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公訴時効:殺人など「廃止」 「法改正、一日も早く」遺族、国の姿勢評価

 法務省内勉強会が、殺人など凶悪・重大事件について「公訴時効の廃止が相当」と結論づけたことに、遺族は歓迎の声を上げた。特に、現在時効が進行中の事件にも法改正の結果を遡及(そきゅう)させることも「憲法上可能」としたことで、迫り来る時効の壁が取り払われる可能性が出てきた。しかし、日本弁護士連合会は、「法改正は時期尚早」と反対しており、遺族の思いが通じるかどうかは不透明だ。【山本浩資】

 全国犯罪被害者の会(あすの会)幹事で、千葉市の都立高校教諭強盗殺人事件(97年2月)で夫を失った内村和代さん(70)は「被害者の気持ちを理解してくれる人が増えた結果だと思う」と喜ぶ。

 会に入ったのは00年。以来、毎年のように歴代法相と面会し「私の夫の事件は未解決。時効が来ると、事件解決を訴えることができなくなる」と時効廃止の期待を伝えてきた。

 05年施行の改正刑事訴訟法で、殺人の時効は15年から25年になったが、04年までの発生事件には遡及されず、自分の事件は15年のままだった。「夫の事件に適用されないことはわかっていたが、100年変わらなかったものがまずは10年延びたことに拍手した。でも次の改正の時には、過去の事件にもさかのぼって適用してもらいたいと願っていた。一日も早く改正して遡及させてほしい」と話した。

 時効撤廃・停止を求めて今年2月に結成された「殺人事件被害者遺族の会(宙(そら)の会)」代表幹事で、上智大生殺害事件(96年9月)で次女を失った小林賢二さん(63)は「被害者遺族の気持ちが受け入れられた。今後、政権の行方がいかなる方向に進もうとも法務省の見解を尊重し、国会での論議に進めていってもらいたい」と国の姿勢を評価した。

 ◇日弁連は反対

 日弁連は6月11日、時効廃止や停止に全面的に反対する意見書を法務省に提出するなど、時効見直しには一貫して反対している。刑事法制委員会事務局長代行を務める山下幸夫弁護士は「05年改正から4年しかたっておらず、その検証もない中での再改正は時期尚早だ。時効を廃止しても容疑者が捕まらなければ、遺族は救われない。捜査状況の情報開示や、時効が成立した場合の遺族補償など別の救済策を模索すべきだ」と話している。

毎日新聞 2009年7月17日 東京夕刊

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