ハバナに行かれたそうですが、それは沈没船引揚げに絡むものなのでしょうか?
八重野:そうですね。キューバ政府はいま日本人の観光客を増やしたいと考えています。前任者の後を継いで政府との付き合いが始まりました。
キューバはお金こそありませんが、貧しくても皆楽しそうに暮らしていますよ。教師と医者の人口比率が世界一高く、大学院も心臓移植も無料です。空いている土地で有機野菜を作っているから自給率も高い。75%が持ち家で残りの25%が収入の10%を納めれば住める国営アパートです。
いま、キューバは沈没船の引揚げを国が禁止しているんですが、一カ所でも揚げて博物館を作ると観光の目玉になりますよと言っているんですよ。中世の雰囲気を残す世界遺産の街並みに加えて、沈没船から引揚げた財宝があれば絶対観光の目玉になりますよ。とアドバイスしています。
というわけでキューバの引揚げに関しては興味がありますね。
他にチェックされている引揚げポイントや情報などがあれば教えていただけま すか?
八重野:昔から「コロンバス・アメリカ・ディスカバリー・グループ」に注目しているんですよ。10数人のあらゆる分野の専門家が集って、サウス・カロライナ州チャールストン沖で「セントラル・アメリカ号」を引揚げたんですが、潜水ロボットを使って水深2400メートルからトータルで約1トンもの金貨が揚がりました。シリコンを噴出させ金貨をひとまとめにして一気に、というダイナミックな手法を採用しているのも興味深かったですね。
もとはリーダーのトーマス・トンプソンがオハイオ工科大の学生時代に教授に指導されて始めた経緯だったと聞きます。時代考証からはじまり、海洋科学、電子工学、機械工学、ロボット工学などあらゆる分野の学者を集め、小口の出資を募って実現させたものです。
もう20年くらい前の話です。続報を楽しみに待っているのですがなかなか聞こえてきませんね。
量も手法も壮大な話ですね!
八重野:これに限らず、引揚げの成功例は例外なく事前調査が綿密に行われていますね。航海日誌や天候記録などの実のある情報が残されているのが99%が作り話の伝説に基づいた埋蔵金と大きく違う点だと思います。
日本の中で興味のある沈没箇所は?
八重野:千葉・勝浦ですね。私の地元である熊本・肥後の船が沈んでいるんですよ。幕末の軍用船なんですが「官軍塚」という名で慰霊碑が残っています。
引揚げにかかる費用は埋蔵金とは桁違いですが、ここは機会があれば是非調べてみたいなと思っています。