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大雪山系遭難 ツアー人気に落とし穴 '09/7/19

 北海道・大雪山系の相次ぐ遭難は、60歳代が中心の登山客とガイド計10人が命を落とす惨事となった。手軽さゆえに中高年に人気の「ツアー登山」に潜む危うさを浮き彫りにしたといえる。

 中国地方の3人を含む8人が亡くなったトムラウシ山。ツアーを主催した旅行会社アミューズトラベルの計画に無理はなかったのか。安全対策は十分だったか。北海道警はきのう、業務上過失致死の疑いで同社の家宅捜索に入った。

 トムラウシ山は日本百名山の一つであり、高山植物が花畑のように群生しているという。同社は旅行カタログで今回のツアーを「例年、満席の大人気コース」と紹介。「やや健脚向け」に位置付けていた。

 北海道の2千メートル級の山は、本州の3千メートル級の難しさとも指摘される。広告のイメージほど手軽ではなかろう。2泊3日で40キロ余りを縦走するコースは休める山小屋も少なく、高低差も激しいという。それなのに予備日もない過密な日程だった。

 同社は過去十数回の同じツアーは問題がなかったと説明している。しかし自然界、まして高山では何が起きるか分からない。悲劇を招いた強風と厳しい冷え込みのような最悪の条件も想定しておくことが必要だろう。だが、死者の中には軽めの服装の人もいたといい、万一の備えが十分だったとはいえまい。

 遭難したツアーの行動にも疑問が残る。同じ日、地元のベテラン登山家が断念したほどの悪天候。その中で調子の悪い人を残して進み、ばらばらになって被害を広げた。「無謀だ」と感じた生存者もいるようだ。引き返す判断はできなかったのか。

 ツアー登山は個人参加が多く、経験や体力に差がある。初対面で意思疎通やチームワークの取り方が難しく、「行くか」「戻るか」の意向が分かれることもあろう。引率にも力量が要るが、今回はこの山を初めて案内するガイドもいたという。

 不測の事態に対応できるマニュアルは整えられていたのか。同社の管理体制が問われている。

 本格的に山に挑むには、以前なら仲間とパーティーを組む必要があった。今はツアーに申し込むだけで実現する。業者間の価格競争も激しくなっているという。旅行業界は計画にゆとりを持たせ、参加者に万全の備えを求めるなど安全を最優先した姿勢を徹底すべきだ。




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