「生活保護の年収300万円」は果たして「弱者に厳しい国」だろうか=本誌編集部
(SAPIO 2009年7月8日号掲載) 2009年7月16日(木)配信
制度の適用は条件によって異なるが、たとえば、都内に住む30代男性(妻と小学生の子供あり)は、両足を負傷して障害者2級認定を受け、仕事を辞めた。障害基礎年金と、3人分の生活扶助と住宅扶助、教育扶助、ここに障害者加算などが加わり、世帯年収は300万円を超えた。
生活保護や障害者年金の不正受給が問題化しているが、悪用したくなるほどの「厚遇」でもあるということだ。最低賃金が生活保護より低い「逆転現象」が問題視され、厚生労働省は「入りにくく、出にくい」といわれる制度の見直しに着手している。
ただし、昨年からの経済危機で、生活保護の申請は激増し、国の負担は初の2兆円台となった。不正受給を恐れる自治体の担当者が必要以上に審査を厳しくするなど、問題が多いことも事実である。
決して「弱者に厳しい」とはいえない日本。なのになぜ「冷たい国」といわれるのか。
「マスコミと知識人が、日本はダメだという悲観論ばかり流しているからでしょうね。暗い話で危機をあおったほうが、大衆にウケるという思い込みからでしょうが、日本の大衆の知的レベルは非常に高くなった。必要とされなくなった彼らの悪あがきにつきあう必要はありません」(前出・増田氏)
たしかにPISA(「生徒の学習到達度調査」)の順位が下がるたびに「学力崩壊だ!」と大騒ぎするわりには、健康・初等教育などを総合的に判断する「子どもの発達指標」(NGOセーブ・ザ・チルドレン調査07年)で日本が137か国中1位になったことなどは、ほとんど報道されない。「環境的に住みやすい国」(米リーダーズダイジェスト調査)でも12位、英国BBCの「好感度をもてる国」でも、常時ベスト3入りの日本。にもかかわらず、昨年の「国民の幸福度調査」(米ワールドバリューズサーベイ)では48位。この落差は事実と乖離した徒な悲観論の影響ではないだろうか。
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