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高校野球

【第91回全国高校野球選手権大阪大会】

「打倒PL」負けても財産 布施

2009年07月15日

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「悔しいけどな、負けて恥ずかしいなんて思っていない」。万谷監督(右)の言葉に涙をこらえきれない選手たち=南港中央

 「PLには?」「負けん!!」――。

 そんな合言葉を掲げ、14日の1回戦で布施はPL学園に挑んだ。昨夏の南大阪大会、昨秋の府大会と、いずれもコールドで敗れた相手だ。「三度目の正直」を期して挑み、初回から気合十分。PL学園の先発・井上大樹(3年)の立ち上がりを突き、1、2番打者が鮮やかに連打して好機をつくった。

 2死二、三塁となり、打席には5番三塁手の鳴尾龍一郎(3年)が立った。昨夏のPL学園戦4番を任されたが、無安打に終わっていた。秋の対戦では走者と交錯、左ひざを痛め、約4カ月練習を離れた。

 「自分の居場所は残っているだろうか」と不安もあったが、「次にPLと当たったら絶対勝ったる」と誓ってリハビリに励み、復活した。しかし、変化球を振らされて三振。天を仰いだ――。

 布施の2度の敗戦は、昨夏の南大阪大会準々決勝の0―7(8回コールド)、秋の大会の0―13(5回コールド)。歯が立たなかった。「他のどの私学でもなく、ただひたすら打倒PL学園だった」と橋本茂人主将(3年)。打撃マシンの速度を上げるなど、対策を練った。6月の抽選会でPL学園と当たるくじを引くと、部員からは「ようやった」「いずれ当たるんやから早い方がええわ」「やったるで!」と威勢の良い言葉が飛び出した。

 数日前のミーティング、万谷和彦監督(50)が古びた新聞記事を取り出して、選手に言った。「21年前、5回戦で布施はPLを破り、ベスト4まで進んだ。前年はPLにコールド負けしたチームだ。やってみなきゃわからんぞ」

 万谷監督は、けがから復活したエース楳木萩兵(うめきしゅうへい)(3年)を公式戦で初めて起用した。1回裏、4番打者に高めに浮いた球を左翼席に運ばれる。守備の乱れも目立ち、7失点。「やっぱりだめなのか」。重い空気が広がったが、2死二、三塁のピンチで、継投した村上和正(3年)が得意のカーブで三振にしとめた。「いつも通りの投球ができた。あとは1点ずつ取り返せばいいと思っていた」。

 浮足立っていた野手たちも、次第にいつものプレーができるようになっていた。

 しかし、結果は0―10の5回コールド負け。

 泣きじゃくる選手に万谷監督が語りかけた。「PL学園に三度も負けるのは、本当に悔しい。違う分野でPLに勝とう。くじけることなく頑張ろう。最後まで戦ったと……。もっと強い人間になって来るべき時に頑張ろう」

 3打数3安打と一矢報いた1番打者の斉藤圭佑(3年)は「つらいといえばつらいけど、勝負は勝つか負けるかだけだから、恥ずかしいとは思わない」と胸を張った。「負けて得るものも、大きいのだ」と信じて。=敬称略

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