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麻生「押込」の構造 - 池田信夫

2009年07月18日00時10分 / 提供:ニュースブロガー

ニュースブロガー

アゴラ

ここ数日の自民党の騒ぎを見ていると、近代的な政党政治より、時代劇の「お家騒動」を連想してしまいます。一般には、武家というのはきびしい身分秩序で上意下達になっていたと思われていますが、笠谷和比古氏が『主君「押込」の構造』で示したように、実際の武家では無能な主君を家臣が監禁したり引退させたりする慣行がありました。それに照らしてみると、今回の「麻生『押込』」騒動は、伝統的な日本的組織の特徴をよく示しています。
まず普通の政党で考えられないのは、最高意思決定機関である総裁の決定が最終決定とみなされず、「解散の詔書に署名しない」という閣僚まで出てくることです。日本の組織で大事なのは組織の「総意」であり、それを集約しないで総裁が解散を決めても――それがたとえ法的手続きにのっとっていても――党員が認めないというのです。つまり日本の組織の意思決定は(こんな緊急時にあっても)ボトムアップでなければ正統性をもたないのです。

このような小集団による自律分散的な意思決定は、多くの人の指摘する日本の組織の特徴ですが、笠谷氏によると、その起源は武家の単位である藩の軍事的構造に由来するそうです。映画などでは、よく戦陣に殿様が座ってその回りを家臣が囲んでいますが、あれは間違いで、実際には家臣はそれぞれ備(そなえ)という数十人の小隊を率いて分散的に配置されていたそうです。備は指揮官(旗頭)の命令によって臨機応変に動き、中央の指揮はあおぎません。こうした備の機動性の高い藩が、戦国時代を勝ち抜いたのです。

自民党の派閥は、この備です。それは小選挙区になったらなくなると思われましたが、依然として残っています。それはこうした自律分散的に動ける集団の規模が数十人にかぎられるからです。町村派のように大きくなりすぎると、かえって内部分裂して派閥として機能しなくなります。最近では、中川秀直氏などのグループが新しいタイプの派閥になりつつあります。

他方、民主党も今は安定していますが、政権をとったら、かつての細川政権のように旧社民党グループと小沢グループなどの抗争が始まるでしょう。つまり欧米的なピラミッド型の機能的な政党政治をモデルにした二大政党というシステムは、どうも日本的組織になじまないのではないでしょうか。これはどっちがいいとか悪いとかいうわけではありませんが、今のような「レジーム転換」には日本式はあまり向いていないようです。

しかしこういう「軟体動物」的な指揮系統しかない日本も、江戸後期には黒船などの外敵に対して見事に対応し、体制の転換を果たしました。笠谷氏の『武士道と日本型能力主義』によれば、それは勝海舟のような最下級の武士でも能力があれば対外的な交渉の大権を与える能力主義が機能していたからだそうです。もともと年功制というのは、武士としての身分によらないで「功績」によって序列をつける、抜擢のシステムだったのです。

ところが明治以降、武士としての身分がなくなると「功績」が「年功」にすりかえられ、官僚機構(特に軍)では厳格な年功序列が制度化されました。民間では戦前まで終身雇用も年功序列もありませんでしたが、戦後は大企業で官僚制度をまねた年功序列が広がりました。自民党の世襲は、そのさらに堕落した形態です。その意味では、今われわれは近世以来の日本的組織が崩壊する過程を見ているわけで、これはもしかすると政権交代より歴史的な転換なのかもしれません。

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