「夏の代表的な風物詩は」と聞かれ、「花火大会」と答える人は多かろう。これから、各地で巧みな技を駆使した光と音の競演が盛んになる。
ぱっと開いた大輪や小さな花々、飛び交う星たち…。夜空に描かれては消えていく。華やかさや躍動感、幻想、そしてはかなさは花火の醍醐味(だいごみ)であり、花火師との心の会話でもある。
そんな楽しみが消えていく危機に直面している。不況で自治体は財政難に陥り、企業からの協賛金も集まりにくいからだ。伝統ある花火大会でも中止に追い込まれるところが相次いでおり残念だ。
一方で「何とか維持したい」とやりくりしているところもある。頼みは一般からの善意。岡山市で開催される「おかやま桃太郎まつり納涼花火大会」は初めて市民や団体などから協賛金を募っている。
瀬戸内市では、市の補助金が打ち切られた「牛窓花火大会」を続けようと、地元有志が募金活動やバザーなどで資金集めに努めている。全国的には有料観覧席の設置、協賛者のメッセージを読み上げて花火を打ち上げるといった試みもある。
不景気な時こそ元気づけが必要だ。自ら提供者になるとか、大会に込められた人々の熱意や苦労を知れば、花火への親しみが増そう。規模を競った時代の花火より、ずっと美しく映えるはずだ。