無学なのか。

  そのなかでトヨタグループは、経常利益を大幅に伸ばしました。内部留保(隠し利益)は、〇三年度の九兆五千億円から〇七年度の十三兆九千億円へと、一・五倍近くも増やしています。非正社員の汗と涙で積み増しした内部留保です。

内部留保を「隠し利益」と定義すること自体間違い。だって隠してないモノ。

企業活動を通じて利益が出た際には、税引き前利益から税金を引き、その後に配当を出し、その後に残った利益を社内に残します。それが内部留保です。決算をみればどれくらい利益が積み増されているかが分かります。トヨタは調子がいいときには、毎年1兆円の利益を出していましたから、内部留保が10兆円を超えること自体は特に不思議なことではありません。

さらに、この内部留保を切り崩せば、雇用を維持できるというのが、共産党の主張ですが、内部留保は実は現金ではない。トヨタは13兆円の内部留保があるというのが共産党の主張ですが、いざ、決算を見てみると、
http://www.toyota.co.jp/jp/ir/financial_results/2008/year_end/tansin.pdf
現金は2兆もない。(そして激減している)

内部留保は利益の積み増しなのだけれど、そのベースとなっている「利益」そのものが、現金で存在するわけではない。

例えば、こういう事業活動をしたとする。

  1. 今期の最初に工具を800万で買いました。
  2. その工具を使って年間で1000万売り上げて入金もされました。
    (その他のコストはゼロとする)

この場合、利益は200万ではない。工具は翌年も使えるので、今年に800万のコストとしては見なされない。翌年のコストとしてもまぶされる。これを減価償却という。長いもので8年償却というものもあるので、その場合は今年のコストは100万円ということにもなりえる。

8年で均等に減価償却していたとすると、工具のコストは100万。売上は1000万なので、利益は900万円になる。先ほどの計算よりも700万円も多い。しかし実際に900万円が手元に残っているわけではない。じゃぁ900万円の価値はドコにあるのかというと、工具に「残っている」とみなしているわけです。

現金として残っているわけではないのに、「900万円も利益があるのだからヨコせ!」と言って本当にその通りにするのなら、価値が残っているとされる工具を売り払うしかない。当然工具を売り払うということは、翌年には仕事ができなくなる。

工具や装置だけではなく、土地も購入したからと言ってコストとしては見なされない。生産量増大に応じて工場を造ってもその土地代は費用扱いにならないので、お金は出て行っているのに、利益は多く見えてしまう。トヨタの20年度の有形固定資産(土地・建物・装置など)は8兆円弱ほどあります。これは実際にはお金を使っていますが、コストには換算されないので、利益を押し上げています。

バランスシートの右側をみれば確かに内部留保が大量に存在するわけですが、それに対応するバランスシートの左側は土地や装置などの「職場そのもの」だったりするわけです。そうでないと計算が合わない。先の赤旗の記事の「内部留保」をそのまま「職場」に置換すると恐ろしい文章になりますが、要求していることは同じです。

こういうことが分かっていながら、選挙前ということで確信犯でウソをばらまいているならまだかわいいのですが、本当に会計を理解せずに、間違った判断をばらまいているのなら問題は深刻です。

政治信条や労働組合に居ることで職業上の差別を受けるということはあってはならぬことですが、会計知識も無いままに僕たちの職場を殺してしまうという人間は社会悪です。

ちなみにバランスシートの右側ではなく、左側に着目して

  • 職場とは無関係な土地が多い
  • 決済に使われるよりも遙かに多い現金を持っている

ということを指摘するということには意味があります。それは労働者にとっても株主にとっても不幸なことです。この場合は共産党が指摘するまでもなく、ゴリゴリの投資家からも「キャッシュリッチ企業」としてつるし上げの対象になっています。

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Comments

質問です。
トヨタは2兆しかないと書いてありますが、2兆で雇用継続はできないものなのでしょうか?

Posted by: 匿名 | 2009.01.27 at 11:33 PM

確かに内部留保を「隠し利益」などと書くのは酷い表現ですね。
しかし、2兆円の現金があるのは事実です。

そして、派遣は「雇い止め」とします。
「雇い止め」は「解雇」とは違うものなのでしょうか?

「解雇」を「雇い止め」jなどと表現するのも酷い話ですね。

Posted by: | 2009.01.31 at 08:56 AM

>2兆で雇用継続はできないものなのでしょうか?
現金でもそれは貯金ではなく、決済用の運転資金としても使われます。トヨタは売上も20兆以上ですが、費用も20兆を超えるので、決済用の現金としてはそんなにジャブジャブもっている訳ではありません。またバランスシートを見ても、流動負債(未払い金などすぐに返さなきゃならない借金)と流動資産(現金や売掛金などの換金性の高い資産)はほぼ同じ(20.3期)なので、流動資産をこれ以上減らすのはまずいでしょう。

>「雇い止め」は「解雇」とは違うものなのでしょうか?
解雇は雇用契約期間中に契約解除することです。契約期間が終了して、なおかつ再契約しないというのは、解雇ではありません。ましてや、派遣社員は派遣先とはそもそも雇用契約を結んでいません。派遣社員が契約を結んでいるのは派遣会社です。

Posted by: 山本ゆうご | 2009.01.31 at 02:08 PM

お答え、ありがとうございました。
大企業の現状に素人なりに疑問を感じておりました。
ただ、やはりモノのように労働者を扱う企業に、直感的にむなしさを覚えます。

Posted by: 匿名 | 2009.01.31 at 09:50 PM

共産党は貴殿の反論にもきちんと再反論しているようです。この反論への再反論を聴かせてください。

A 内部留保は設備投資などに使って機械などになっているし、内部留保がなければ設備投資ができないという主張もあります。

 しかし、実際に大企業の内部留保などを使った新規投資の動きを見ると、新しい機械などへの設備投資よりも、投機を含む有価証券などへの投資に多くの金額が回されているのが実態です。
機械や土地、建物などの「有形固定資産」は、九七年度の六十八・七兆円から〇七年度の六十七・二兆円と一・五兆円減少しています。

 これに対して、「投資有価証券」は、九七年度の三十二・七兆円から〇七年度の六十六・七兆円に倍増しています。

 設備投資に必要な額よりもはるかに多くの資金が企業内部にたくわえられ、その多くが金融資産への投資に使われているのです。

赤旗より抜粋

Posted by: | 2009.04.21 at 10:43 AM

「会計知識も無いままに僕たちの職場を殺してしまうという人間は社会悪です。」まずこの意見は極端だろう。被害妄想も甚だしい。
ようは現金会計にでも着目して、キャッシュフローでも見なさいということなのだろう。しかしながら、上記の共産党の理屈からを鵜呑みにして論ずるとすれば、現金が投有にでも化けたとでも言うべきか。有形固定資産は動いていない。つまり、設備投資は進んでいないと言う事になる。投有を売ってカネを作れば良い(笑)。以上。

Posted by: 内部留保の意味も知らない人間 | 2009.05.02 at 02:57 AM

そして再反論はないw

このエントリの言っていることは会計学の「仕組み」を論じてはいても、「実際どうなっているのか」はまったく論じていない。支出がなく積みあがっていく各種引当金や準備金は「隠し利益」と言っても過言じゃない気がするが、それをおいといても実際どの企業がどの科目にどれだけ資金をプールしているのかいないのかを説明してないよね。嘘つきなのか無学なのか。
いや、実態を調査する組織的調査能力がないだけだな。

角瀬保雄法政大学名誉教授(会計学)
 「日本の大企業は、内部留保を崩したからといって経営困難になるような状態ではありません。キヤノンなどは二〇〇八年十二月期に減収減益といっても、利益剰余金を前年同期に比べ千六百四十一億円も増やしています。雇用を維持する体力は十分にあります。大企業が雇用よりも内部留保のためこみを優先し、企業の買収・合併に使う姿勢を強めていることが問題です」

Posted by: lol | 2009.05.19 at 06:31 AM

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