オバマに「ファンだと言ってもらった」…イチロー興奮

　米大リーグの「第８０回オールスター戦」は１４日、セントルイスのブッシュ・スタジアムで行われ、９年連続で出場したマリナーズのイチロー外野手（３５）は、ア・リーグの「１番・右翼」で先発。１回に昨季のサイヤング賞、リンスカム投手（ジャイアンツ）から右前打を放ち、３打数１安打だった。試合は、ア・リーグが４−３で勝ち、１分けを挟み１２連勝。対戦成績を３８勝４０敗２分けとした。最優秀選手（ＭＶＰ）には本塁打性の飛球を好捕したクロフォード（レイズ）が選ばれた。

【球宴３年連続の安打】

　約１５０年の野球の歴史を持つセントルイスの地へ、４３年ぶりに戻って来たオールスター戦。熱い観客の前で、プレーボール直後、イチローが、いきなり魅せた。

　昨年のサイ・ヤング賞（最優秀投手）右腕、リンスカムに対し、初球から本塁打狙いのフルスイングで、右翼への大ファウル。そして、カウント２−２から外角のチェンジアップを完ぺきに捕らえ、右前に運んだ。

　「昨日、（ア・リーグを率いるレイズの）マドン監督と偶然レストランで会って、ワインをごちそうしてもらった代わりに『１球目を打て』と言われていたんですよ」

　史上初のランニング本塁打で最優秀選手に輝いた２００７年以来、球宴では３年連続の安打。イチローが口火を切って、ア・リーグは２点を先制した。２回２死で迎えた第２打席は右直。５回無死一塁での第３打席は一ゴロに倒れ、ベンチに下がったが９年連続球宴出場のイチローは、十分に存在感をアピールした。

【「大統領とシスラーさん…生涯残る」】

　球宴常連となったイチローが「今回は特別なオールスター」と繰り返す。前日の朝、セントルイス郊外にあるジョージ・シスラーの墓前を訪れた。２００４年に２６２安打を放ったイチローが破るまで、８０年以上もシーズン最多安打記録を守り続けたシスラーの墓碑には「１９７３年３月没」の文字。その年の１０月に生まれたイチローは、「何か特別な思いがした」と改めて感慨を覚えたという。

　また、この日の試合前には、サプライズもあった。始球式を務めるオバマ大統領がロッカールームを訪れ、イチローに声をかけた。

　「オバマ大統領がすごかった。なぜ肩が強いのか質問された。すごいファンだと言ってもらって感動したし、自分を知っていてくれて驚いた。『ワッツ・アップ（調子はどう？）』とこっちから言う予定だったけど、とてもとてもそんな感じではない」

　クールな男が、珍しく声を弾ませた。その場で大統領にボールを差し出し、サインを求めたという。「やっぱり大統領と、シスラーさんですね。この二つは生涯残る…」。チームも勝ち、収穫たっぷりの球宴を満喫したイチロー。後半戦で前人未到の９年連続２００安打を目指す。

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