関東大震災の供養施設「都慰霊堂」(墨田区横網町)に膨大な資料が保管され、神奈川大(横浜市神奈川区)が4年がかりでデータベース化に取り組んでいる。犠牲者の惨状を伝える未公開の絵巻物も見つかった。
1923(大正12)年の関東大震災の犠牲者は約10万人。約4万人の死者が出た被服廠(しょう)の跡地にできた仮納骨堂が基になり、戦後は東京大空襲の犠牲者も供養する「都慰霊堂」になった。その収蔵庫に、震災体験の市民から寄贈の資料が大量に残されている。
「92年ごろ、民間会社が整理したが、目録もなかった」と同大非文字資料研究センターの北原糸子主任研究員(69)。06年から研究班を作り、写真と地図約2500点をデータベース化した。
昨年から2人の研究員が加わり、写真以外のデータベース化を始めた。資料は50箱余りのケースに収められ、書籍など約1000点に上った。
ほこりをかぶった資料の中から「東都大震災遇眼録」と書かれた絵巻物が出てきた。横約6メートル、幅約50センチの和紙に水彩で、バラック暮らしの被災者、遺骨が山積みされた場面などがリアルに描かれている。筆者は不明だが、最初に観音菩薩像が描かれ、慰霊の思いを込めたとみられる。
報告書をまとめた研究員は「貴重な資料で、分析を進めれば多くの新発見が期待できる。いずれ公開できたら」と話す。18日に同大の公開研究会「震災復興期における都市の文化変容」で成果を発表する。【網谷利一郎】
〔都内版〕
毎日新聞 2009年7月17日 地方版