「NHKの番組が偏向している」として8000人が提訴したという記事を、紙面で目立つ扱いにした。どう受け止めるかはもちろん読者次第だが、私としては違和感を伝えたかった。
日本による台湾の植民地統治を検証した番組「JAPANデビュー」に反発する人たちが、ネットやCS放送、デモなどで抗議を続けている。それ自体は「言論の自由」だ。嫌な感じなのは元首相を含む国会議員が絡んでいること。以前、NHKの従軍慰安婦問題を特集した番組や映画「靖国」でも指摘されたことだが、政治家の発言は圧力になりかねない場合がある。特に慎重であってほしいと思う。
番組内容は「台湾は親日的」との固定観念が問い直され、当時の「同化政策」がチベットやウイグルへの施策と通じる面もあるように感じられ、興味深かった。万人が納得するキャンペーンはない。「筆を曲げない」気概だけは譲らないでほしい。 (笠島)
=2009/07/16付 西日本新聞朝刊=