逮捕され、大阪府警本部に入る杉本容疑者（クリックで拡大）

　投資顧問業登録がないにもかかわらず、外国為替証拠金取引（ＦＸ）の運用名目で全国の会員から約２０億円をだまし取ったとして大阪、高知両府県警の合同捜査本部は金融商品取引法違反の疑いで無届けの投資顧問会社「アライド」（大阪市）の役員ら６人を逮捕した。逮捕者の中で目を引いたのが、「６年間負けなしのカリスマトレーダー」としてマルチまがいの勧誘を行っていた杉本淑枝容疑者（３７）。そのスジでは有名な美人相場師だったが、フタを開ければ運用実績はほぼゼロのハッタリ女だった。

　合同捜査本部によると、杉本容疑者はアライドを通じ、１口１０万円で月２−５％の配当をうたって集金したほか、投資の勧誘活動を行う「外交員」と呼ばれる会員に対し、勧誘した人の出資額の６−７％を還元するなどとして、約２８０人から総額約２０億円を集めた疑い。実際の運用は３億６０００万円でほとんど利益は出せず、使途不明金も含め、ほぼ全額が回収不能とみられる。杉本容疑者はリーマンショック後の昨年１１月、同社の口座から６６００万円を引き出し、行方をくらましていた。

　とんだ美人相場師だったが、会員をダマし続けた手口はまさに“カリスマ”そのもの。日ごろから「夫はカリスマディーラー」「ニューヨークの銀行に知人がいて、為替情報がいち早く手に入る」などと語っていたほか、「日本で５本の指に入るトレーダー」とも公言。自宅に数台のパソコンを配備し、為替画面が映し出されたモニターを１時間もにらみ続け、話しかけようとした会員を制しながら「チャンスを見極めている」などと話していたという。

【３度も名字を変えながら投資…】

　口八丁とハッタリで２０億円もの金を集めたこの美熟女は、一体どんな素性なのか。関係者によると、杉本容疑者は秋田県出身。地元の進学校の公立高を卒業後に上京。熊谷、鈴木、杉本と、これまで３度も名字を変えながらマルチ投資に手を染め、一昨年６月にアライドを設立した。大阪府内の自宅をサロンにして会員を信用させ、会員からツーショット写真を要求されるほどのカリスマぶりを発揮していた。

　しかし、実際には出資金の大半がベンツなどの高級外車やハワイの別荘、高級ブランド時計などの購入、豪華海外旅行費用などに充てられていたという。化けの皮がはがれた昨年１１月には、同社のサイトで他の容疑者らを名指しして自分は被害者を装い、東京にいる父親のもとに身を寄せていた。大阪の自宅では、夫が「そろそろ大阪に戻る」と押しかけた被害者をはぐらかしていた。また、秋田の実家でも家人が「知らない。関係ない」と逆ギレしていた。

　被害者らは、杉本容疑者らの逃亡直後から独自に情報交換を行うサイトを開設。連名で被害届を提出したほか、杉本容疑者の素性を徹底調査。一部には、過去に人気ＡＶ女優として熟女系作品に出演していたとする経歴を告発する者まで現れる騒ぎになっている。