2009年7月17日 20時52分 更新:7月17日 23時49分
住友金属工業は17日、和歌山製鉄所(和歌山市)に新設した「新第1高炉」の操業を始めた。国内の高炉新設は約5年ぶり。11日に操業停止した第4高炉の後継で、製鉄所全体の生産能力は年450万トンと従来比13%アップする。鋼材需要が減退する逆風下の能力増強だが、「先行きの反転攻勢をにらめば、最新設備稼働は不可欠」と同社は強調している。【岩崎誠、大場伸也】
新第1高炉の生産能力は年250万トンで、建設費用は510億円。炉内容積は3700立方メートルと第4高炉(2700立方メートル)の37%増の大きさ。第5高炉も12年後半には操業を停止し、新第2高炉に置き換える予定で「新第1、新第2」の生産能力は年520万トンになる予定だ。
提携先の新日本製鉄と神戸製鋼所への供給が、これまでの年40万トンから09年度下半期以降は年100万トンに拡大することなどから、当面は「現在のレベル(フル操業の8割)を落とさない」という。
住金が生産体制の増強に踏み切ったのは、新興国を中心とした鉄鋼需要の回復を見据えたものだ。世界最大手のアルセロール・ミタル(ルクセンブルク)や台頭する中国メーカーとの激しいシェア争い再開に備え、最新の高炉稼働で生産性を上げて競争力強化を図る狙いがある。
世界鉄鋼協会によると、08年の世界粗鋼生産(速報値)は13億2971万トンで、01年から約1.5倍に拡大。世界不況の影響で07年に比べて落ち込んだものの、新興国の需要は底堅い。住金は世界的な鉄鋼需要の回復が予想外に早まる可能性も想定。和歌山の新第1高炉稼働で、公共事業のほか石油や天然ガス掘削にも使われるシームレスパイプ(継ぎ目なし鋼管)などの生産能力を増強する。
一方、国内の鉄鋼需要は自動車・電機業界の在庫調整一巡を背景に、5月の国内粗鋼生産が前月比13.1%増となるなど、足元で底打ち傾向が鮮明になっている。新日鉄が休止していた大分製鉄所の高炉1基を8月から再稼働するなど、需要回復をにらんだ動きが広がる。ただ、国内外とも景気の先行き不透明感はなお強く、日本の鉄鋼メーカーの反転攻勢の行方が注目される。