−>公開版のダウンロードサイトへのリンクへ
−>トップに戻る
−>香織淳士ホームページに戻る
−>共通ルートページに戻る
魔法世紀ハピネス
第一章『魔法少女エナ誕生!』
(試用版)
小説 香織 淳士
イラスト 香〔かおり あきら〕明
これはあくまでも試用版であり、最後まで読むには有料の公開版をダウンロードする必要があります。ご了承下さい。
作者前書き
本当言うと作者は、魔法少女ファンなんて言う程の者でもないのかもしれない。だけど、魔女っ子の『二代目』と言われる作品については私も大ファンだったと言えるし、作者が大学のサークルで時間を過ごしていた時代というのは、いい意味で魔法少女が力を持っていた時代だったと、私は信じている。
という訳で、『魔法世紀ハピネス』です。元々、一話三十分のアニメーション化を前提とした連作短編を書くつもりが、全然お話にならなくって、結局長編小説の形になってしまいました。人間が描けていないと、やっぱり面白く無かったからです。
出来ればこのお話は、シャカリキになってストーリーを追おうとするよりも、登場人物の一人一人になりきりながら、読んで欲しいと思います。子供の頃に持っていた筈の夢や素直な気持ちを、柔らかな空気に包まれながら、青春の真っ只中に立ち返って追体験する。そんなお話にしたいからです
。勿論、その上でストーリーまで楽しんで頂けたなら、作者としては幸甚の至りですけどね!
尚、当作品に出て参ります人名や地名、学校名、団体名は、似たような名前や同名のものが現実にあったとしても、一切関係ありません。元ネタを偲んで歩かれるのは全く構いませんが、混同することの無きよう、お願い申し上げます
●魔法世紀ハピネス主題歌
『僕達はみんな、魔法少女だった』
Song by HAPPINESS
Words by HAPPINESS
(香織 淳士)
僕は知ってるよ
女の子はみーんな、
魔法少女だってことを
辛いとき
悲しいとき
苦しいとき
自分のハートに
魔法を掛けるんだ
「私は強い。
だから、
どんなことでもヘッチャラだよ」
って
マジカル・ワールド
マジカル・センチュリー
僕等は魔法の世界に住んでいる ※
マジカル・ワールド
マジカル・センチュリー
僕等は魔法の世紀に住んでいるんだ

僕は知ってるよ
男の子もみーんな、
魔法使いだってことを
惨めなとき
悔しいとき
挫けそうなとき
自分のハートに
魔法を掛けるんだ
「僕は強い
だから、
どんなことでも出来ちゃうんだよ」
って
※ 繰り返し
世界は大きくて
辛いことも多いけど
いつだって温かく
僕等を包み込んでくれる
※ 繰り返し
僕等は羽ばたかなきゃならない
だから大人達は
魔法を越えて大きくなるんだ
だから
忘れないで、
僕等は魔法少年少女だったってことを

ハッピー
ラッピー
ハッピー
ハピネス
僕は知っている
みーんなみんな、
魔法少女だってことを


●第零章
美しき想い出‥‥
●幼き日の別れ
それは今からもう、何年前の事になるのだろうか?二人は、幼馴染みだった。
月夜〔つくよ〕はまだ小学生だったが、黒い艶やかな髪の美しい女の子だった。ちょっと大人しく、人見知りが激しくって引っ込み思案だったので、幼馴染みの信太郎君がいなかったら、樹下家の両親はさぞかし娘の心配をしただろう。でも大丈夫
信太郎は、月夜のとびっきり仲のいい、お隣さんだったのだ
一方同い年の信太郎はクリクリ頭の腕白坊主で、兎に角もう魔法少女が好きで、魔女っ子もののアニメやドラマの大ファンだった。月夜も信太郎の影響で、今では固く信じている。魔法少女が現実に、この世に存在することを
二人は、固く結ばれている筈だった。二人はお互いが離れ離れになるなんて想像も出来なかったし、互いのいない世界なんて想像も出来なかった。だから月夜は、今日という日を信じる事が出来なかった。認めたくなかった‥‥。
三月三日の雛祭り、本来ならまだ、桃の花が咲いている季節である。なのに今年の大阪は、例年より一月近くも早く桜が咲いている上に、月夜の心のように急激に冷え込んで、何十年来の異常気象で雪までが降っていた。
四月頃になれば、大阪でよく見掛ける白い花びらの染井吉野。その花びらの上に華を添えようかというように、白い雪が一ひら、二ひらと降り積もる。例年は雪が降るのさえ珍しいというのに、春だというのに、大阪の町は雪化粧に覆われていた。
「寒いね‥‥」
信太郎は、お隣の月夜ちゃん家〔ち〕の狭い座敷の中で、珍しい赤っぽい髪のお雛様を据えた、二段しかない雛壇を前にして自分の腕を抱いた。東北の人間からみれば何のことはない氷点下四度の気温は、大阪の人間にとっては物凄く寒いのだ。特に隙間風の吹き抜ける、築二十年を越えるオンボロ文化住宅である。薄いガラス越しの冷気は、ジッとしている二人には堪えた。
「ご免ね、信ちゃん。コタツがあったら良かったんだけど、家、座敷用のコタツがないから‥‥」
月夜が、泣きそうな顔をして、申し訳無さそうに言った。居間に置いてあるコタツだって、気の早い月夜の家族がもう片づけようかと仕舞ったばかりの布団を、掛け直したところなのだ。異常な陽気が続いたこともあって、そんなに長く続く筈のない寒波に、どこの家でも対応に困っていた。
例年この日に月夜が信太郎を呼ぶ時は、まだ寒さは残るものの、セーターなんてものは必要ない。でも、月夜が泣きそうな顔をしているのは、寒さからではなかった。もうすぐ引っ越しだというのに、未だに彼女は、信太郎にそのことを打ち明けていなかったのだ。コタツの布団が仕舞われていたのは、実はその為もある。
雛人形は、雛祭りが終わったら早々に片づけてしまう。月夜はその雛人形がまだ飾られている内に、信太郎にお別れを告げる決心をしていた。そして信太郎に渡すのだ。いつも信太郎が羨ましそうに欲しがっていた、この大きくて、古びたお雛様を
。
「ねー」
月夜は、信太郎に言った、
「菱餅食べたら、外に出て遊ぼっか?」
二人っきりの時は、月夜も少しだけ快活なところを見せる。クラスの子がそれを見掛けると、ビックリするくらいだ。今までしんみりした顔をしていた月夜がオズオズと言ったのを見て、信太郎は嬉しそうに答えた、
「ウン
実はオレ、折角の雛祭りだけどさ、雪が降ってるのを見て外に出たくてウズウズしてたんだ
この三日間、お雛様は充分見れたしさ
」
お内裏様とお雛様、それに三人官女しか居ない雛壇の上で、お雛様が恨めしそうに信太郎を見ているような気がした。
でも、月夜の瞳は輝いた。結局、あれだけの決心をしたのに、決定的な瞬間が一秒でも遅くなることが嬉しくて、仕方がないのだ。それに今年の冬には雪が一回も降らなかったから、最後の最後になって信太郎との新しい雪遊びの想い出が、増えるのが嬉しかった。
結局雪は、羽曳野の路面を白くは染めたものの、道路に積もるという程にも至らなかったので、二人は真っさらの雪道に黒い足跡を付けて回って遊んだ。車の通らない裏道で、シンシンと雪の降る中を、二人の後に二筋の黒い足跡だけが残っていく。
二人はちょっとだけ広い目の道に面した、立派な桜の樹を見に出掛けた。そのまま足を延ばして、直ぐお隣の藤井寺市にある、公団の桜の木を見に出掛ける。せっかく綺麗なのに、急な冷え込みのせいか、公団では誰も桜の木を見に出て来てはいなかった。それとも、桜の木が植わっているのに、気が付いてさえいないのかもしれない。
でもそのお陰で、広い公団の敷地の中は、二人だけの世界だった。
「こんな日には、魔法使いの使い魔が下りて来ないかなー?」
信太郎は舌をペロっと出して、雪を食べようとしながら言った。踊るように歩く二人の後に、クルクルと輪を描く足跡が踊っている。
「もしも使い魔が下りてきたら、お願いして女の子にして貰って、魔法少女にして貰うんだ
」
「なれるよ
」
月夜は、上を向いて両手を広げている信太郎に、力を込めて言った、
「信ちゃんなら絶対になれるよ、魔法少女に
だって私、信ちゃん以上に魔法少女に相応しい女の子って見たことないもん
男の子だけど‥‥」
月夜は、もう直ぐそこまで迫っている別れのことも忘れて、力説した。そして付け足した自分の言葉に、ちょっとだけ吹き出す。
信太郎が月夜の家を訪れて、挨拶してから今日初めての笑顔が、月夜の可愛い顔に浮かんだ。信太郎が、それに負けない位の明るい笑顔で応える。
信太郎は両手で包み込むように、月夜を抱きしめた、
「月夜ちゃんだってなれるさ
だってオレの知っている一番チャーミングで可愛い、そして何よりもピュアなハートを持った女の子は、月夜ちゃんなんだもん
」
静かに降り積もる雪のサラサラいう音を伴奏に、二人の体はクルクルと舞い踊った。
二人が再び月夜の家に辿り付いたとき、まだ長くない日は、既に暮れようとしていた‥‥。
思わず信太郎が樹下家で晩御飯を御馳走になってしまった夜、お母さんが気を利かせて入れてくれた電熱ヒーターの赤い光を浴びながら、月夜は未だに、信太郎に肝心なことを言い出せないでいた
。
夜になって冷え込んできたので、暖房が入ってもまだ、座敷は寒い。降り続いた雪はとうとう降り積もって、スノークリスマスならぬスノー雛祭りになっていた。
その夜もいつしか午後八時を過ぎ、お隣りとはいえ、子供の信太郎はそろそろお家に帰らなければならない時間になってしまった。
「その
」
ようやく、月夜は勇気を振り絞って言った、
「私、お引っ越ししなくちゃーならないの
」
「えっ?
」
突然のセリフに、信太郎は一瞬言葉に詰まった、
「い、いま何て
。」
「本当はもっと早くに言わなくちゃいけなかったんだけど、どうしても切り出せなくって‥‥。
私、信じたくなかった。私が信太郎君と別れ別れになっちゃうなんて
。
でもね、お母さんが早く言いなさいって。私がお母さんや学校の先生に口止めしたんだけど、このままじゃー一番大切な信太郎ちゃんにも、別れも言えずに別れなくっちゃーならないって‥‥。
そんなの嫌だから、嫌だから‥‥」
月夜は、手の甲で涙を拭いながら、泣きじゃくった。
「月夜ちゃん
」
信太郎はどう言っていいのか分からず、困ったように月夜の肩に手を掛けようとした。でも、月夜の泣きじゃくる様子に、彼女の言った言葉の意味が頭に染み込んでくる。
『私、お引っ越ししなくちゃーならないの』『私が信太郎君と別れ別れになっちゃうなんて
』、それって‥‥。
「嘘
」
信太郎は、ようやく月夜の言ったことの意味が頭に浸透してきた、
「それって、もう会えないってこと
?
」
コクンと月夜は頷いた。
「そ、そんなこと信じられないよ」
信太郎も、泣きそうな顔になる。
「そんなこと、信じられないよー
」
再びそう言ったとき、もう信太郎はワーワーと泣きじゃくっていた‥‥
「イック‥‥。スン
」
どれだけ時間が経っただろうか?何日も前から覚悟していた月夜は、信太郎よりも前に、泣き止んでいた。
「その、ね、信太郎ちゃん‥‥」
月夜は、まだ涙を流した後の眼を真っ赤にしたまま、信太郎の肩に手を置いた、
「信ちゃんに渡しておきたい物があるの‥‥。」
その言葉に、ヒックヒック泣いていた信太郎は、顔を上げた。涙と鼻水が一緒になって、顔中ボトボトになっている。
「ンナ、ふぁにー?」
信太郎の声は、まだまともに、言葉にならなかった。
「うん
」
月夜は頷いて、そっと立ち上がった。赤いフェルトのような布を敷かれた二段しかない雛壇から、髪が赤茶けてしまった、大きくて立派な雛人形を取り上げる。
それはかなり古いものらしく、立派ではあるものの、落ちない汚れで薄汚れて、髪が脱色してしまっていた。ただ服と飾りだけは月夜が産まれた年に新調して、そんなに高いものではないものの、まだ着せたときの美しさを残している。
信太郎は初めてこのお雛様を見たとき、一目見るなり気に入ってしまったものだ。信太郎が覚えているのは四歳か五歳の雛祭り以降のことだが、あんまり信太郎がこのお雛様を気に入って欲しがるものだから、月夜は幼心に焼き餅を焼いていた。
でも、信太郎が月夜にいつまでも傍にいるよと約束したのも、雛祭りの日、このお雛様の前でだったのだ。小学校三年生の時に、あんまり月夜が焼き餅を焼いて『もう二度と雛人形を出さない
』と拗ねた時に、月夜に対する気持ちを伝えたくて、信太郎が約束したのだ。
月夜は唇に人指し指をそっと当てた。あの時の信太郎の唇の感触を思い出して、何度こうやって唇に人指し指を当てたことか‥‥。
あの日以来、物心付いて初めて、月夜はこのお雛様を好きになることが出来た。それまでは古臭くて汚れた人形が嫌だったし、何より月夜の嫉妬の対象だった。でも今では、何よりも信太郎との仲が深くなった恩人であり、証人なのだ。
ちょっと早熟な、でも気の弱い少女は、想いを込めて、雛人形を信太郎に差し出した。
「あげる
」
いつにない月夜の決然とした言葉に、信太郎はお雛様に手を添えながらも、戸惑っていた。
「どうしたの‥‥?」
信太郎の頭の中には、最近の、この人形を大切にする月夜の姿しか記憶に無かった。いつの間にか記憶の中では、嫉妬のせいで『このお雛様、信ちゃんには絶対上げない
』と言っていた月夜の言葉が、『月夜の大切なものだから絶対に上げない』と置き変わっていたのだ。だってこの何年か、信太郎が物欲しげにお雛様を見る度、月夜は実際にそう言っていたのだから
。
それが今になって‥‥。
「あげる
」
もう一度、月夜は繰り返した。眼を瞑って、信太郎の顔を見ないようにしている。だって信太郎の顔を見ていると、やっぱり別れが辛くなってしまいそんなんだもん


「その代わり
」
月夜は付け足した、
「このお人形、ズーッと大切にしてね
このお雛様、月夜だと思って、大切にしてね
約束だよ
?」
やっと、信太郎にも分かった。月夜ちゃんの、痛い痛い想いが
。
「うん、大切にするよ
月夜ちゃんのこと、絶対に忘れない

いつかまた逢おうよ
今すぐは無理だとしても、大きくなったら、きっと会いに行くね
それまで、待っててね

約束だよ
」
「うん‥‥
」
月夜は、力一杯力説する信太郎の袖を、ギュッと握り締めた。
信太郎は、続ける、
「月夜ちゃん泣き虫だから、遠くに行っても、泣いてちゃー駄目だよ。オレがいないから辛いだろうけど、いつも前を向いて笑っててね
」
「ウン、頑張る
」
そう言った月夜の顔には、涙と一緒に、力一杯の笑顔が浮かんでいた。
月夜には、引っ越しの日の信太郎との幼い別れのキスが、たった一つの輝きとして、いつまでも、いつまでも心の中に光り続けていた‥‥
●第一章 魔法少女エナ誕生
●マンボな旅立ち
魔法次元〔マジカル・ユニバース〕、もしくは魔法の世界〔マジカル・ワールド〕と呼ばれる世界で、今しも、究めて重大なる旅立ちが始まろうとしていた。それは、世界にとっても重要な意味合いを持っていたし、ましてやその当事者にとって、その持つ意味の重大さは尚更だ。そのため、旅立ちに伴う儀式も、究めて厳かに行われているのだった。
「マンボ
」
頭に重そうな王冠を載いた王は、厳粛とした声で、その何かと問題はあるが、愛すべき息子に言った、
「お前に果たされた役割は、このマンボウの王国だけでなく、いや、それどころか魔法次元〔マジカル・ユニバース〕・現世〔ミッドガルド〕の両者に於いてさえ究めて重要なものだ。
そのこと、判っておるな?」
父王の言葉に、偉大なる予言者として知られるマンボウの国の王子は、優秀な眉に飾られた頭を垂れて応えた、
「判っております、父上
」
「ウム
」
その決然とした王子の返事に、国王は悠然と頷いた。何しろ周囲では何十人もの臣下が見守り、ましてやテレビを通してマンボウの国の国中が見守っているのだ。この重大な儀式に粗相など、許されよう筈もない。
父王は、粛然と我が息子に言った、
「それでは、そちの決意の程を述べてみよ
」
「ハイッ
」
マンボは、深々と頭を垂れてから、決然と顔を上げて上奏した、
「私〔わたくし〕、マンボウの国の第一王子にして今世紀最大の予言者マンボは
」
国王が頷き、マンボは続ける。しかし次の一言で、国王の顔色は一変した、
「祖父の隠し部屋に飾られていた魔女っ子達の肖像に賭けて誓います
この、世界征服など赤子を泣かすが如き強力な魔力と知力と才能の全てを賭け、世界征服の野望は取り敢えず置いといて、魔女っ子達のプロデュースに全精力を注ぐことを誓います。
その軌跡と栄光は燦然と輝き、金字塔の如く全世界に君臨することでしょう

」
国王の不安は、『世界征服の野望』という所で既に確信に変わっていた。そして次の台詞で、マンボの演説は即刻中止させるべきだと結論した、
「私は魔女っ子マニアだった祖父の名に賭けて誓います
今世紀最大の魔法少女『ハピネス』を
」
「もう良い
」
国王の、重々しい声が響いた。これ以上王室の恥を国民に晒して、王家の威信を損なうことは許されないのだ
魔女っ子のプロデュースをする事は、未来の国王たる王子に果たせられた、神聖なる義務である。しかしそのプロデュースの対象たる魔女っ子に入れ込むなどということは、言語道断であった。歴代の国王が自らのプロデュースした魔女っ子に入れ込んでいたことは公然の秘密とはいえ、それは本来、獣姦に勝るとも劣らない変態行為である。だからそのことを公衆の面前で暴露するのは、王室最大の禁忌とされてきた。もし下々の者が同じことをやったら、打ち首ものである

国王は、重大なる儀式を中止することを決意した。重臣に眼顔で、『マンボの口を塞げ
』と命令する。
尚も話を続けようとするマンボ王子の口を、王子の教育役の筆頭であるサンボが慌てて塞いで、壇上から下がらせた。
「モガモガ、俺はまだ全部喋っていないんだー
てやんでぃ
最後まで喋らせやがれ
っ
」
教育大臣に抵抗し、まだ演説を続けようとするマンボの耳許に、サンボが小さく囁いた、
「ベランメー調になってますよ、王子
」
その一言で、マンボは反射的に口籠もる。これは子供のお寝小と同じで、マンボにとっては、指摘されると一番恥ずかしい言葉だったのだ
。
その様子を見て、国王もやっと安心したようだった。昔からの忠実な重臣に、頷いてみせる。彼もその昔、同じようにしてサンボに叱られたものだ。
一旦は台無しになるかと思われた儀式は、(マンボ王子の口を塞ぎながら)滞りなく行われた。人狼やチェシャ猫、その他各国代表の祝辞が読み上げられ、民衆の万歳三唱に送り出される。
「父上、母上
」
マンボは、父王と王妃と抱き合い、心の奥底からの言葉を言った、
「僕は、世紀の魔法少女のサポーターとして、立派な魔法少女をプロデュースしてきます
僕の“勘”が告げるんです
世紀の予言者としての勘が
」
父王は、その言葉に頼もしそうに頷いた、
「その言葉を、民衆の前で言っておやり
」
「はい、父上
」
マンボは、王城のバルコニーに立って、大きな声で宣言した、
「私こと予言者にしてマンボウの王国の世継ぎの王子マンボは、ここに誓う
世紀の魔法少女『ハピネス』と共に現世〔ミッドガルド〕を改革し、我はマンボウの王国に偉大なる繁栄をもたらすであろう
」
「いーぞー、マンボ王子ー
」
「信じてるわよー、王子ー
」
「キャーッ、王子様ー、イカスー
」
必ずしもサクラの声でも、ヨイショでもない叫び声が王宮前の広場に響きわたった。マンボ王子は、変わり者だし困ったちゃんで通っていたが、そのズバ抜けた予言者・魔法使いとしての能力から、国民から絶大なる信頼をも集めていたのである。
そのことは、次の民衆の叫びからも証明されていた、
「今度はどんな騒ぎを起こしてくれるんだ
?
」
「また変なことをやらかしてくれるんじゃないかと、期待してるわよ
」
民衆に見送られてパレードしながら、マンボは独りごちた、
「どうしてみんな、僕のことを分かってくれないんだ‥‥
」
しかし、国の命運を担う旅立ちを迎えたマンボの心中が、人々に理解されることは決して無かった
●不渡り手形
信太郎と月夜〔つくよ〕の別れの日から、はや十年近くが経っていた。月夜の父親は羽曳野市から東大阪市の布施〔ふせ〕に引っ越した後、もう一度近所の大きい所に引っ越し、家業だった錠前屋を大きくして、バブルの勢いに乗って業容を大きくしたものだ。好景気に乗って作り始めた耐火金庫は飛ぶように売れまくり、一時は恐れるものなど何も無いかと思われた。
しかしそのバブルが消し飛んでしまうと、残っているのは必要もない設備投資による借金と、受注の半減という手痛い苦境だった。既に新しい工場にと買った土地と工作機械は売り払ってしまい、建て替える予定だった昔の住居兼工場に、一家は舞い戻っていた。その工場も、既に何重もの抵当が掛かってしまっており、建て替えの計画など今は昔だ
。
今しも、月夜の父親は手形の決済の件で、電話に出ているところだった。電話で受け応えする度に、灰色のツナギの背中がペコペコとお辞儀する。そのお尻では、古くて痛んだ近鉄の野球帽が、お辞儀に合わせてピョコピョコと弾んでいた。
「ちょっと待って下さい。
ええ、そうです。今日中には、新堂さん所の手形の支払い期限が来るんですよ。そうしたら、お宅に支払うお金にオマケが付いて返って来ますから、今日中に振り込みますよ。
ええ、大丈夫です。新堂さんには、今の工場に引っ越す前からお世話になってるんですから。今の取引先の銀行やお客さん方だって、どれだけ新堂さんに紹介して頂いたことか

ええ、ええ、大丈夫ですよ
今日の銀行が終わる時間までには、ちゃんと振り込みます。安心して下さい。
でわ
」
もう大学生になった月夜の前で、父親の樹下美月〔みづき〕は受話器を置いた。そして振り返ったとき、初めて月夜が帰ってきているのに気が付いた、
「おやおや月夜、帰ってたのかい?」
「ウン
」
小学生の時からその片鱗を見せていたが、今では月夜はぬばたまの髪も美しい、とびっきりの器量良しに育っていた。ただ、昔ほどの人見知りはしなくなったものの、今でも引っ込み思案でオドオドした感じがするのは変わらない。
結局あれだけ信太郎と約束したものの、信太郎のいない見知らぬ世界で、月夜は自分の後ろ楯になるものを、自分自身の中に見つけ出すことが出来なかったのだ。
「また、手形の償還の催促
?」
月夜の言葉に、父親は優しく微笑んだ、
「会社のことは心配しなくっていいと言ってあるだろう?
安心しなさい。今日新堂さんのことろから入金があるから、今日中に街田さんのことろに入金すれば大丈夫だよ。新堂さんがウチのところに入れた手形を落としたことがあったかい?」
愛しい大切な、自慢の娘の頭を、美月は優しく撫でた。
街田さんは八年前、美月が独立するまでのあいだ働いていた町工場の社長さんで、独立するにあたっては、街田さんには大変なお世話になっていた。一方新堂さんには、会社の業容を広げるに当たって大いにお世話になっていたが、そもそも今借金を抱えているのは、実は新堂さんの後押しで会社の規模を大きくしたせいなのだ。いかし今更、そんなことを言ってもはじまらない‥‥。
バブル最盛期の頃には、事務の仕事に追われて綺麗になっていた美月の指先が、旋盤加工のお陰で、また黒く汚れていた。しかしそれもまた、この何週間かというもの、だんだん綺麗に戻りつつあるようだ。お風呂に入っても落ちない汚れが落ちてきたということは、それだけ、仕事が減ってきた証拠である。昔お父さんの手が綺麗になりますようにと祈ったことのある月夜の心中は、複雑な物があった。
月夜は、嫌な胸騒ぎを感じて、父親に言った、
「お父さん、新堂さんの悪い噂、聞いたことない?
最近新堂さんとこ、資金繰り悪いらしいよ。せめて確認の電話入れとかなきゃ
」
「安心おし、さっき確認したばかりだから‥‥。
まあでも、入金が何時頃になるか位は確認しておいても、罰は当たらないだろうね。何せウチも、銀行が開いている内に送金しなきゃならないんだから
」
父親が電話をするのを、横から娘が不安そうに見ている。
「あ、もしもし。いつもお世話になってます、樹下錠前株式会社です。
度々お邪魔して済みませんね。実はウチも今日手形の決済を抱えてまして、お宅の入金が何時頃になるか、確認しときたいんですわー。
ええ、お願いします
」
電話口に出た相手先の奥さんが、社長さんを呼びに行った。その間、月夜の父親の頭は、何度下げられたことか‥‥。
受話器を握る気配がして、何秒か置いた後に、声が聞こえてきた。その声は暗く沈んでいて、言葉はシンプルだった、
『‥‥。
スマン。』
「えっ‥‥?」
出し抜けな台詞に、美月は言葉に詰まって立ち竦む。
一番悪い可能性と、一番悪くない可能性が頭を過った。しかしこのご時世だと、一番悪い可能性が、一番信憑性がありそうに思える。
「ど、どうしたんです、いきなり『済まん』だなんて‥‥」
本当は半ば予感を持ちながらも、美月はやっとの思いで、恐る恐るそう言った。
『スマン
』
電話の相手は、もう一度同じ言葉を繰り返す。そして暫しの沈黙の後、やっと続けた、
『ウチから卸してる卸の一つが倒産して、不渡りを出した。債権の回収には当たってるし、他にも早収の交渉に当たっているんだが、駄目みたいだ。
倒産した会社の資産は銀行が差し押さえて凍結した癖に、どこの銀行に行っても資金を貸してくれん。ウチは一度不渡りを出してるから、どこの金融会社も及び腰だ。アンタだから言うけど、夜逃げも考えてる‥‥。』
「そんな、弱腰な
」
美月は、自分のことのように心配して、受話器に身を乗り出した、
「息子さんの肇〔はじめ〕君も一美ちゃんも、大学に入ってこれからなのに、そんなに弱腰でどうするんです?
あなたらしくないですよ
」
『スマン
。でも、オレの強気が間違ってたらしい。
アンタにも悪いことをしたな。街田さんの言うことを聞いてこじんまりやってれば、アンタも借金を背負うことも無かったし、手形手形でいざというときに決済に詰まることも無かった‥‥。』
「新堂さん
?」
『スマン
』
最後に一言残して、電話は切れた。
「お父ちゃん
?」
月夜の言葉に、美月はハッと我に返った。
「どうしたの、悪いお話?」
「月夜
」
美月は、呆然として言った、
「新堂さんところは、倒産したらしい。不渡りを掴まされたそうだ。
ウチもうかうかしてると、倒産だぞ
資金を調達しなくっちゃ

月夜、お母さんを呼んで来てくれ。お前も、電話するのを手伝ってくれるね?
」
「ウン
」
一も二もなく、月夜は頷いた。
●再会の日
「お母さーん
早く、早くーう
」
元月夜〔つくよ〕の家だった家、信太郎ん家のお隣で、元気な小学生の女の子の声がした。
「もう、彩ったら相変わらずそそっかしいんだからー。誰に似たのかしら?」
江夏家の奥から聞こえるお母さんの優しい声に、狭い玄関で足踏みした少女は、拗ねたように叫んだ、
「んもうお母さんの意地悪ー
そんなことよりハンカチ、早く早くーっ
」
「ハイハイ
はい、出来ましたよ
きっちりアイロンの掛かった、綺麗なハンカチ
」
まだホカホカする可愛い猫のプリントのハンカチを、彩はしっかりと受け取った。
慌ててそれをスカートのポケットに突っ込んだ彩は、お母さんの首っ玉に抱きついて、ンーッと頬っぺたを合わせた、
「有り難、お母さん
ダーイ好き
」
「学校の新学期から遅刻じゃー、洒落になりませんよ
早くなさい
」
たった一人の愛娘のお尻を、綺麗な母親が叩く。もう三十代中盤に差しかかっている筈なのに、まだまだ二十代で通りそうだった。
「ハーイ
」
元気な声で彩は答えて、玄関を飛び出した。そして、人間二人がすれ違うのもやっとの狭い庭を通り過ぎて、玄関の門を開ける。
「やあ、エナちゃん
」
聞き慣れた男の人の声がした。お隣の信太郎だ。
彩は苗字の江夏から、時々『エナちゃん』と呼ばれていた。かなり明るい栗色の髪をポニーテールに括った、小学校五年生。早熟な今時の小学生としては、今が可愛い盛りだ。
一方信太郎はもうすぐ、二十歳の誕生日が来ようとしていた。十年近い歳月の間に、生憎と精悍という訳にはいかないが、甘いマスクの割りかし好青年に育っている。
信太郎はいまだに魔女っ子が大好きで、可愛いものには眼がなかった。そんな訳で、幼い頃から面倒を見てきたというのもあるけれど、お隣の彩ちゃんは信太郎の大のお気に入りである。最近ではすっかりやらなくなったものの、彩の幼い頃にはおママゴトに付き合い、どこかに行きたいと言えば連れていってやったものだ。
その関係は、今でも続いている。信太郎にとって彩は、お隣に住んでいる妹なのである。
「あっ、お兄ちゃん
」
「いつも元気だね?」
「ニャンコちゃん元気にしてる?」
ニャンコちゃんとは、彩が信太郎にプレゼントした真っ赤な猫のヌイグルミのことだ。彩が信太郎に上げたいというと、お母さんが買ってくれたのだ。
彩ちゃんのお母さんの文子さんは、信太郎のことになると妙に甘い。文子さんにとっても、信太郎はお隣に住んでいる息子みたいなものだからだろう。もっとも彼女は、『あの子は家の娘のお婿さん候補にして、私の愛人よ
』と言って憚らなかったのだが‥‥

信太郎は彩ちゃんに言った、
「ああ、元気にしてるよ。雪姉と一緒に、猫っ可愛がりしてるよ
」
「良かった
お兄ちゃんなら大丈夫だって、信じてたんだ
」
二人で微笑み合う。
「あれっ、そう言えばいつも仲良しの雪江お姉ちゃんは?
」
ふと思い出したように、彩ちゃんが聞いた。信太郎の姉は同じ大学の一年上だったから、授業の開始が一緒の時は、よく連れ立って登校するのだ。
「雪姉なら、今日はお寝坊さんだよ。夕べ遅くまでプロレス見てたみたいだから、お昼まで寝てるんじゃないかなー?
どうせ今日はカリキュラムの発表だけだから、ノンビリしたもんだよ。オレも彩ちゃんに合わせただけだからさー。
ま、もっとも、オレはその後サークルの集会にいかなくっちゃならないけどね
」
「あそっか
」
と同意したものの、彩は時間が無かったことを思い出した。急に慌てふためいて、慌てて駆けだす、
「いっけない、急がなきゃ

じゃ、お兄ちゃん、帰ってからね
」
信太郎はクスクス笑った、
「はい、気を付けてね
」
彩は、月夜のいなくなった後の、信太郎の新しい天使だった。
信太郎は、大阪府の中にあって農村部にあたる富田林市にある、大阪芸術学院大学に通っていた。電車で言えば、近鉄南大阪線に乗って古市駅で長野線に乗り換え、喜志駅で降りてスクールバスに乗っていくことになる。
まだ四月になったばかりで、大学では、カリキュラムの発表があったばかりだった。信太郎は、それを見に行くところだ。自転車でお隣の藤井寺駅に行った方が電車の乗り換えが楽なのだが、駐輪場が少ないので、歩いて五分の高鷲駅から各停に乗って、藤井寺で乗り換える。電車を選んで河内長野か富田林行きに乗れば、乗り換えもなしでほんの数駅だ。
喜志駅に付くと、駅前のバス道を一、二分も歩くとバス停の広場だった。やたら車とバスで渋滞した道をバスに揺られると、田んぼの中を通った国道から、出し抜けに大学が見えてくる。大学は小高い丘陵の上に建っており、小さな森に囲まれていた。その周りは、ほとんどが田んぼだ。
国道から大学へと延びる、やたらと真っ直ぐな専用道路を二百メートル程行くと、大学前のバス停だった。バスはそこで折り返すが、校舎に着くには、丘陵を登る坂道をまだ百メートルばかり歩かなければならない。しかも校舎は地形を活かした複雑なデザインで、小刻みなアップダウンの階段を歩いて、ようやく信太郎は事務棟のある建物に辿り着いた。そこに先客が一人、掲示板を見ている。
「ヨッ、オタクの信太郎
」
クラスメイトの船場〔せんば〕君が、後ろから信太郎に声を掛けてきた、
「何を女の子を見てるんでい?
」
信太郎は、よく『オタクの信太郎』と呼ばれていた。宅野信太郎の宅野の頭に『お』を付ければ『オタクの信太郎』な上に、魔女っ子オタクとしても知られていたからだ。
だいたいが、こうゆう時に声を掛けてくる奴といったら、悪友と相場が決まっている。船場光男は『ただのアニメ・オタク』で通っていたが、同時に『勝手にアニメーション・サークル』
通称KAS〔カス〕の活動的メンバーでもあった。信太郎も『可愛いのオタク』と『魔法少女オタク』の二つ名を持つKASのメンバーだが、しかし幽霊部員である。
「いや、かわいい娘〔こ〕だなと思って‥‥」
信太郎は、ボソリと応えた。
掲示板の前に立っているのは、背中まで伸びる漆黒の髪を垂らした、綺麗な髪の女の子である。二人の話し声に振り向く横顔に、信太郎は何となく懐かしいものを感じた。
訂正するように、信太郎は言う、
「と言うより、あんな娘大学に居たっけ?何となく、昔の知り合いに似てるような気がするんで、気になってるんだけど‥‥? 彼女が見てるのって、俺達と同じ、二年の時間割だろ?」
「とか何とか、上手いこと言っちゃってー

」
ニシシシと笑いながら、船場君は信太郎の背中を脇で小突いた、
「同じ学年の子だってーのに、知らない訳ないだろ
このー、トボケやがってこのヤロがー。お前、一丁前に“月夜〔つきよ〕の君”に、気がありやがんな?
お前なんか、テレビの魔女っ子のケツでも追っ掛けてればいいんだよ、この『オタクの信太郎』が
」
とか言いながら、気を利かせたつもりで、信太郎の背中を思いっきり突き飛ばす。
「ウワーーーーッ、ちょっとマッ

」
さっきはチラりと振り返っただけだった女の子の顔が、今度は何の騒ぎかと真っ直ぐこちらを向いた。そこに、宙を飛んだ信太郎が、アップでのしかかる。
ドッシ
ン‥‥
二人はもつれ合うようにして、コンクリートの通路の上に転がった。
「アッチャーッ、ちょっとやり過ぎたかな‥‥?」
本当はワザとやったくせに、船場君が指の隙間から二人を覗き見ながら、しまったなとばかりに言う。
信太郎は、下敷きになりそうな女の子を庇って、相手の背中に片手を回していた。両足の間に女の子の腰を挟むようにして、片腕だけで何とか二人の上体を支えている。女の子の顔の位置は信太郎の胸の下くらいだったが、それでも二人の顔は、大接近だった
。
「キッ、キャ‥‥
」
「あっ、ご免

」
顔を真っ赤にして叫ぼうかとしている女の子の体をソーッと抱き起こしてあげながら、信太郎は慌てて言った、
「恐い思いさせちゃったね。下はコンクリートだから、頭を打ったら大変な事になってたかも?」
優しく言う信太郎の声に、女の子は悲鳴を呑み込んだ。上半身を起こして貰う間に、相手の手がしっかりと自分の体をサポートしてくれていたことに、気付いたのだ。当人は男性の急接近から身を護る為に両手を前にやっていたから、もしそのまま倒れていたら、男の子の言っている通りになっただろう。
女の子に抱きつく為ではなく、護るために回されていた手で自分の手を引っ張って貰いながら、女の子はぶつかってきた男の子の顔をマジマジと見直した。まだお尻が痛いけど、相手の体と自分の体に隙間があったのは、自分の両手で体を護った為ばかりではなく、相手の男の子が抱き寄せようとはしなかったからなのだ。それに聞く気は無かったものの、男の子二人の会話も、チラホラと耳には届いていた。
「あ、有り難‥‥
」
綺麗な黒髪の女の子が掠れた声で言い、信太郎と女の子は、暫し互いに見詰め合った。そして、
「あの、ひょっとして
」
二人の声がハモる。揃って、二人の顔が真っ赤になった。
「その、ひょっとしたら
」
そこまで言って言葉に詰まった信太郎の後を、相手の女の子が引き継いだ、
「あなた、前に遭ったことありませんか
?」
勿論、二人は以前に会ったことがあった。今目の前にいる女の子は、雪の降る桜の想い出の、月夜〔つくよ〕ちゃんだったのだから‥‥
と言うところで、続きは商品版で宜しくお願い致しますですm(_
_)m
−>公開版のダウンロードサイトへのリンクへ
−>トップに戻る
−>香織淳士ホームページに戻る
−>共通ルートページに戻る