来月の終戦の日を前に、海軍潜水学校に在籍していたことのある美浜町吉原の児玉五郎さん(86)が、軍港で空襲に遭ったときの惨状などを、同町内の戦争体験者の話をまとめた「語り継ごう-戦争体験 人々の証言」第2集に寄せた。児玉さんは「戦争は犯罪だ。憲法9条を守ることこそ自衛だ」と訴えている。【山中尚登】
「語り継ごう」は、護憲や反戦活動に取り組む「九条の会・美浜」(谷口幸男代表)の発行。昨年4月と今年1月に開いた「戦争を語る会」での講演や聞き取りで集めた話など、計9話をまとめた。
「私と戦争」と題した児玉さんの体験は、実習生として呉海軍の軍港へ手伝いに行き、遭遇した空襲。防空壕(ぼうくうごう)に逃げて助かったが、周りは火の海に。大勢の死傷者を、児玉さんは他の仲間たちとトラックに乗せ、野戦病院になった学校の講堂へピストン輸送した。
中には、内臓が裂け、息をすると「ブーブッ」という音がして、口や鼻から血のかたまりを出していた負傷者もいた。軍医の指示を受け看護師は、助かる見込みのある者だけに注射を打っていたという。搬送中に「水、水」とうめく兵士に「しっかりせえ!」と声を掛けたが、消え入るような声で「お母さん」と言いながら、息を引き取ったという。
「『天皇陛下万歳』とは言わなかった。それが死んでいった人たちの本当の最期だ」と、児玉さんは話している。
「語り継ごう」にはこのほか、海軍特別少年兵としてわずか15歳で戦場へ送られ過酷な体験をした人や、特攻隊員だった兄を亡くした人の体験なども収めた。
谷口代表は「戦争を風化させず、『戦争できる国づくり』を許してはいけない。この集録が、その一助になれば幸いです」と話している。B5判158ページ。500部製本し、資金寄付してくれた人たちなどに配布した。問い合わせは大谷眞・同会事務局長(0738・23・1272)。
毎日新聞 2009年7月18日 地方版