ホームレス:厚労省が実態調査へ 背景など個別に聞き取り

2009年7月16日 22時38分

 厚生労働省は「日本の貧困」の実態把握に乗り出す方針を決めた。所得と生活状態の関係や、ホームレスとなった背景などを詳細に調査して「貧困」の実像を明らかにする。調査費を来年度概算要求に盛り込む方向で調整している。日本には生活保護やホームレス支援、失業対策などの施策はあるものの、これらを統一的に扱う部署はなく、「貧困」の概念も明確にはされていなかった。

 同省は、3年ごとに国民生活基礎調査の大規模調査を行い、所得や世帯構成、医療保険や年金の加入状況などを調べている。ホームレス調査は過去に03、07~09年の計4回、ネットカフェ難民調査も07年度に実施している。だが、いずれも数字の把握にとどまるうえに別々の部局で実施されていたため、体系的な貧困対策には結びついていなかった。

 厚労省は来年度に(1)国民生活基礎調査の再分析・再調査(2)ホームレスなどの実態把握を実施する方針だ。ホームレス調査では、個別に聞き取り調査を行い、職や住居を失った背景なども含めて踏み込んだ調査を行う。

 国際的には人間的な生活を営むことができない「絶対的貧困」との概念があり、独自の指標・基準を設ける国や機関もある。日本では憲法に基づき最低限の生活を保障した生活保護制度はあるが、実際に必要な世帯のうちどの程度が生活保護を受けているかを示すデータがなく、「貧困」の実情は明らかではない。【鈴木直】

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