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心身の疲労、奪われたパーティーの一体感 大雪山系遭難

2009年7月17日23時36分

 10人が命を落とした北海道大雪山系の遭難事故で、トムラウシ山では多数の犠牲者を出したパーティー以外に別のパーティーがいたが、こちらは全員が無事に下山した。事故に遭ったパーティーでも10人は生還している。何が生死を分けたのか。

 16日早朝。ビュービューと吹く風の音を耳にしながら、一行は宿泊した避難小屋を出発した。愛知県清須市から参加した戸田新介さんは「大丈夫か」と疑った。20メートルの風。案の定、数時間で歩けなくなる人が出始めた。それなのに、元気な人は先を行く。昼を前に、集団は縦に長くなってしまった。その後、戸田さんらの一行は山頂手前の北沼へ。自力で下山した人によれば、ここで複数の人が体調不良を訴えた。

 道警によると、生存者の中には「休んでしまうと体温が奪われてしまうと思い、歩き続けた。歩いているうちにポカポカとしてきた」と話した人もいるという。救助隊がこうした生存者の胸付近を触って確かめると、思いのほか温かみを感じたという。

 一方、同じ小屋に泊まった静岡県の別のパーティー6人は、風雨の中を少し遅れただけで出発した。1人は「昼ごろ、空が明るくなった」と記憶している。ところが、直後に急変。山頂を越えたところにある前トム平では風雨がひどく、「真冬の吹雪のようで、体温を奪われた」。それでも一行は、元気な人が遅れそうな人のリュックを持ち、一緒に無事下山したという。

 十勝山岳連盟の太田紘文会長によると、出発地の避難小屋から北沼まで晴天なら3時間。ところが、自力で下山した人の話などでは、一行はこの日、6時間前後もかかった。3日目の疲労に加え悪天候で、体力を消耗する人と、そうでない人に差が出た。

 大雪山系では1日の歩行時間が8時間に及ぶ。「本州の山は小屋が点在し、歩行時間が北海道ほど長くない」と太田さん。また今回の一行が全国各地から集まっていたことも指摘。「心身の疲労で気持ちがバラバラになり、行動もバラバラになってしまったのでは」と話している。

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