きょうのコラム「時鐘」 2009年7月19日

 土用の「丑(うし)の日」、ウナギ受難の日である。梅雨が明けないのにウナギというのもいささか興が乗らないが、昨年同様ことしも丑の日は2度あって、31日が「二の丑」である

まず格安の中国産を食し、2度目は真夏の暑さの中で国産に挑むとするか。とらぬウナギの皮算用。夏バテ防止を口実に、ぜいたくができる

実はウナギは夏よりも、秋から冬の方がおいしい。そう教わって食べたことがある。味の比較ができるほど、かば焼きと親しいわけではないが、冬のウナギは脂が乗っており、味にもこくがあるようで、「猛暑の食べ物」という先入観が揺らいだ

本来夏場にウナギは売れなかったそうである。それを一変させたのは、江戸時代の学者・平賀源内で、「土用にはウナギ」と宣伝したからだと伝わる。そんなウナギ人気に、昨年は中国産が冷や水を浴びせ、有害物質混入や産地偽装で、消費者を怒らせてしまった

ブームに火を付ける知恵もあれば、売り上げ激減の墓穴を掘る悪知恵もある。丑の日には、ウナギ受難に加え、消費者受難という教訓も加わってしまった。せちがらい世の中である。