マニフェストになじまない?
とても広範囲に物議を醸した昨日の朝日新聞の報道についての続報です。ただいま民主党側から「報道は誤報である」や「誤解を生む表現だ」という説明が回っています。
ネットや伝聞、待つ身のところに届いたメールなどをまとめると、民主党からの言い分はこんな感じのようです。
○もともとマニフェストには記載していない
○マニフェストとは予算や数値目標を数字で示すもので、民法改正法案はマニフェストになじまない
○民法改正はマニフェストとセットになった政策集にある
○これまでと変わらない(記載場所および姿勢も)
一時は絶望や悲観、裏切られた怒りがネットを駆け巡りましたが、「過剰に心配することはない」ようにも受け取れます。しかし既定路線とは言え、まだ民主党は政権交代を果たせたわけではありません。こんなことで信頼を損ねたくはないでしょう。報道を「はい、実はその通りでして…」と肯定することは嘘でも本当でもできないはずです。
少なくとも「これまで通り。マニフェストにはなく、政策集にある」というご指摘は正しいのだと思います。しかし、いくらか疑問も残ります。
○誤報と言うならマニフェストに明記されるのかと思いきや、結局載らないのでは誤報とも言えないのでは?せいぜい誤解では?
○これまでもマニフェストではなく政策集に記載してきたというが、待つ身には見あたりません(分かったら教えてください)。
民主党Webサイトにある過去のマニフェストを見る限りでは、末尾に「政策各論」がありますが、ここには2007年版や2005年版を見ても選択的夫婦別氏制度あるいは民法改正は記載されていません。かろうじて民主党男女共同参画推進局の政策にはありますが、これではマニフェストとセットになっているとは言い切れません。しかもマニフェストや政策各論にないなら、位置づけが低いと感じられます。ずいぶん後回しにされそうで不安になります。
○「これまでと同じ」といいますが、それはそれで不安です。今年の通常国会では法案を提出しただけで、(目標の)法務委員会での審議は1度もありませんでした。政権交代してもこれと同じペースではいつになることでしょうか。
○そもそも本当にマニフェストになじまないのでしょうか?マニフェストを眺めてみても、予算や数値目標がないものもあります。また「民法改正をXヶ月以内に実現します」という数値目標でもいいのではないでしょうか? それに過去、社民党や公明党は選択的夫婦別氏制度をマニフェストに明記していたことがあったと記憶しています(もちろん実現できていませんが)。
こうした疑問もさることながら、問題は民主党推進派の誰かがマニフェストへの記載を求め、その一方で慎重派の誰かが「これまでは(否決されるから)提出できた」と記載を差し止めたということです(詳しくは前回の記事を)。
誤報というのなら、ここが誤報ならいいのですが、こんなこと根拠無く記者が書くとは思えません。今回の記事には「秋山訓子」と記者名が入っていましたが、彼女はこれまでずっと夫婦別姓を追ってくださっていた記者さんです。また待つ身も「これまでは(どうせ与党に否決されるから)党内審査を通した」といううわさ話は聞いていました。
あくまでうわさですが。この慎重派の存在についてはそれなりに根拠があると待つ身は信じています。問題はここであり、記事のポイントもここにあるのではないでしょうか。マニフェストに載せようとした推進派の動きがあり、それを差し止めた慎重派がいたということです(ところがこの部分の記載はネット版にはありますが、紙面版にはなかったりします)。
では政権交代しても絶望的かというと、そうとも限らないと思います。民法改正は結党以来ずっと取り組んできた案件ですし、この場に及んで方針を変えるなんてあってはならないことです。党として方針転換することはないでしょう。党内の慎重派が多少は阻止するでしょうけど。現実的にどれだけ待たされるか。その間に再び政権交代が起きて政権を失うことはないのか、ということです。
かつて1996年、法制審答申が出た当時は自社さ政権だったそうです。法制審答申が出たなら、法制化は確実と思われていました。しかし住専国会と言われ、後回しにされ、政権が代わり、うやむやになり、これだけ年月が過ぎています。「やる」といっても、「いつかやる」では困るのです。
それにしても、民法改正に慎重なのは誰なのでしょうね。現政権でも選択的夫婦別氏制度に反対する議員は大声では反対しません。党内審査という議事録の残らないクローズな場、あるいは保守系支持者の前では大声で反対を張り上げます。反対なら大声で公の場で持論を展開すればいいではないですか。政治家なのに、なんて卑劣な。
ということで、長々と書きましたが、現時点では「誤報だ」という説明が回っています。マニフェストに明記されるかどうかは、微妙です。マニフェスト以外の場所なら明記されるかもしれません。しかし肝心な部分、慎重論を唱える存在については、あながち誤報とは思えないというのが待つ身の印象です。未確認なので確証はありませんが。
あと今回の報道で相当な抗議が民主党に押し寄せているとも聞いています。具体的な数は把握していませんが。誤報だったにせよ、見解の違いだったにせよ、民主党が民法改正をやめようとすれば激しい抵抗がわき上がる、つまりそれだけ静かに耐えながら待っている人は少なくないということです。それを伝えるきっかけになったと考えれば、今回の記事はいい警笛になったのではないかと思います。
とりあえず、現時点で分かることまで、でした。
Comments
民主党にもメールしましたが
地元の議員にもメールしたところ
(その人はもともと推進派で自身のブログにもこの件についての記載があった)
本人から返事が来ました。
「自分も怒っている。政策調査会に意見をし、現職の仲間達に対してマニフェストに再度盛り込むように働きかけを始めた」
とのことでした。
やはり声を上げることが大事ですね。
Posted by: 待子 | July 17, 2009 at 09:27 AM
待子さん
コメントと情報ありがとうございます。
ほかの人も言っていますが、黙っていれば放っておいても勝手に成立すると思ったら甘いと認識したほうが良いような気がします。もちろん自民党政権よりは民主党政権の方が何倍も実現の可能性は高いのですが、それでも抵抗する人はいると。動向を注視し、何かあれば声を出すことが必要だと実感しました。
Posted by: 夫婦別姓を待つ身 | July 17, 2009 at 01:48 PM
こんにちは。
以前、一度だけ書き込みさせて頂いたものです。
結婚して名前を変えてしまい、大後悔した経験を踏まえ、
「二度と後悔しない!」よう、
地元の民主立候補予定者にメールを送っておきました。
あと、何の助けになるかわかりませんが、
以前このブログで書かれていた「讀賣テレビの脇浜アナ」にも
メールを入れてみました…
報道してくれた朝日新聞にもお礼メールをすれば、
続報でも載せてくれるでしょうか…
期待しています。
Posted by: こんにちは | July 17, 2009 at 03:26 PM