現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. ビジネス・経済
  4. ロイターニュース
  5. 記事

政局不安で上値重い日本株、債券でも民主党政策に警戒感

2009年7月17日13時15分

 [東京 17日 ロイター]米国で主要な金融機関と一般事業会社が予想を上回る好決算を次々と発表し、米株が堅調に推移する中、日本市場では、政局不安から日本株の上値が重くなり、債券市場でも次期総選挙で政権奪取の可能性がある民主党の政策に対する警戒感が表れている。

 他方、外為市場ではジャカルタ中心部のホテルでの爆発により数人の死者が出たとの報道をきっかけに、リスク回避ムードが高まり、円買いが進んだ。

 <日経平均は米株のサマーラリーに乗り切れず>

 株式市場では日経平均が小幅続伸となっている。前日の米国株はJPモルガン・チェースなど主要企業の決算が予想を上回ったことで上昇。この流れを受けて東京市場でも買いが先行したが、勢いは続かなかった。「国内機関投資家の戻り売りや一部外資系証券の先物売りなどで上値を抑えられている。個人の動きも鈍い。当面、好材料は見当たらず積極的に買う理由が乏しい」(大手証券エクイティ部)という。

 米国では金融機関だけでなく、インテル、IBMなどのハイテク企業や他の一般事業会社の決算も堅調で、サマーラリーの様相を呈しつつあるが、日本株はその流れに乗り切れていない。 「日米株動向がかい離しているのは、政局不安が最大の要因だろう。21日に解散でき

るかもわからない状況で、3連休前にポジションを傾ける投資家はいないのではないか」(十字屋証券資金運用グループ・チームリーダーの岡本征良氏)との声が出ている。

 ITCインベストメント・パートナーズシニアポートフォリオマネージャーの山田拓也氏は「NEC<6701.T>の資本増強に関する一部報道が出るなど大型ファイナンスが続く見通しとなっており、需給面の重さが意識されている」と指摘する。「増資による財務増強は株価にとってプラス面もあるが、薄商いが続いているなかでは市場の圧迫要因となっている。国内機関投資家は債券の積み増しは行っているが、株式に関しては様子見を続けており、長期資金に大きな動きはみえない」と話している。

 週明け21日以降は国内企業の4―6月期決算が本格化するが、「原料費低下、人件費削減で利益が上振れても、需要動向が弱く為替の影響が不透明な中で、企業側の見通しが強気に転じるとは考えにくい」(準大手証券情報担当者)との見方を示した。 

 <債券市場は民主党政策に警戒感も>

 混迷の度合いを深める政局関連をめぐり、債券市場では、「民主政権が誕生した場合は『債券売り』との思惑がある。民主党が掲げるマニフェスト(政権公約)は財源に課題がある。民主党政権になることを市場が織り込むことになれば、一定のリスクプレミアムをつきつけられる事態は避けられそうにない」(外資系証券の幹部)。

 一方で、「マニフェストで大風呂敷を広げた分、財源を切り詰める方向に傾きそう。必ずしも民主党政権だから債券売りと決め付けるのは合理的ではない」(国内金融機関)との声もある。

 むしろ外貨準備の運用問題で、米国債について購入に慎重な発言が一部民主党幹部から示された経緯もあり、為替の側面から債券高になる可能性や、政局混乱に伴う株安/債券高のケースも予想される。市場には「いずれの見通しも織り込んでおらず、いまや思考停止の状態と言っていい」(別の国内金融機関)との指摘もあった。

 短期的には、債券市場では需給関係が好転し、底堅い地合いとなっている。

 円債市場では、年金基金の一角から、残存期間の短い債券から長い債券に保有銘柄を入れ替えする動きがみられ、残存2年から20年にかけイールドカーブがフラットニングする形状となった。財務省が16日実施した5年物の利付国債入札も順調に終え、追加経済対策に伴う国債増発でも、荷もたれ感が出ていないことが浮き彫りになってきた。

 ドイツ証券・チーフ金利ストラテジストの山下周氏は「5年債入札で投資家の押し目買い需要の強さが確認された。ここ1カ月目立った押し目がなく、金利水準が切り下がってきたことで、好需給が演出されている」と話す。

 <ジャカルタのホテルでの爆発でリスク回避先行>

 為替市場では、ドル/円、ユーロ/円とも下落した。

 輸出企業がクロス円の売りを実施したほか、グローベックス市場の米国株先物が軟調だったことに加え、日経平均も伸び悩んだことがクロス円の売りを後押しした。

 また、インドネシアのメトロTVがジャカルタ市内クニンガン地区のリッツ・カールトンホテルやマリオットホテルなどで17日朝に爆発が起こり4人が死亡したと報じたことも、リスク回避ムードを高めたという。クロス円での円買いの動きに追随して、ドル/円も午前の高値93.92円から一時93.48円まで水準を切り下げた。

 市場筋によると複数のインドネシア国営銀行は、ジャカルタのホテルでの爆発を受けてインドネシアルピアが下落したタイミングをとらえ、ルピア支援の米ドル売り介入を実施したという。インドネシア警察の発表によれば死者数は6人に達したという。

 インドネシアルピアの対ドルレートは10190/0210ルピアの気配。

 きょうのシティとバンク・オブ・アメリカの発表で後半戦を迎える。ただ、市場は株価の上昇を受けて楽観論を織り込んできているだけに警戒感も強く、バークレイズ銀行FXストラテジストの逆井雄紀氏は「予想よりいい内容になった場合より、悪い内容になった場合のほうが相場にインパクトがある」とみている。

 一方「ゴールドマンなどの好調を確認したあとであり、そう影響はないだろう」(大手証券)との声も出ている。市場では、米金融機関業績が二極化する可能性はあるとしても「金融不安が再燃することはない。個別銀行の問題であれば、為替へのインパクトは限定的」(国内金融機関)との声も出ている。

 (ロイター日本語ニュース マーケットチーム、編集:内田慎一)

ロイタージャパン ロゴ
ロイタージャパン

PR情報
検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内