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海底夢追い人

Volume 01 Mr. Mitsuhiro Yaeno

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第1回:八重野 充弘さん(日本トレジャーハンティング・クラブ代表)

第2章:メル・フィッシャーを訪問して

  メルとの出会いを教えてください。

八重野:こんなすごい人がいるんだと知って一度会ってみたいと思っていたんですよ。渡米することになり、訪問前に「何日に行くからもし良ければ会ってください」と手紙を出してはみたんですが、会える確信もないまま当日になりました。とりあえず博物館併設のショップで名刺を渡すと、背の高い三男のケインがにこやかに応対してくれました。そして「一週間前に揚がったものだ」と言いながらエメラルドを見せてくれたんです。彼の手の中にはきれいな、透明感のあるものが10個ほど。一個100万円相当の品らしいですが、無造作にティッシュペーパーに包まれていましたね。そして、その後父親であるメルを呼んでくれたんです。

  メル・フィッシャーの第一印象は?

八重野:自分は宝探しを楽しみとしているけれどメルは本格的な事業者です。その違いを意識していたせいか、実際会うまでは怖いというイメージを持っていたんですよ。「お金目当てで確実なものしか狙わない」、「僕とは違う」そんな人なのではないかと思っていました。でも彼の見つけたものをこの目で見てみたい、彼の話を聞いてみたいという気持ちが勝っていたんですね。ところが一目会って直に言葉を交わした途端ガラリとイメージが変わりました。
「トレジャーハンティングほどエキサイティングなものはないよ!」と目を輝かせて語る姿は、僕のところに宝探しの相談に訪れる人々と何も変わりないと感じました。「宝は絶対にある」という強い確信と夢を持った人なのだと。

  夢を追いかける者同士、心情は同じなんですね。

八重野:そうなんでしょうね。お土産に小判のレプリカを持って行ったんです。「僕は(当時で)もう20年も宝探しを続けているが実績はひとつもない。でも、次に来るときは本物をお土産にします」と言って渡すと、「一生懸命やっていれば必ず見つけられるよ」と励ましてくれました。引揚げた重い金鎖を持たせてもらったのですが、手の平に山盛りのその重さを今も覚えています。

  金鎖はメルのトレードマークのようですね?

八重野:アトーチャ号が発見されるまでも少しずつ財宝類は見つかっていたんです。でもどこかにまとまって沈んでいるはずだ、それを十数年信じ探索を続けたわけですからすごい精神力だと思います。
話を聞いていて、やっと見つけたときの感動がずっと忘れられないんだろうなと感じました。他では味わえないものですからね。
娘さんが(当時)フロリダで新しいターゲットに取り組んでいるという話が出たので、詳しい場所を聞こうとしたら「シークレット!」とお茶目に返されました。 「見つかるといいですね」と言いましたら「May be tomorrow!(明日はきっと!)」と。それが印象的でした。

  メルの家族とはその後も交流があるのですか?

八重野:息子さんたちも含めてフレンドリーな家族でした。メルが亡くなった後も三男のケイン夫婦を中心につき合いが続いています。
1998年僕の携わったテレビの企画でメルを取り上げたとき、ケインが10億円相当の引揚げ遺物をトランクに詰めて来日してくれて番組が随分と盛り上がりました。

  トランクに10億円分!?

八重野:来日の際、僕からはメルのことを書いた子供向けの書籍「宝さがし冒険ブック 世界編」(くもん出版)を贈り、ケインの妻のカレンにとても喜んでもらえました。このときケインが、メルがアトーチャ号から引揚げたインゴット(のべ棒)のレプリカを贈ってくれたんですよ。レプリカとはいっても本物の純銀のインゴットを鋳造し直したものです。
900何十本か揚がったうちのひとつです。元は33キログラムのもので、それから縮小したんですね。キーホルダーとして留め具が甘くなるほど使い、その後も大切にしています。
これを昨年ハバナに行った際に持参しました。1622年に沈没してから実に380年ぶりの里帰りというわけです。感慨深いものがありましたね。


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