「ふぅ、やっと終わったか。今日は多かったな」
エドガーはようやく1日の仕事が終了し、その解放感から誰に対するでもなく一人つぶやいた。
だが明日起きればまた新しい仕事が舞い込んできているだろう。
終わりのない激務に疲労を感じつつ自分の部屋に戻ろうとして、扉の隙間から光が射している事に気が付いた。
こんな夜遅くに国王の部屋に勝手に入るような人物は一人しか心当たりがない。
「お疲れ。今日は遅かったね」
「…リルムか」
少女がさも当然と言った表情で、エドガーのベッドの上に腰掛けていた。
やや呆れ顔のエドガーをよそに、リルムはすでに意気込んでいる。
「色男、疲れたでしょ。これからリルムが疲れを取ってあげるね」
ここで言う”疲れを取る”には特別な意味が隠されている。
エドガーもそれを十分理解して言葉を返す。
「ダメだ、もう遅いんだから今日は部屋に帰って寝なさい」
「むー、リルムもう子供じゃないもん」
頬を膨れさせてリルムはエドガーを睨む。
あまり気迫は感じられず、むしろ微笑ましい。
「まだ子供だ。身体によくないから睡眠はちゃんと取った方がいいぞ」
「じゃあ、今日はしてくれないの?」
「ああ、そういう事だ」
「色男はたまってないの?」
「たまっ…!!
……欲求不満がないと言えば嘘になるけど、1日くらいは我慢できるさ」
予想外の一言に動揺するが、年上の威厳を崩さぬよう何とか言葉を紡ぎ出す。
「それじゃあ、勃たないとか?」
「……そうじゃない。俺はリルムの事を考えて…」
「んー、じゃあさ……」
しばし考える素振りを見せて、突然服を脱ぎ始める。
エドガーが止める間もなくリルムはショーツとブラだけの姿になる。
「リルムが欲しい…って言ったら?」
「リルム……?」
「リルム、色男のために何でもしてあげたいけど、それはリルム自身が欲しいからでもあるんだよ」
「……………」
「ほら……」
そう言ってエドガーの手首を握って自分の股に導く。
布越しに秘部に触れるとかすかに湿り気が感じられた。
「リルム…分かったよ。今からしよう」
エドガーが決断を下すまでほとんど時間はかからなかった。
エドガーはリルムを抱き寄せ、自分の膝に座らせる。
ベッドの縁でエドガーの胸とリルムの背が触れ合う体勢になる。
「そういえば、ブラジャーつけ始めたんだ」
「つけないと擦れてちょっと痛いから…ひゃっ!」
ブラジャーを上にずらすと小さなピンク色の突起があらわになる。
その小さなふくらみを指でつまんだり、指の腹で押したりして弄る。
「ひゃぅ……ん…うぁ…」
時折身悶えしてくすぐったそうに身体をひねる。
リルムとこれまでも何度か戯れた事のあるエドガーにとって敏感な箇所を責めるのは造作もない。
しばらく愛撫を続けていると、2つのつぼみが固くなってきた。
だんだんと頬も紅潮してきたところで、エドガーの両の腕を優しく押しのけて、カーペットの上に座り込む。
ちょうどエドガーの股間が目の前の高さにある位置だ。
「エドガー…口でしてあげるね」
ベルトを外し、ズボンを下ろすとエドガーのそれはすでに十分勢いを持っていた。
エドガーをベッドの縁に腰掛けさせたままにして、猛る肉の棒に顔を近づける。
「ちゅ……はむ…ぅん…」
右手で握って軽く口付けた後、口の中に異物を埋没させていく。
「ちゅぱ…ちゅぱ……んぐ……」
一度喉の奥まで深くくわえ込み、顔を前後にスライドさせる。
「そう、いえば…、エドガー……んっ…」
竿をしごきながらリルムが訊いてくる。
「ナンパは…ちゅっ……もう、しなく…んん……なったの?」
「…どうしてそう思うんだい?」
「だって、…フィガロ城に来てから…ふぁ…エドガーがナンパするの…んっ……ほとんど…見なく、なったし」
あまり自覚していなかったが、言われてみれば最近女官に声をかける事は減ったような気がする。
「そういえば確かに……うっ」
ここしばらくの自分の女性への態度を思い起こすが、リルムの舌によって思考が中断される。
口の中で蠢くものを舌でくすぐるように舐め回す。
その快感に気を抜くとすぐに果ててしまうになる。
「リルム…お尻をこっちに向けて」
エドガーはそう告げてから深く座り直して上半身を寝かせて仰向けになる。
リルムは言われるように身体を反転させて、エドガーの身体に自分の身体が重なるように覆いかぶさる。
これでエドガーもかすかに湿り気を帯びているリルムのショーツが丸見えになった。
「……こう?」
「うん、そうだ」
「それじゃ、また始めるね……んふぅ…くちゅ…」
リルムはすぐに再び口を動かし始める。
誘っているのか無意識なのか、エドガーの目の前で小さくお尻を振り始める。
それに目が釘付けになりながら、指で下着越しに奥に隠されたスリットをなぞる。
「っ!…く…っ…あぁ……」
リルムは最初戸惑うが、奉仕を続行する。
「ちょ…っと…、エド、ガー……そこは……んぁぁ……!」
スリットをなぞりつつ、割れ目の上部にある小さな膨らみにも時折刺激を加える。
陰核を攻められるたびリルムは全身を震わせ、言葉にならない喘ぎを漏らす。
時間とともに下着の染みが徐々に広がっていくのが分かる。
「んっ…は…ぅ……ひぅ…」
頃合を見計らって、リルムの下着を下へ下ろす。
覆い隠すものがなくなって無毛の裂け目が外気に触れる。
下着の内側には粘液でできた糸が引かれていた。
「ふぁう…!」
エドガーの怒張をくわえたまま、後ろを向いて自分の下半身の様子を伺っている。
エドガーが左右の両指でリルムの肉襞を押し開くと、中から少女の蜜が垂れ落ちてくる。
その下で口を開き、流れ落ちてくるエキスを受け止めた。
リルムは最初に合った時よりも背が伸びているが、
それでもエドガーとはかなりの身長差があるので顔の位置を合わせるのにも苦労する。
「んっ…リルムのが一番おいしいな……」
「もうっ…お世辞言ったって何もしないよ?」
言葉の上ではそういうが、それを聞いて口の動きは激しさを増していった。
リルムは舌を使いつつ、唇で竿を締め上げてくる。
エドガーもひし形に開かれたクレバスに舌をさしこみ、貪るように激しく動かす。
「くちゅ……ちゅぱ……」
ドアの閉じられた王の部屋で水音だけが響く。
「リルム、そろそろ…」
「んっ…いいよ、口の中に……」
エドガーの声を受けて、リルムは更に口の動きを増す。
「……うぁ…!」
エドガーのうめき声を合図に、頬張った剛直が激しく脈打つ。
「んっ…んぐっ…」
喉の奥に白い欲望が注がれていく。
少し遅れてリルムも全身を震わせて、蜜壺から多量の液体が溢れ出てきた。
リルムは懸命に飲み下そうとするが、次々と溢れ出る奔流を全て受け止められず、口の端からこぼれてしまう。
口から抜けても射精は止まらず、顔にもかかってしまう。
しばらくして、精の放出が止む。
リルムは口から垂れる白濁を見ながら放心していたが、こぼれた分を手の平で掬い上げて、不意に呟く。
「ほぅだ…ひいもふぉ、みふぇて…あふぇりゅ」
口の中に液体が多く残ったままなので、言葉がよく聞き取れない。
腰を上げて体を動かし、最初のようにベッドの下に下りる。
これでお互いの顔がよく見える体勢になる。
ただし、相変わらずリルムの眼前には勢いの残る屹立がそびえ立っている。
リルムの顔を見て、何か悪巧みをしている目をしている事に気付いた。
リルムはエドガーにその様子がよく見えるように、口内にたまった精液を嚥下していく。
「…ん……ふぅ…んぁ…」
口の中に溜まっているものが減ってくると今度は手の平にあるドロドロしたものを口に運び、それもすするように飲み込んでいく。
「んっ…んんっ…コホッ、コホッ」
少しむせたが最後には口の中の白濁を全て飲み切ってしまった。
「さて…それじゃ、最後に後始末してあげるね」
悪戯っぽい笑みを浮かべながら再びエドガーの股に顔を近付け、
未だ鎮まらぬ怒張にこびりついている粘液を丹念に舐め取る。
上目使いでエドガーの顔を見るとエドガーと視線が合ったが、気恥ずかしいのかエドガーの方から目をそらした。
「んぅぅ……はい、これできれいになったよ」
最後に軽く頬張り、強く吸い出す。
今度はエドガーがリルムの顔に残っていた精液をハンカチで拭いてやる。
そのまま服の乱れも直さずベッドの上でじゃれ合って余韻に浸る。
「じゃあ、そろそろ部屋に戻るね」
「ああ、分かった。それじゃ、廊下を見てくる」
二人の時間を十分に楽しんだ後、二人で服を整える。
エドガーが先に部屋の外に出て、廊下に人がいないか見渡す。
この時間帯になると廊下を出歩く者は夜勤の兵士以外ほとんどいない。
人気がない事を確認したらリルムに手で合図をする。
リルムは素早く部屋から出て、駆け足で自分の部屋に戻っていく。
世界に光に戻ってから2年が経過した。
暴虐の限りを尽くしていたケフカは倒れ、悪夢の象徴であった瓦礫の塔も崩壊した。
しかしケフカがいなくなったとはいえ、世界大破壊の前にすぐ戻れるわけでもなく、今は各地で復興が続けられている。
先の戦争や世界大破壊で主要な国家や都市の大半はその機能を失ったため、
比較的被害の少なかったフィガロ王国が中心となって復興は進められていった。
そのフィガロ王国のさらに中心人物とも言うべき、国王のエドガーは日々激務に追われていた。
エドガーが世界復興の最高責任者になってから1年が経過し、仕事にある程度余裕ができた頃にリルムは突然フィガロ城にやってきた。
ジドールの富豪アウザーの元で描いていた絵が完成したので、今度はフィガロで絵師として雇って欲しいとの事だった。
エドガーはその時2つ返事で承諾し、あっという間に王宮お付の絵師という身分になった。
正直フィガロの財政状況はよいとは言えず、国王から一般兵士に至るまで経費をなるべく抑えるよう腐心していた。
それを何の協議もなくあっさりと雇用したのだから、日頃賢王と敬われるエドガーもこの時は部下からの顰蹙を買う事になった。
リルムもその煽りで当初は冷たい目で見られたが、彼女の描く作品を見るにつれて王宮の者の態度も変わっていった。
そしてリルムがフィガロにやってきた頃の事を皆が忘れてきた頃、2人は主従を越えた関係を持ち始めた。
エドガーとリルムは世界に平和が訪れる前にも、1度だけ肌を交えた事がある。
といってもこの時も、また現在に至るまで本番行為には及んでいない。
これまでもそれに近い行為はするが一線を越えない、何となくそういう日々が続いている。
ある日、エドガーの双子の弟、マッシュが王宮を訪れてきた。
マッシュは復興のため各地を渡り歩いており、たまたま近くに来たため立ち寄ったとの事だった。
エドガーはそれを聞いて兄弟だけの酒の席を用意した。
「…そうか、それでは明日にはもう出発するのか」
「ああ、久しぶりの再開なのに、悪いな…」
「気にするな、お前が選んだ道だ。それに、フィガロの事は俺が何とかするさ」
「そうだ、この前ガウとカイエンに会ったんだが…」
しばらくの間、かつての仲間についての話に花を咲かせる。
「そうか、ロックとセリスが結婚したか」
「お前にも知らせてやりたかったんだが、連絡が取れなかった」
「まあ仕方がないさ。俺はまた旅に出るから、今度兄貴があの2人に会ったら俺からの祝福を伝えておいてくれ」
「ああ、分かった。それくらいお安い御用さ」
「そういえば、サマサでストラゴスにも会ってきたんだが…」
ストラゴスと聞いて、エドガーは心臓が縮こまる思いがした。
マッシュを見ると少し酔いが回っているが、冗談めいた表情がやや真面目なものになっているように見えた。
「あ、ああ…ストラゴス殿がどうかしたか?」
「何でも、リルムがここに来ているという話を聞いたから確認して欲しいと言われた」
「…………」
「さっきリルムに会った。本当に来ていたんだな」
「リルムは、俺が絵師として雇った」
「兄貴…どうしてリルムを?」
「彼女は絵の腕が立つし、王宮お付きの絵師として申し分ない」
「…本当にそれだけか?」
彼女の絵の腕前はエドガーもよく知っており、リルムくらいの実力なら王宮専属の絵師であってもおかしくないと思っている。
だがリルムが来たと知った時心の中では舞い上がっていたし、ただの『絵師』以上の事を期待したのも事実だ。
「…分からない」
エドガーは本心でそう呟いた。
実際に今どうやって接すればいいか、判断がつかないでいる。
国王としての自分、一人の男のしての自分。
異なる2つの立場で葛藤している。
「…まっ、俺は兄貴を信じているさ」
思い詰めた表情の兄を見かねたのか、マッシュが不意に軽く笑った。
さっきまでの詰問する雰囲気が一気に吹き飛んだ。
「俺には飲み相手になるくらいしか助けになれないけど、兄貴なら正しい答えを出せるさ。
辛い時は酒を飲んで忘れるっていう手もあるんだぜ」
「そうか…」
その日は夜が更けるまで2人で酒を酌み交わした。
次の日の早朝、マッシュはフィガロ城を後にした。
エドガーが起きる前だったので、別れの挨拶もできなかった。
もっとも、それにはエドガーの起床がいつもより遅れたせいもある。
後でその日のエドガーを目撃した兵士に話を聞くと、昨日帰ってきた時は直進さえできないほど酔っていたらしい。
侍女も泥酔して眠りこける国王の姿を見るのは初めてで、無理に起こすのは気が引けたらしい。
「あいつ…俺と同じくらい飲んでたはずなのに……」
エドガーはこれまでも弟を侮った事は一度もないが、この時もまた素直に感嘆した。
マッシュにはとにかく愚痴りまくっていた気がするが、何を言っていたかはよく覚えていない。
その日はあまり仕事がはかどらなかった。
昨日の酒が身体に残っているせいもあるし、他の考え事をずっとしていたせいもある。
「リルムとの事、か…」
一人になって、昨日聞かれた事を改めて自問する。
マッシュは気を遣って笑い飛ばしてくれたが、自分にとっては決して避けられない問題だ。
以前、ファルコン号で仲間とともに世界を救う旅をしていた時に自分の気持ちには気が付いていた。
だが旅が終わり、王としての職務が自分の身に降りかかった時、もう一つの事を思い出した。
自分は一国の王であり、その責任から逃れる事はできないという事を。
国王の行動は国民が注目しているし、何かしらのスキャンダルを起こせば国の地盤が揺らぐかもしれない。
自分が原因で国が乱れる事は避けたい。そのためには模範的である事が望ましい。
「…そんな偉そうな事言ってるくせに、昨日は酔いつぶれちまったけどな」
思考の途中で自嘲的な笑みを漏らす。
すでにエドガーの女好きは広く知れ渡っているが、リルムの事は事情が違う。
最初は自分の気持ちを押し殺して私情を挟まずに接するつもりでいたが、いつの間にか今の関係に発展している。
「いや、最初に雇った時から、私情しかなかったのかもしれないな…」
リルムとの関係はこれまでなるべく考えないようにしていた事柄だが、改めて頭を巡らせても結論は出せなかった。
その日の夕方になって、今度はロックとセリスがフィガロ城を訪れた。
今日は仕事がほとんどさばけないと判断して、早々に切り上げてロックとセリスに会いに行った。
2人は客室の間に通されたので、エドガーもそちらに向かった。
エドガーが客室に行くと、晴れて夫婦になったロックとセリスが待っていた。
「2日連続で懐かしい客人が来るとは思わなかったぜ。1日ずれてればマッシュと会えたのにな」
「そういえば、結婚式に来なかったのはマッシュだけだったな」
「よろしくって言ってたぞ」
「そう…マッシュは今何してるの?」
「世界各地で復興の手伝いをしているらしい。昨日泊まって今日の朝にはもう出て行った」
「行き違いになってしまったわね」
「そういえば、今日はどうしてやってきたんだ?コーリンゲンから遠かっただろ?」
フィガロ城は砂漠を潜行する事でコーリンゲン付近の砂漠とサウスフィガロ付近の砂漠を移動できるが、
砂漠間の移動は最近ずっと行わず、今はサウスフィガロ付近に居を構えている。
1回ごとの経費がかさむというのと、今や世界復興の中心である
城の位置が変わっては伝令が混乱するというのが主な理由である。
一方、ロック達は結婚してコーリンゲン近郊に一軒家を建て、
生活が落ち着くまではトレジャーハンターを休業すると仲間に宣言していた。
「そ、それは…そう、トレジャーハンターを再開したから、その報告に来たんだ!」
「そ、そうそう。今度は私もついていく事にしたわ」
「だが結婚式の時は、確か子供ができるまでは休業するって……」
「そ、そんな事より!」
エドガーの言及をロックが強引に止める。
「リルムがここに来てるって話を聞いたんだが…」
「リルム?ああ、今はフィガロ城専属の宮廷絵師だ」
「どうしてリルムを雇ったんだ?」
「それは、リルムは絵師として申し分ない実力を持っているからだ」
昨日もマッシュに似たような事を聞かれたが、今日もまた似たような答えを返した。
二度目である事や、気心が知れているものの相手が親友である事から、それほど後ろめたさは感じなかった。
それに、別に嘘をついているわけではない。
「そうやって現実から逃げているのか?」
「なっ……」
予想外の一言にエドガーは言葉が詰まってしまう。
「…ごめん、今のは言い過ぎた。でも、やっぱり立場の違いとか気にしてるのか?」
「……………」
「その、うまく言えないけど、立場や身分なんてそんなに大きな事じゃない。
周囲を気にして自分に素直になれないと後で後悔する事になるかもしれないぜ。
お前は王様だから、そう簡単にはいかないかもしれないけどな」
「自分に素直に、か…」
ロックの言葉を受けてエドガーはしばし思案する。
やがて自分の中で結論が出たのか、
「そうか…そうだな……
俺はちょっと探し物をしてくる。ロック達はそこでゆっくりしていてくれ」
「あ、ああ…」
ロックの返事を待たずエドガーは客室を飛び出していった。
「……で、これでよかったのか?」
エドガーが部屋の外に出るのを確認した後、ロックは木箱の蓋を開けた。
そこには、絵描きの少女が器用に丸まって納まっていた。
「よいしょ、よいしょ…あー、せまかった」
中の物に当たりながら這うようにして出てくる。
「うん、まあまあだよ。あやしまれたと思うけど、多分色男は気が付かなかったよ」
リルムはテーブルの下でロックが見ていた紙を受け取り、ぐしゃぐしゃに丸める。
「脚本を棒読みしないでまずまずの演技だったね」
「半分以上は俺のアドリブ、本音だからな」
エドガーは結構洞察力が鋭いので、テーブルの下に視線を向けたままだと何かあると勘付いてしまう。
だからリルムに渡された紙の台詞をなぞりながら話せず、要点しかそらんじられなかったという事情もある。
「はいはい、そういう事にしておくよ」
「リルムの書いたセリフそのままじゃますますエドガーに怪しまれるだろ。
『現実から逃げている』だって、危なかったかもしれないし」
「なにをー!」
「まぁまぁ、落ち着いて」
喧嘩になりそうなところで、セリスが間に割って仲介する。
「急に呼び出されたから何事かと思ったけど、エドガーをその気にさせるためだったの?」
「色男、変にフェミニストだからこのままじゃリルムいつまで待たされるか分かんないよ」
「昨日マッシュが来たらしいけど、それもリルムが呼んだの?」
「ううん、筋肉ダルマがここに来たのは偶然。2人の話を聞いていてロックとセリスを呼ぶ事を思い付いたの」
「2人の会話を盗み聞きしてたのか?」
「別に立ち入り禁止の所に行ったわけじゃないし、リルムに関係のある話だったから盗み聞きじゃないよ」
「そういうものかぁ…?」
「すごかったよ。何時間もず〜っとリルムの事で愚痴を言っていたんだから。
自分の立場がどうとか、年齢差がなんだのとか……
あの時は筋肉ダルマも可哀想に思えちゃった。
リルムはもう心の準備はできてるんだし、それなら後押ししてあげようかな〜って」
「計算高いわね…」
セリスは思わず口に出して呟いていた。
「ん、何か言った?」
「いや、何も言ってないわよ?」
「それより、手紙出して次の日にもう来るとは思わなかったよ」
「トレジャーハンターは何事も早いのが信条だからな」
「その割に、セリスをモノにするのは遅くなかった?」
「何だと?」
「じゃあ、色男が用事済ませる前にもう行くね」
ロックが再び怒り出す前にリルムはその場を退散した。
その後ロックとセリスは夕食を食べた後にフィガロ城を去った。
エドガーに嘘をついた手前宝探しに出ると門番の兵士には言い含めたが、本当の目的地は当然自宅であった。
チョコボを借りて帰途についている間、夫婦はフィガロ城での出来事を話し合っていた。
「…でもさ、結局リルムは何がしたかったんだ?」
「……意味が分からないであんな事言ったの?」
「?あ、ああ…リルムの言ってる事もよく分からなかったし」
「呆れた……」
セリスは深いため息をついた。
エドガーは客室にいるロック達を放って自分の部屋に戻っていた。
先代フィガロ王、つまりエドガーの父の部屋は十数年前に毒殺された際にエドガーに割り当てられた。
調度品の類もそれに合わせて自分のものとなったが、先代のごく私的なものが収められた引き出しはそのままにしてある。
その引き出しを動かすと、十数年分の埃が舞い上がった。
埃の奥からは父の思い出が詰まっているとおぼしき品々が出てきた。
中にはエドガーが幼少の頃に見た覚えのある物もあったが、今目的としているものはそれらではない。
自分の記憶が定かなら、父は確かにそれを所持していた。
そしてこれまでの身辺整理で出てきていないので、あるとしたらこの引き出しの中しかない。
「……遅い」
リルムはロック達と別れた後、自分の部屋に戻り、エドガーがやってくるのを待った。
エドガーがやってくるまで手持ち無沙汰なたため途中の絵画の着色に手をつけ始めた。
しかし途中で夕食を取り、それからさらに時間が経過してもエドガーが姿を見せる気配はない。
苛立ちでだんだんと筆の動きが鈍くなってくる。
リルムはロックとエドガーのやり取りの一部始終を木箱の中で聞いていた。
そのためすぐにリルムの部屋にやって来ると思ったが、いつまで経ってもやって来ない。
ついにしびれを切らしてリルムの方からエドガーの部屋に向かった。
「色男、いつまで探し物してるの?」
リルムはノックもせずに王室に上がりこんだ。
「リルムか…ちょうどよかった、今そちらに向かおうと…」
「い、色男、何やってるのよ!」
気が立っているリルムとは対照的に、エドガーは精神を落ち着かせていた。
いきなり部屋に入ってきた事や自分が探し物をしていた事をリルムが知っていた事は気にならなかったらしい。
リルムが部屋に入ってきた時、エドガーはタオルを腰に巻いているだけの姿であった。
彼女が戸惑うのは珍しいので一瞬狼狽したが、つとめて平静にふるまった。
「何って…水を浴びてたところだったんだが」
だがエドガーもリルムが自分の裸を見て驚くのも分からないでもなかった。
リルムは普段交わる時もエドガーの裸を見る事は少ないし、水浴びからあがった姿を拝むのは初めてであった。
「でも何で水浴びなんか…」
リルムはそこで一度言葉を止め、しばらく自分の思考の世界に没頭する。
エドガーも声をかけずにリルムが会話を再開するのを待つ。
「あぁ、ついにリルムにもこの時が……」
「…はい?」
しばらくして発されたリルムの台詞を頭が処理できず、間の抜けた声を挙げてしまう。
「愛し合う二人が結ばれるための準備をしていたんでしょ?
大切な儀式の前にはやっぱり身体を清めないといけないし、レディに対するマナーだもんね。
リルム初めてだから、ちゃんと優しくしてね」
リルムの自己陶酔的な語りを聞いて、エドガーは次の句が思い浮かばなかった。
沈黙の時間がしばし流れた後に我に返り、冷静に返答を返す。
「いや……俺がシャワー浴びてたのは、ただ体が汚れたからだけなんだが…」
エドガーは先の探し物の際に結構な量の埃をかぶって顔も服も黒ずんでしまったために、水を浴びていた。
そして身体を冷やし、新しい服に着替えようとしていたところでリルムが部屋に入ってきた。
「それだけ?」
「それだけだ」
「はぁ…リルムつまんない……」
「そうか…つまらなかったか」
「…んんっ?」
不意打ちで唇を唇で塞ぐ。
右手でリルムの後頭部をおさえ動けないようにした上で、舌を挿し込む。
リルムも最初は目を見開いて驚いたが、すぐに瞼を閉じて舌を動かして応えてくる。
「…っ……んふぅ…ふあぁ……」
お互いの技巧的な舌使いでどちらも気分が高ぶってくる。
息苦しくなってきたところで唇を離す。
2人の間に唾液でできた糸が走る。
リルムの方を見ると、目を半開きにして恍惚としていた。
エドガーはリルムを抱きかかえ、ベッドの上に仰向けにして組み敷く。
普段はリルムが積極的に攻めてくるので、こういう体勢になる事はあまりない。
「さっきはこうなるよう仕向けるためわざとあんな事を言ったんだろう?」
「…ばれた?」
「なんとなくね。ちょっと演技ぽかったし」
手早くリルムの身体を覆う布を剥いでいく。
あっという間に下着だけになってしまう。
下着の横から指を入れて、少女の過敏なところを愛撫していく。
「んっ……はぁ…」
擦ったり摘んだりして刺激を加えていく。
エドガーの指が敏感な所に触れるたび、リルムの口からは声が漏れていく。
「くぁっ……んぅ……」
少し弄るだけでショーツの内側が粘液にまみれてきた。
リルムもそこが濡れてきたら残っている下着も脱がせてしまう。
一糸まとわぬ姿でベッドに横たわるリルムを見て、エドガーは自分の動悸が早まるのを自覚していた。
エドガーも腰に巻いているタオルを取り、生まれたままの格好になる。
リルムの両足を開かせて、秘所がよく見えるようにする。
「じゃあ、挿れるよ…」
「う、うん…」
一度決意したとはいえ、いざ実際に行動を起こすとなると全身が緊張してしまう。
それはリルムにしても同じようで、不安を表情に隠せずにいる。
肌が近付きあい、リルムは自然とエドガーの背中に手を回して抱きついていた。
すでに硬い凶器と化している一物をリルムの少女の部分へあてがう。
そしてゆっくりとめり込ませていく。
「痛っ……」
エドガーが考えていた以上にリルムの中は狭かった。
ほんの少し挿入しただけでリルムは苦痛を訴える。
リルムがあまり痛がらないように慎重に腰を押し進めていく。
「くっ…んっ…」
痛いと口に出しては言わないが、顔を見れば我慢している事は明らかだった。
強烈に締め付けてくるため、進む速度は非常に遅くなっている。
快感が全身を巡るが、リルムの苦しむ姿を見ていると欲望のままに動く気は失せてしまう。
「リルム、ごめん…すぐ終わらせるから」
ほとんど意味をなさないと分かっていつつも、エドガーは慰めの言葉をかけずにいられなかった。
途中で何かに当たり、それ以上進入できなくなる。
エドガーはそれがリルムの純潔の証である事を理解していた。
今一線を越えてしまえばもう後戻りはできなくなる。
その現実に直面した時、先へ進む事を躊躇してしまう。
「いい、よ…リルムなら…平気だから……」
リルムがエドガーに声をかける。
自分の心の内はすでに決まっていたが、リルムの一言で踏ん切りがついた。
一度大きく呼吸をして、意を決して一気に奥まで突き入れる。
「…っ!ああぁっ!!」
リルムが小さな悲鳴を上げ、同時に何かが裂けたような感覚に襲われる。
そっと2人がつながっている箇所を見ると、赤い液体がしたたり落ちていた。
背中に回した手に力がこもり、リルムの爪が背中に食い込む。
そのまましばらく動く事ができなかった。
リルムの頭を撫でて、全身の力が抜けるのを待つ。
「大丈夫…もう……痛くないから」
しばらくの間その体勢でいた後、震える声でそう告げた。
「じゃあ…動くよ…」
「ふぅ…ひぁ……!」
少しだけ引き抜き、元の位置に戻す…それを繰り返していく。
少し動かすだけでも大きな抵抗を感じる。
リルムの身体が小さいからか、肉棒が半分くらい埋没したところでリルムの奥にあたってしまう。
あくまでゆっくりと腰を前後させる。
「くぅ……んぁ……は…ぁ……」
痛みによる声が和らいで、別の声色も混じってきたように感じた。
「エドガー…、もう、ちょっと…はぅ…早く…しても…っ、大丈夫、だよ……あぅぅ…」
「んっ、ありがとう…でも今日はこれくらいで…いくつもりなんだ」
エドガーは快楽に完全に支配されつつある頭でかろうじてそれだけを答える。
どちらにしろリルムの身を案じてあまり激しくは動かないつもりであった。
リルムの方も徐々に快感が増してきたのか、苦しみの表情がいつの間にかなくなっていた。
「リルム…そろそろ出すよ……」
「んっ…エドガー…分かったよ……っ…」
エドガーは絶頂の時に向けて心持ちペースアップをはかる。
しかしそれでもリルムに痛みを与えない程度の速度である。
「…っ、リルム…!」
欲望が発射される直前、リルムの中にある屹立を引き抜く。
その瞬間頭の中で何かが弾け、熱い飛沫がリルムの身体に降り注いでいく。
「あっ…熱い……」
白濁はお腹から肩まで飛び散り、少女の肌を汚していく。
エドガーの射精が止まるまでリルムは灼熱を受け続けた。
全てを出し終えるとエドガーはリルムの上に倒れこんだ。
「はぁ、はぁ……」
2人とも肩で大きく息をしながら呼吸を整えている。
ある程度息が落ち着いたところでリルムは手の平を広げてお腹の汚れに触れ、
手にへばりついたベトベトを見て恍惚の表情を浮かべる。
「次は…中に出してね」
「リルム…レディはもう少し恥じらいというものを…」
「この年でこんな目にあったんだから、今さら恥じらいも何もないですよーだ」
この後しばらく抱き合いながら話し合っていたが、夜が更けてくる頃にリルムは眠りについてしまった。
「……ん…」
朝の日の光を受けてリルムは目を覚ました。
昨日の余韻がまだ残っていて、頭の中に霞がかかった気分になっている。
ぼやける視界と意識が徐々に鮮明になっていき、エドガーの顔が眼前にある事に気付く。
「やあ、起きたか」
「んあ…おはよう……そっか、昨日リルム色男と…」
「身体の方は大丈夫か?」
「うん、もう痛くないよ」
「そうだ、リルムに渡すものがあるんだ。昨日渡そうと思っていたが、その、色々あって…」
昨日の夜、先代の遺品を漁って見つけたものを手に持つ。
リルムが眠っている間に一度起き上がり、あらかじめすぐに渡せるよう手の届く場所に移しておいた。
それは汚れてはいるが高級そうな箱で、蓋を開けると中には指輪が入っていた。
「これは?」
「俺の親父が、昔お袋に送ったものさ」
「……ってことは、もしかして…?」
「新しいものを買いに行く時間がなかったから、親父の遺品から見つけてきたんだが…」
リルムの左手を取り、薬指にはめる。
だがサイズが合わず、指先を下に向けると抜け落ちてしまう。
「アハハ、サイズが合わないよ」
「…そうみたいだな」
エドガーは指輪を探す事に夢中で、サイズが違うかもしれないという事には全く思いが至らなかった。
今のリルムには大きすぎる指輪を見て、エドガーは急に自尊心が傷付いたショックと羞恥心に襲われた。
「…でも、分かったよ。この指輪もらうね」
「そ、そうか、受け取ってくれるか!」
リルムはベッドのシーツに落ちた指輪を拾って、しっかり握り締めて指輪を受け取った。
思わぬ失敗をしたところで助け舟を出されて、エドガーは思わず喜びを声と顔で思い切り見せつけていた。
「…何か、昨日は疲れたから、もう少し寝かせて……」
リルムはそう言って後ろを向き、手に指輪を握ったまま再び瞼を閉じる。
「リルム…ありがとうな。そしてこれからも……」
エドガーはそんな様子のリルムを見て、リルムの頭を後ろから一撫でしてベッドを出た。
これから立場ゆえに苦しむ事がますます増えるだろう。
リルムとの事は王国の関係者、特に重臣から猛反発を受けるかもしれない。
だが自分の気持ちに素直になった結果だし、これから何が起ころうと受け止める覚悟はできている。
まずは正式に発表をするべく、エドガーは服装を整えて自分の部屋を出た。
後ろでは小さな少女が寝息を立てながら眠りについていた。