海上自衛隊を東アフリカ・ソマリア沖の海賊対策に派遣する海賊対処法。自衛隊派遣に慎重姿勢だった民主党は4月21日、与党に自衛隊派遣を条件付きで容認する修正案を示した。だが細かい点で与党との修正協議は折り合わず、最終的に決裂。政府案は6月19日、衆院で与党の3分の2以上の賛成で可決され、民主党は反対に回った。
民主党修正案の主な柱の一つは、自衛官に「首相主導の海賊対処本部(新設)」の身分も持たせて派遣するというものだった。
自衛隊派遣に難色を示しながら事実上容認する、不可解な修正案が生み出されたのは、党の支持母体である連合の傘下組合「全日本海員組合」(組合員2万5000人)の要求を踏まえてのことだ。
「党幹部が『憲法の範囲で、自衛隊が海賊を取り締まるのはやむを得ない』と言っている」。商業用船舶の船員で構成される同組合の藤沢洋二組合長は4月中旬、民主党関係者から告げられた。
同組合は海賊対策で船員の人命保護を優先し、与野党に自衛隊派遣を認める法制定を求めていた。藤沢組合長は、「我々は有力な産業別労働団体。発言力がある」と胸を張った。
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政府案に反対しながら、水面下では支持母体の要求であいまいな修正案を提出した民主党。民主党の外交安保はどこへ向かうのか。<9面に「民主政権」研究 外交・安保編>
毎日新聞 2009年7月18日 東京朝刊