<せんぱばんぱ>
時代は「太陽光」である。日本は世界一の太陽光発電国家だったのに、05年にドイツに抜かれ、さらにはスペインにも追い越されていまや3位。日本が有する数少ない「世界一」だったから、これは悔しいよね。
麻生太郎首相は太陽光発電で世界一の座を奪還すると約束した。20年には太陽光発電の導入量を「現状の20倍」にするそうだ。結構なことだ。どんどん増やそうではないか。
しかし、自然エネルギーのもう一方の雄である「風力」はどうなっているのか。無視とはいわないが、不当に冷遇されているのではないか。
ポスト京都の中期目標に関する麻生首相の記者会見。質疑を含めて首相は「太陽」に7回言及したが「風力」はゼロ。可哀そうな「風力」!
だが、世界的に見れば自然エネルギーの4番打者は「風力」なのだ。少し古いデータだが、06年の世界の発電導入量は太陽光570万キロワットに対して、風力は7390万キロワットとケタ違い。原発70基分も風力でまかなっているのである。そのなかで日本の順位は世界13位。日本は「風力発電小国」なのだ。
というわけで、太陽光とともに風力に注力すべきは明らかだが、そうならないから不思議。風力は立地が難しいとか、騒音がひどいとか、野鳥被害が出るとか言われているが、いずれもクリアできる問題である。
結局、太陽光と風力でこれだけ差がついた理由は、それぞれの産業の「政治力」の差だ。政官界への働きかけの度合いに天地の差があった。
風力発電メーカーは電力会社に発電用タービンを大量に買ってもらっている。顧客筆頭の電力会社が風力の急増にいい顔をしないので、風力派は太陽派ほど強力な運動ができなかった。
荒川忠一東大教授は「日本では洋上風力発電が有望。風力で原発30基分の発電が可能だ」と言う。太陽だけでなく風にも目を向けよう。(論説室)
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毎日新聞 2009年6月28日 東京朝刊
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