Q:ウェキペディアに参加されて、「管理者」になられた経緯を教えてください。
今泉2003年の2月にスラッシュドットにウィキペディアのことが掲載されたんですが、その日から参加していて、それ以来です。管理者になったのは、当時、活発に活動しているユーザーというのは、10人ぐらいしかいなかったので、その中で誰か管理者やろうということになって、1人手を挙げたという感じです。今は、選挙して得票を集めないとなれないんですけど。彼(岩瀬氏)なんかは、そうして管理者になったんです。
岩瀬僕は始めたのは2004年の3月なので、けっこう最近とも言えます。フリーソフトウェアの影響も受けていたので、フリーコンテントについても、すんなり受け入れられました。
Q:日常的に活動されている方は何人ぐらいですか?
今泉300人ぐらいが集まっていて、月に100回以上編集しているユーザーが、今150人前後です。管理者は32人です。
Q:多くの人たちが、自主的に記事を作成して、編集していくというのは、内部のやりとりが、ひじょうに難しいと思うんですが、ウィキペディアは、そのあたりがスムーズに流れているように見えます。そういう実感はお持ちですか?
今泉運がいいなとよく思いますね。要所要所でまとめる人が出てきて、なんとかなってる。リーダーシップをとる人がときどき出るんですよ。
Q:もめごとがある時になると、そういう人が現れてきたんですか?
今泉記事の内容から運営の方針まで、もめごとはしょっちゅうです。どこかからコピーして記事を作るということは、やってはいけないわけですが、ある一つの記事に対して、これは転載なのか転載じゃないのか、というのをみんなで判断していく必要があって、そこでもめたり。こっちの文献ではこう書いてあるけど、別のほうにはこう書いてあってどっちを採用するのか、とかいう言い争いは常にありますね。それに世間でもめているところは、ここでももめるところです。例えば、政治的なことで、竹島問題とか南京大虐殺とか。
Q:「中立」というのが、ウィキペディアの柱の概念としてありますね。それを記事として成立させるのは、かなり難しいだろうなと思います。
今泉はい。一番の基本は長くなってもいいから全部併記する、ということですね。誰々がこういっている、誰々がこういっている、というのを、ソースを明らかにした上で、全部併記していけば内容的には中立になる、という考えがベースなんです。けれど、相手の意見を書かせない、というユーザーも中には出てきて、まとまらないところは、投票して決めたりしています。
Q:ウィキペディアがうまくいっている理由は、どうしてなんでしょう。Wikiの機能にその理由があるんでしょうか。それとも、ウィキペディアの中に運営のノウハウが蓄積されているんでしょうか? もしくは、参加されている方たちの個人の能力にあるんでしょうか?
岩瀬それなりにウィキペディアも長いですから、ノウハウの蓄積もありますね。
今泉「中立的な観点」という項目がよくできているんですよね。他にポリシーというものがないぐらい、中心的な概念ですね。だから、何かあった時は、「ここを参照してくれ」と。
Q:アメリカの運営母体のウィキメディア財団のほうからは、何か指示があるんですか?
今泉"中立的な観点"と、ライセンスのGFDL(GNU Free Documentation License)を守れば、あとは自由にやってね、って感じで言われている、というか・・何も言われてないですね(笑)。向こうで日本語わかる人いないので。
Q:ウィキペディアのために作られたソフトのメディアウィキの機能によって、運営がうまくいっているということはありますか?
今泉ウィキのシステムは、誰でも自由に書けてしまうので、論争には向かないんです。自由が利きすぎる。ちょっとした荒らしなどには、対処しやすいシステムになっています。普通のウィキは、変更すると変更した後のものしか残らないんですが、その経過をすべて残してあることで、いたずらされてもすぐ前の状態に戻せる、とかですね。
岩瀬それが管理者にはクリック一発なので、早いものだと数秒で元に戻っていることもあります。