2009年7月16日12時32分
自宅の使用をめぐってトラブルが起きていた不動産業者の従業員の胸を突いて、けがをさせたとして傷害罪に問われた広島市の女性被告(76)の上告審判決で、最高裁第一小法廷(宮川光治裁判長)は16日、有罪とした一、二審判決を破棄し、無罪を言い渡した。女性の財産的権利が侵害されており、正当防衛が成立すると判断した。
生命・身体への攻撃がなかったにもかかわらず、他人への暴行について正当防衛の成立が認められるのは異例だ。
判決によると、女性の自宅の所有権の一部を不動産業者が取得。その後、不動産業者が「立ち入り禁止」と書かれた看板を取り付けては、女性側が外すことが繰り返されていた。女性は06年12月、再び看板をつけようとした不動産業者の従業員を突いて、頭にけがをさせたとして傷害罪で起訴された。
判決は、業者が看板をつけようとしたことで、女性側の建物に関する権利や名誉が侵害されていて、これらの権利を守ろうと、女性が業者を建物から遠ざける方向に押した、と指摘。暴行の程度も軽く、防衛手段として相当だったと結論づけた。(中井大助)