北海道大雪山系トムラウシ山と美瑛岳の遭難は2パーティー、1個人の計10人の死亡が17日、確認され、夏山としては過去に例がない大規模遭難となった。夏でも水が凍るといわれる大雪山系で、助かった男性は「寒くて死にそうだった」と振り返る。悪天候の中で予定を強行した判断に疑問を呈する声も上がるが、地元の山岳関係者は「これほどの事故は記憶にない」とうめいた。
遭難者はいずれも本州からのツアー客だった。本州ではそれなりの経験があったとみられるが、北海道は夏でも気温が氷点下になることがある。専門家は本州と北海道の夏山に対する認識の違いが悲劇につながった可能性もあるとみている。
札幌市内で登山用品小売業を営む栃内(とちない)譲さんは「道内の登山者ならば、普段の生活で『夏でも寒くなる』ことを知っているので、夏山にもフリースを持っていく。しかし、本州のツアー客の認識は異なる」と指摘。道内の夏山は本州からの登山ツアー客が目立つが、栃内さんは「軽装で出かける人が多いような気もする」という。
一方、今回の遭難について、北海道山岳ガイド協会の川越昭夫会長は「中高年の趣味として手軽という登山の一面が裏目に出た」と話す。警察庁によると、08年の山岳遭難は1631件(前年比147件増)、遭難者は1933人(同125人増)。40歳以上の中高年は1567人に達し、全体の81.1%。【水戸健一】
毎日新聞 2009年7月17日 13時53分(最終更新 7月17日 14時04分)