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殺人罪時効廃止へ…課題・評価・そして戸惑い

7月17日14時36分配信 読売新聞

 殺人罪の公訴時効は廃止−−。

 法務省の勉強会は17日、犯罪被害者の願いに沿った改革案を示した。時効の壁に捜査継続を阻まれてきた警察や検察では廃止を評価する声がある一方で、戸惑いも広がっている。

 ◆捜査の課題…時間と証拠◆

 「真相解明を願う遺族の心情を考えると、大きな意義がある」。警察庁幹部は時効廃止に理解を示す。同庁は4年前から、現場に残された犯人の血痕などの「遺留DNA」をデータベース化。遺留DNAがあれば、事件から数十年後でも真犯人判明の可能性がある。

 ただ、捜査が長期化する事件は物証が少ないことも多く、時効廃止で解決するとは限らない。この幹部は「防犯カメラの設置を増やすなど、ほかの客観証拠の充実も考える必要がある」と話す。

 また、時効が廃止された場合、捜査態勢をいつ縮小するかの判断が難しく、証拠品を保管し続ける場所や方法も課題だ。ある検察幹部は「時効は一つの区切りであり、時効前に態勢を強化して集中的に捜査することもあった。廃止すれば捜査がだらだらと続くことにならないか」と懸念する。

 日本弁護士連合会で時効問題を担当する山下幸夫弁護士は、「時の経過とともに、被告の無罪を裏付ける証人が死亡した場合などは、冤罪(えんざい)につながりかねない」と批判している。

 ◆気になる民主の見解◆

 「ようやく法務省も私たちの思いを分かってくれた」。12年前に夫を殺害されたが犯人は判明せず、時効廃止を訴えてきた内村和代さん(70)は喜んだ。

 法務省は勉強会の発足当初、「重大事件の時効の期間を5年前に延長したばかり」などとして見直しに慎重だったが、殺人に時効のない米国の制度も研究する中で、「生命を奪う犯罪に対しては特別に厳正な対処をする必要があり、刑事責任の追及にも期限を設けるべきではない」との考えに傾いていった。

 ただ、時効の廃止を過去の事件に適用するかどうかの結論は見送られ、内村さんは「早急に検討を進めてほしい」と話した。

 民主党の検討チームは時効廃止に消極的な見解を打ち出している。被害者遺族らでつくる「宙(そら)の会」は17日、法務省の発表を受けて記者会見し、小林賢二代表幹事(63)は「今後、自民、民主のどちらが政権をとっても、時効廃止の流れを止めないでほしい」と求めた。

最終更新:7月17日14時36分

読売新聞

 

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