2001年6月21日の皆既日食
(ザンビアにて)
画像提供:福島英雄氏
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2009年7月22日には日食が起こります。日本では、全国で部分日食を観察することができます。また奄美大島北部、トカラ列島(注1)、屋久島、種子島南部など、皆既日食帯と呼ばれる細長くのびた地域・海域内では、皆既日食を観察することができます。
皆既日食になると、太陽のまわりにはコロナが広がって見られます。また太陽表面から吹き出ている赤いプロミネンスなども観察することができます。空は、程度は日食ごとに違いますが、夕方・明け方の薄明中のように暗くなり、明るい星ならば見ることができます。地平線近くは、夕焼け(朝焼け)のように空が赤く染まって見られます。
日本の陸地に限ると、皆既日食が観察できるのは1963年7月21日の北海道東部で見られた皆既日食以来、実に46年ぶりです。次回も2035年9月2日の北陸・北関東などで見られる皆既日食まで26年間起こりません。非常に珍しい現象と言えるでしょう。
みなさまから多く寄せられる質問についてまとめましたので、ご覧ください。
※国立天文台三鷹では、日食当日(7月22日)のイベントは開催致しません。
日食が起こるしくみ
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「日食」とは、月が太陽の前を横切るために、月によって太陽の一部(または全部)が隠される現象です。太陽が月によって全部隠されるときには「皆既日食」と呼ばれます。今回は一部の地域でこの「皆既日食」が見られます。また、太陽のほうが月より大きく見えるために月のまわりから太陽がはみ出して見えるときには「金環日食(または金環食)」と呼ばれます。太陽の一部しか隠されないときには「部分日食」と呼ばれます。
日食は、見る場所によって、どのくらい深く欠けるかも違いますし、日食が始まる時刻や一番大きく欠ける時刻・日食が終わる時刻も違います。
各地の最大食分の図
※作図上の不備があり、小笠原諸島・火山列島(硫黄島等)付近の
島の配置を修正しました(2009年6月16日)。
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今回の日食は、日本全国で部分日食を見ることができます。また、ごく一部の皆既日食帯と呼ばれる地域の中では、皆既日食が見られます。
部分日食は、一般的にこの皆既日食帯に近いほど、大きく欠けて見られます。例えば、九州以北であれば、大ざっぱに南に行くほど大きく欠けて見られることになります。
日食の欠ける深さを「食分」という数値で表します。食分0.1とは、太陽の直径の10%まで太陽面上に月が入り込み、太陽が欠けることを意味しています。札幌では食分が0.506と約半分ですが、東京では0.749と約4分の3まで月が入り込みます。また福岡で0.897、那覇で0.917と、それぞれ約90%まで月が入り込む深い部分日食となります。
おもな地点における、日食が始まる時刻・最大になる時刻・終わる時刻は以下の表をご覧ください。
地名 | 食の始め | 食の最大 | 最大 食分 | 食の終り |
---|---|---|---|---|
札幌 | 10時4分30秒 | 11時10分18秒 | 0.506 | 12時16分3秒 |
仙台 | 9時59分9秒 | 11時12分52秒 | 0.657 | 12時26分24秒 |
東京 | 9時55分33秒 | 11時12分58秒 | 0.749 | 12時30分20秒 |
京都 | 9時47分40秒 | 11時5分52秒 | 0.809 | 12時25分21秒 |
福岡 | 9時37分39秒 | 10時56分5秒 | 0.897 | 12時17分48秒 |
那覇 | 9時32分50秒 | 10時54分7秒 | 0.917 | 12時20分19秒 |
なお、以下の地点などでは、皆既日食となります。
地名 | 食の始め | 皆既食の 始め | 食の最大の 時刻 | 最大 食分 | 皆既食の 終り | 食の終り |
---|---|---|---|---|---|---|
屋久 | 9時37分6秒 | 10時56分10秒 | 10時58分7秒 | 1.008 | 11時0分5秒 | 12時22分37秒 |
悪石島 | 9時35分25秒 | 10時53分16秒 | 10時56分28秒 | 1.039 | 10時59分41秒 | 12時21分26秒 |
奄美 | 9時35分21秒 | 10時55分58秒 | 10時56分53秒 | 1.002 | 10時57分48秒 | 12時22分26秒 |
このほかの地点での詳しい様子については、「日食各地予報」(暦計算室)で「2009/07/22皆既日食」を指定して調べることができます。ご利用ください。
皆既日食や部分日食が見られる地域について、右の日食図にまとめました。図中の中心食帯(皆既日食帯)にあたる地域で、今回の皆既日食が観察できます。
日本では、口永良部島、屋久島、トカラ列島の島々、喜界島、奄美大島の一部、種子島の一部などが皆既日食帯の中に入っており、これらの地点では、皆既日食を観察することができます。また海外では、インド、ネパール、バングラデシュ、ブータン、ミャンマー、中国等の一部を皆既日食帯は通過しています。
皆既日食帯の概要につきましては、「日食各地予報」(暦計算室)で「2009/07/22皆既日食」を指定し、「中心食帯を調べる」を指定することで、見ることができます。ぜひご利用ください。
なお、種子島における皆既日食帯の北限界線と、奄美大島における南限界線については、詳細を以下のページにまとめましたので、ご参照ください。
太陽はたいへん強い光と熱を出しています。部分食のときには、太陽の一部は月によって隠されていますが、光や熱が強いことに変わりはありません。正しい方法で観察しないと、目を痛めたり、最悪の場合失明したりする危険性があります。
以下のようなことは、目を痛めますので絶対にやってはいけません。
肉眼で直接太陽を見る (数秒でも危険です) |
望遠鏡や双眼鏡を使う (※1) |
下敷きやCDを使う |
フィルムの切れ端を使う (※2) |
すすをつけたガラス板を使う |
サングラスやゴーグルを使う |
日食グラスを使って 望遠鏡や双眼鏡をのぞく |
肉眼で直接太陽を見ると、たとえ短い時間であっても目を痛めてしまいます。
また、下敷きやCD、フィルムの切れ端、すすをつけたガラス板、サングラスやゴーグルなどを使って太陽を見るのもいけません。見た目ではあまりまぶしく感じなくても、光の遮断が不十分なものや、目に見えない赤外線を通しやすいものがあり、気づかないうちに網膜が焼けてしまう危険性があります。
望遠鏡や双眼鏡は、太陽の光や熱を集めて強くするため、肉眼で太陽を見る以上に危険です。
※1 専門家によって適切な減光を施された双眼鏡や望遠鏡は、日食観察に用いることができます。
※2 専門家によって、銀塩の白黒フィルムを適切に露光・現像して作られたネガは、日食観察に用いることができます。
ただし、詳しい知識がないまま中途半端な方法で太陽を観察すると、目を痛めたり、最悪の場合失明したりする危険性があります。詳しくわからない場合には、自己流の方法を試したりせず、必ず専門家の指導に従ってください。
※ 写真は、目を痛めないよう、実際には太陽を見ないようにして撮影したものです。
日食の安全な観察方法については別ページにまとめました。こちらのページをよくお読みになって、安全に観察してください。
次回、日本で見られる中心食(金環日食・皆既日食)は、2012年5月21日の金環日食です。九州地方の一部、四国地方の一部、近畿地方南部、中部地方南部、関東地方の大部分、東北地方南部で金環日食を観察することができます。その次は、2030年6月1日に北海道中央部で見られる金環日食です。
また皆既日食となると、この次に日本で見られるのは2035年9月2日です。中部地方の一部、関東地方の北部などで皆既日食を観察することができます。
これらの日食全体の状況につきましては、「日食各地予報」(暦計算室)で、「2012/05/21金環日食」「2030/06/01金環日食」「2035/09/02皆既日食」のいずれかを指定し、「食全体の状況を調べる」を指定することで調べることができます。また同様に「中心食帯を調べる」を指定することで、「金環日食」または「皆既日食」の見られる地域(中心食帯)を詳しく調べることができます。ぜひご利用ください。
また近年で、中心食帯が日本の陸地を通る(通った)日食を表にまとめます。
年月日 | 中心食の 種類 | 見られる地域 |
---|---|---|
1963年7月21日 | 皆既食 | 北海道東部など |
1987年9月23日 | 金環食 | 沖縄本島など |
2009年7月22日 | 皆既食 | トカラ列島、屋久島、種子島・奄美大島の一部など |
2012年5月21日 | 金環食 | トカラ列島、屋久島、種子島、九州・四国・近畿・中部・東北の一部、関東の大部分など |
2030年6月1日 | 金環食 | 北海道の大部分など |
2035年9月2日 | 皆既食 | 中部・関東の一部など |
天文情報センターが撮影・撮像した日食の画像・動画のほか、国立天文台の各プロジェクトのウェブにある過去の日食の画像・動画・情報を、以下のページにまとめましたので、ご参照ください。
また、本コーナーのオリジナルページとして、以下の画像・資料のページを作成しました。合わせてご参照ください。
※国立天文台三鷹では、日食当日(7月22日)のイベントは開催致しません。
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注1:「トカラ列島」の「トカラ」は、本来 と表記されますが、フォントなどの制限により表示できない場合がありますので、このページではカタカナで「トカラ」と表示してあります。ご了承ください。
注2:国立天文台では、皆既日食を見るための交通機関や宿泊などについては、一切把握しておりません。以下の各自治体などの情報をご覧ください。