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業界の自主規制が日本の人材流出に拍車をかける

 児童ポルノ禁止法改正案の最大の悪影響は、業界の自主規制である。

 この法案がまだ審議中の段階であるにもかかわらず、すでにマンガ・アニメ業界では法改正を先取りして、大幅な自主規制を始めているのだ。つまり、出版社やゲーム業界は、摘発を恐れて、作家たちの表現の自由を大幅に制限しようとしている。具体的にいうと、「18歳未満の子どもの裸を描くな」という指示が飛んでいるというのである。

 そこで悲鳴を上げているのが、思うように描くことのできなくなった作者たちである。

 一方、韓国、香港、シンガポール、タイなどでは、日本型のマンガ・アニメスタジオが次々に設立されている。一部では特区に指定して、国を挙げてバックアップ態勢を整えているようだ。これは、いかにこのマーケットが大きいか、そうした国々が気づいていることを示しているにほかならない。実際に、韓国からはすでにレベルの高いアニメも登場している。

 もちろん、マンガ・アニメスタジオはハコをつくっただけでは意味がない。何より必要なのは有能な人材である。そうした国々では日本を含む海外からクリエイターをヘッドハンティングして、新たなマンガ・アニメのビジネス拠点を立ち上げようとしているのだ。

 そうした状況で出現したのが、日本の児童ポルノ禁止法改正案であり、それを受けたマンガ・アニメ業界の自主規制である。わたしの知っている有能なアニメーターにも、海外からの引き抜きの話が来ているという。「これから法律が厳しくなって、日本では活躍できなくなるでしょう。どうですか、わたしの国に来て、思う存分、実力を発揮しませんか」というわけである。

 マンガ・アニメ産業は、製造業と違って人材がすべてといっていい。人間を持って行かれたらアウトなのである。まるで、日本は自分で自分の首を締めているようなものではないか。規制でマンガ・アニメ業界をがんじがらめにしてしまうと、活躍の場を失った日本の人材が、次々に流出してしまう事態も十分に考えられる。

 これは、産業戦略的に見ても非常にマズい状況なのである。

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