08年4月施行の児童虐待防止法改正で、虐待の恐れのある家庭に児童相談所(児相)が解錠して立ち入るのを可能にした「強制立ち入り調査」(臨検)が施行後1年で2件だったと、厚生労働省が14日発表した。強制立ち入りに先立つ「出頭要求」は27世帯に28件出ていた。臨検は、安全確認が難しい場合の最終的な救済手段として導入されたが、慎重な現場での運用実態が裏付けられた。
改正法では、知事や児相所長が、虐待の恐れのある親に子を伴わせて出頭要求できる。親が応じず、任意の立ち入り調査や再出頭要求にも応じない場合、児相が裁判所に許可状を請求。発付されれば強制立ち入りできる。
西日本のある児相のケースは昨秋、母親と転入してきたきょうだい3人が転校手続きをせず、家庭を訪問。反応がなく、部屋から異臭がするなどしたことから09年2月、母親に出頭を求めた。再出頭要求にも反応がなく、家庭裁判所の許可状を得た翌日、臨検した。合鍵で職員が玄関ドアを解錠、アームロックも切断し子供を保護した。東日本の児相は昨秋、1年以上不登校の小学生の安全確認が困難として両親に出頭を要求。12月臨検し、合鍵で解錠すると、ドアチェーンは親側が外した。
出頭要求は14の県市などが計47人の子のいる27世帯に28件実施(うち1世帯に2回実施)。「ガスも止まり部屋もごみだらけ」など養育放棄の家庭が多かった。同省虐待防止対策室は「必要なケースすべてに対応できておらず、現場がちゅうちょしているのが現実。情報提供し適切な運用を模索したい」としている。【野倉恵】
毎日新聞 2009年7月14日 13時21分