兵庫県で発生したバレイショのソラニン等自然毒によると思われる幼稚園児の中毒事例について

 

T はじめに

 平成13年6月16日,赤穂市内の幼稚園でバレイショ喫食後,吐気・嘔吐・腹痛・下痢などを症状とする中毒が発生した.この幼稚園では例年バレイショの栽培・収穫を行っており,当日は収穫したイモを園児らが喫食するという恒例の行事であった.調査では当日は不審者の出入りもなく,共通食はバレイショと各自持参したお茶だけであった.園児らの中毒症状からバレイショに含まれるソラニン等の自然毒による中毒1)と推定された.

バレイショ栽培は理科教育の一環として多くの小学校・幼稚園で実施されており,小学校でのバレイショ中毒は過去に3例報告されてい2,3,4) .しかし,幼稚園で発生したのは本事例が初めてであると思われ,今後も同様の中毒が起こる可能性が高い.

このような中毒を予防し,発生した場合には迅速な対応を行うための一助として,本事例の追跡調査を行った.中毒試料として収去した蒸しバレイショおよび吐瀉物対照として市販バレイショを用いた.原因物質と考えられているソラニンおよびチャコニン1)を測定して中毒量を推定し,中毒を起こしたバレイショの特性を明らかにしたので報告する.

 

 

U 方 法

調査の実施

 アンケート調査:喫食および発症状況を把握するため,同様の食中毒を経験した福岡市から送付されたアンケート用紙をもとにして実施した.調査項目は氏名,性別,年令,体重,食べたバレイショの大きさ,個数,皮ごと食べたか,発症の有無,潜伏時間および症状とその回数である.

 幼稚園長聞き取り調査:面談および電話で2回行った.

 

試料

 検体として収去した当日の残品である蒸しバレイショ・吐瀉物および市販バレイショを蒸したものを分析試料とした.種類はともにメークインである.試料は皮部分(表面の褐色薄皮を含む通常の皮むきで取り除かれる厚さ2mm程度の部分)と可食部(皮部分を除いて混和したもの)に分けて分析した.

 

試薬

a-ソラニンおよびa-チャコニン標準溶液:a-ソラニンおよびa-チャコニン標準品(Sigma社製.純度95%)をメタノールに溶解し,適宜メタノールで希釈した.

Sep-Pak Plus PS-2カートリッジ:Waters社製.

メタノールおよびアセトニトリル:和光純薬社製HPLC

リン酸一カリウム(KH2PO4):和光純薬社製特級

 

高速液体クロマトグラフ(HPLC)分析条件1)

 カラム:Wakosil 5NH2 (和光純薬社製.f 4.6 mm x 150 mm5mm40)

 移動層:アセトニトリル―20mM KH2PO47525

 流 量:0.75 ml/min

  検出波長:202nm

 注入量:20ml

 

試験溶液の調製1)

バレイショ可食部は5.0gを正確に計り,メタノール40ml加えてポリトロンでホモジナイズした後,5Aろ紙でろ過した.ポリトロンおよび試料残渣をメタノール5mlで洗浄してろ過し,ろ液を合わせてメタノールで正確に50mlとした.皮部分は10g以下の場合は全 量をメタノール抽出して50mlとし,10g以上の場合は抽出メタノール液量を100mlとした.

次に,ろ液5.0mlを水8mlで希釈し,PS-2カートリッジに負荷し,40メタノール5mlで洗浄後,メタノール15mlで溶出した.この溶出液を減圧乾固(40)し,メタノールで正確に1.0mlにした.これを試験溶液とし,HPLCa-ソラニンおよびa-チャコニン濃度を測定した.

 吐瀉物はティッシュペーパーにしみ込んでおり, バレイショのみを分析試料として採取するのは不可能であった.そのため吐瀉物とティッシュペーパー全体が充分浸漬する量のメタノール約300ml,超音波処理して15分間抽出を行った.抽出液を5Aろ紙でろ過し,残渣はさらに50mlのメタノールで2回洗浄して,ろ液を合わせた.このろ液を濃縮して50mlとし,バレイショ試料と同様に試験溶液を調製した.

 

V 結果及び考察

1.事例の概要
  (1) 発生日時:平成13616
  (2) 発生場所:赤穂市S幼稚園
  (3) 喫食者 :園児77名と職員5名,計82
  (4) 発症者 :園児30名と職員3名.計33
  (5) 死者数 :0
  (6) 原因食品:蒸したバレイショ(自園栽培)
  (7) 原因物質:ソラニンおよびチャコニン

2.事例の探知および内容

平成13618()1030S幼稚園から所轄赤穂健康福祉事務所への連絡により,本事例を探知することとなった.

内容は,「園で栽培(近くの休耕田)しているジャガイモを613日に収穫し,16()に園で蒸して食べたところ,嘔吐・腹痛などの症状を呈する園児が複数出た」というものであった.

3.調査(園長からの聴き取り)

(1)      栽培状況
@ジャガイモを栽培し,園で調理して食べると
 いう行事は,毎年やっているが,今回のよう
 な事例は一度もなかった.
Aバレイショの品種はメークインである.
B植付け準備として,平成1211月ごろ畑に
 石灰・腐葉土・鶏糞を投入し,植付け前に有
 機肥料を加えた.平成13226日に園児
 が植え付けた.
C去年に比べると,植え付け方(株と株の間隔)
 が密であったような気がする.
D植付け後,土かぶせをし,マルチ(黒いビニー
 ル)で覆い,芽かきをした.農薬は使用しなか
 った.

(2)          収穫から調理まで
  @当日は不審者の出入りはなかった.
  A収穫後は半日天日干し,当日まで3日間ダン
   ボール箱に入れ室内に保管していた.
  B平成13616日午前850分ごろから
   収穫したバレイショを水道水で洗浄し始め
   た.
  Cその後,約30分間皮ごと蒸し器で蒸して,
   仕上げに塩を振りかけ,11時ごろから喫食を
   はじめた.
  D蒸すときに,芽が出ているものや,傷んでい
   る(腐ったりしている)のは除けたが,緑色が
   かかったのは一部蒸した中に入っていたか
   もしれない.

(3)      喫食及び喫食後

   @当日の共通食はジャガイモのみで,お茶は園
児が各自持参したものであった.

A皮は園児が自分でむいて食べた.最近の子供
 は完全にきれいにむいて食べる傾向である.
B職員5名中3名は喫食直後に喉のあたりがイ
 ガイガした感じでエグさを感じた.

 

4.患者発生の状況
 (1)異常を訴えた幼児数とその経過
 これらのバレイショを喫食したのは園児77名と職員5(82)で,そのうち何らかの症状を訴えたのは園児30名と職員3(喫食直後に吐気)であった.本報告では園児のみを対象とし,アンケート調査で判明した全園児の性別・体重・喫食量・症状の有無・潜伏時間の一覧を,発症者および非発症者別にそれぞれ1および2に示した.

平成13616115分ごろ喫食を始めた.5分後ごろ一口食べた男児が吐き出し,さらに20分経ったころ,女児と男児各1名が嘔吐した.その後,吐気や腹痛を訴える園児,嘔吐する園児が続出した.在園中に発症した児童は14名であり,そのうち疲労感を訴えた1名は保護者付き添いで降園した.1230分から14時の間に,在園中に発症した園児の安否確認を行い,全員が回復したことが確認された.その間にも,帰宅後発症した園児がいるとの連絡があり,最終的に20時ごろそれら園児が元気であるとの確認が取れた.在園中嘔吐した園児1名は帰宅後腹痛を訴えたため病院で受診したが,腸の異常は認められなかった.

 (2)潜伏時間別発症者数

  潜伏時間別発症者数を2にまとめた.症状が発生するまでの時間はほとんどが1時間半以内で,長時間経過後(5時間および9時間)発症したのは2名のみであった.昭和58年埼玉県富士見市の小学校で起きたバレイショ中毒事例(喫食者273名,発症者99) 2)および平成10年の福岡市での事例(喫食者28名,発症者19)3)でも,本事例と同様に喫食後数時間で発症している.
 

(3)男女の発症率の比較

 発症率は男子が30.6%,女子が40.6%,全体で39.0%であった(4).男女間で発症率に差はなかった.
 

(4)発症の種類とその比率

症状別発現状況を5にまとめた.最も多く見られたのは嘔吐で,約2/3の園児に発現した.そのうち1名は喫食後9時間経過してからであった.次いで,吐気(26.7%),腹痛(23.3%),下痢(16.7%)であった.同一の症状を2回発現した園児,異なる症状を発現した園児は計4名であった.
 過去の事例で報告されている症状
2,3)と比較して特徴的なことは,低い発現率を示した嘔吐(5.3%および26.3%)が本事例では60.0%と高く,また悪寒・発熱や頭痛の訴えがなかったことなどがあげられる.これは幼稚園児と小学校児童の年齢差による感受性の差なのか,バレイショ中の毒素あるいはその他の共存物質の差異によるのかは不明である.

 

5.バレイショの大きさ,色とソラニン等の自然毒含有量との比較
(1)
バレイショの大きさおよび色調
 6に示したように,本事例バレイショの大きさは平均28.4gで,対照として用いた市販品(58.3g)より小さかった.また,その半数は緑化していた.聴き取り調査からこれら緑化バレイショも喫食されたと思われたので,分別せずに分析試料とした.


(2)
ソラニンおよびチャコニンの毒性と測定法

従来,バレイショ中毒はソラニンによるものとされていたが,その構造の糖部分のみが異なるチャコニン(1)の毒性がより強く,また両物質の相乗効果で毒性が増強されることなどが最近の研究で明らかとなっている5,6).そこで,バレイショの毒性評価のために両物質を測定し,合計値で表すことにした.以後ソラニンおよびチャコニンの総称をSCと記すこととする.表6本事例および市販バレイショの皮部および可食部のソラニン,チャコニンおよびその合計値であるSC含有量を示した
 
a-ソラニンおよびa-チャコニンは図1に示すように窒素を含んでいるため,通常のC18カートリッジで精製する場合,充填剤基材のシリカに吸着を起こして回収率が低下する可能性が考えられたので,ポリマー系C18PS-2を用いて測定した.

(3)バレイショ皮部のSC含有量

 本事例のバレイショ皮部100g当りの平均のSC量は85.1mgであった.また,2に示したように緑化部位を有するバレイショの平均SC99.7mg/100g,外観が正常なものは70.5mg,市販品の皮部は平均54.6mgであった.緑化バレイショでの含有量は高い傾向を示した.しかし,本事例の外観が正常なものと,市販品の間には有意差は無かった.したがって,皮部については本事例の試料と通常の市販品との間に顕著な差異は認められなかった
(4)
バレイショ可食部のSC含有量

一方,本事例のバレイショの可食部ではその色調が市販品に比べ明らかな差異が認められた.本事例の試料のほとんどは可食部割面全体が通常の淡かっ色ではなく,灰色あるいは濃黄色を呈しており,肉眼的にも異常な色調であった.また,本事例のバレイショと市販品の可食部のSC含有量にも著明な差が認められた.100g当り,市販品が1.3mgであったのに比べ,本事例のバレイショでは45.3mg (25.587.1mg/100g)という極めて高い値であった.

この値は,福岡市の中毒事例で報告されている値(1.8および4.7mg)より高く,広島県廿日市での事例の報告値(3349mg)とほぼ同程度であった4)

(5)バレイショの皮部と可食部でのSC含有量の比較

本事例バレイショのSC含有量は,100g当りでは皮部85.1mg,可食部45.3mg である.しかし,1個当りでは皮部4.7mgに対して,可食部では10.0mgであり,可食部は皮部の2倍以上となっている.また,特筆すべき点は緑化が認められなかった外観が正常なバレイショでもSC濃度が同じであったことである(2)

一般にバレイショSC3/4以上が皮部分に局在しているとされている3,6).そのことが緑化部位や芽が出ている部位とともに皮を除去して喫食すれば中毒の予防が可能とされる根拠となっている.しかし,本事例ではバレイショ1個当りのSCの約2/3が可食部に存在していたこと,可食部には緑化バレイショもそうでないものもほぼ同量SCを含んでいたことが明らかとなった.最近の報告では,バレイショ全体のSC濃度20mg/100gが中毒量とされており,それよりも低い値でにがみを呈するとされている7).したがって,皮を除去して可食部だけを喫食しても,中毒量を上回るSCを摂取したことになる.また,職員が感じた喉のイガイガ感やエグみのある味は,分析で明らかとなった高SC濃度が感覚的にも感知されていたものと思われる.

 

6.バレイショの喫食量から推定したSC摂取量と発症との関係
(
)バレイショの喫食量と発症率の関係

アンケート調査では,喫食したバレイショの大きさを小型,中型および大型に分類し喫食数を訊ねた.小型バレイショの重量を10g,中型および大型をそれぞれ25gおよび50gとし,食べた個数を乗じて推定喫食量(g)を求め,30gごとに7グループに分けて発症率との関係を調べた.その結果,3に示したように,喫食量増加に伴って発症率が高くなる傾向が認められ (相関係数:0.8669)50%発症率を示すバレイショ喫食量は約110gであることがわかった.
(
)バレイショの喫食量から推定したSC摂取量

次に,園児らは可食部のみを喫食したとして,推定喫食量に可食部の重量%およびSC量の平均値(79.4%および45.3mg/100g)を乗じて園児のSC推定摂取量を算出した(12).発症児では平均で26.8mg(3.689.9mg),非発症児では20.0mg(1.854.0mg)であった.また,3に示した発症率50%を示すバレイショ可食部のSC量を算出すると39.6mgとなり,昭和58年に埼玉の小学校で起きた同様の中毒事例での推定摂取量2440mgと同程度であり,福岡での事例における15.6mgの約2.5倍の値であった2,3)

() SC摂取量と中毒の関連性

従来,ソラニン等の中毒量は200400mgといわれていたが1,8),本事例を含め過去に教育現場で起きたバレイショ中毒42-4,)ではいずれもその値の約1/10程度の量で約半数の児童が発症している.園児吐瀉物からは2.1mgのチャコニンと1.5mgのソラニン(SCとして3.6mg)が検出された.ソラニン等の胃腸管吸収は遅いことを考えると9),数百mg摂取されたSCが胃腸管で吸収され数十分後に数mgしか胃内に残留しなかったとは考えにくい.したがって,従来言われていた量よりはるかに低い量で発症していることは確かである.教育現場では必ずしもバレイショに適した栽培・生育条件が守られるとは限らないので病気のものや未成熟なものを喫食する可能性もあり,また喫食者は成人よりも感受性が高いと考えられる児童で,数も多い.バレイショ栽培を理科教材として利用する場合にはこのことを再認識し,一旦中毒が発生した場合には被害者が多くなることを念頭に置いておかなければならない.

 

7.バレイショの食中毒要因について

バレイショは極めて普通の食物であり,その芽に毒性があることは広く知られており,ソラニン等の薬理作用として細胞膜破壊作用やコリンエステラーゼ阻害作用などが指摘され,その主要症状は胃腸障害と神経障害であることがわかっている1,5,6,8).それにもかかわらず,バレイショ中毒の全体像については不明の部分が多い.本事例を含め国内で起きた学校での集団中毒では主症状は比較的軽微な胃腸障害であり,経過も良好であった.しかし,呼吸困難・精神錯乱・昏睡など重篤な症状まで至る例も多く報告されており,死に至った例もある6,11).アトロピン様物質などSC以外の有毒物質の存在や8),毒素の胃腸管吸収やその薬理作用を増大させるサポニンなど他の成分の影響も指摘されており11),症状の発現程度が単にSC濃度だけの差によるのか他の要因があるのかは明らかではない.また,栽培期間中にSC量が増大する要因についてはほとんど未解明である.

 

8.バレイショの自然毒による食中毒予防法について

(1) 栽培時の注意

栽培時には植付け間隔を大きくし,芽かきして茎を12本としてイモを大きく育て,土寄せしてイモに日光があたって緑化しないようにする.

収穫前にSC含量が増大する要因としてイモの成熟度や天候(温度・雨量・日光量),土壌や病害虫による侵食,細菌感染などが上げられる6)

()収穫後の保存時の注意

ソラニン等は高温や光暴露下での保存時に増加することがわかっているので6),収穫後はできるだけ早く食用とし,保存は低温・暗所で行うことが必要である.本事例では収穫されたバレイショは半日天日干しした後,3日間暗所・室内保管されていた.

窓辺に1ヶ月放置されたバレイショ中ソラニンが約20倍増加した例10)や約2ヶ月の夏休み期間中保存されたバレイショで中毒が起きた例11)が報告されているが,3週間の室温・蛍光灯下保存で緑化は進んだもののSC量は約3倍しか増加しなかったという報告もあり12),本事例のような短期間の保存で中毒を起こす量のSCが生成されたと考えるのは疑念が残る.

()喫食時の注意

喫食時にはSC濃度が高いとされる皮・緑化部分や芽,未熟で小さなバレイショは取り除くなどがあげられる.

()他の幼稚園との比較

聞き取り調査で判明したのは,同一の種バレイショでほぼ同条件で栽培し,栽培場所だけが異なるバレイショを喫食したもうひとつの幼稚園では本事例のような中毒は起こっていなかった.また,入手できたそのバレイショの予備的分析ではSCはほとんど検出されなかった.これらのことから,本中毒を引き起こしたバレイショは生育中の天候や収穫後保存の影響ではなく,収穫前に何らかの生物学的ストレスによりSC量が増大していたのではないかと筆者らは推察している.

 

 

W.まとめ

自らが栽培したものを食べることができるということは児童らにとっては貴重な体験であろうし,理科教育にも適切だと考えられる.同時に,自然の中に有害なものがあることを教えるのも大切であろう.バレイショ中毒を予防するために,上述の一般的注意事項を守ると同時に,本事例で判明したように喫食前に可食部の色調や味の異常などにも注意する必要がある.埼玉の事例では,バレイショ割面全体が淡葉緑色であったと報告されている2)

筆者らは今回のバレイショ喫食による幼稚園児の中毒は以下の理由から,外部から持ち込まれた劇毒物によるものではなく,本事例バレイショの可食部に含まれていたソラニンおよびチャコニンがその主因であったと判定した.

@   不審者の出入りは観察されておらず,園児の共通食はバレイショと各自持参したお茶だけであった.

A   喫食量の増大に伴って発症率が高くなる傾向があった.

B   発現した症状と発現するまでの時間および回復までの時間が過去のバレイショ中毒と共通していた.

C   本事例バレイショ可食部の色調と味が異常であったと確認できた.

D   本事例バレイショ可食部から極めて高濃度のグリコアルカロイドが検出された.

E   検出されたソラニンおよびチャコニン濃度は中毒量に達していた.

F   発症した園児の胃内容物からソラニンおよびチャコニンが検出された.

バレイショによる中毒を予防し,発生時の迅速な対処を可能とするための一助として,筆者らは本事例バレイショのソラニンおよびチャコニン以外の影響因子(バレイショが有する抗生物学的ストレス因子のひとつとされるクロロゲン酸や緑化程度を表すクロロフィルなど)の分析,アトロピン様物質の検索,バレイショ抽出物の膜障害活性やコリンエステラーゼ阻害活性の測定などについて,調査を継続中である.

 

文献

1)    衛生試験法・注解2000,日本薬学会編,pp246-247(2000),金原出版株式会社,東京.

2)    岩崎久夫:バレイショによるソラニン中毒.食衛誌,25466-467(1984)

3)    松井久仁子,赤木浩一,西田政司,川口理恵,豊福洋一:未熟なバレイショによる小学生のグリコアルカロイド中毒とその発症量および予防対策について.食品衛生研究,499-107(2001)

4)    木村泰博:第11回佐伯医学会総会,http://www.urban.ne.jp/home/saikima200011月.

5)    Toyoda, M., Raushc, W.D., Inoue, K., Ohno, Y., Fujiyama, Y., Takagi, K. and Saito, Y.: Comparison of solanaceous glycoalkaloids- evoked Ca2+ influx in different types of cultured cells. Toxic. In Vitro, 5, 347-351(1991). 

6)    Friedman, M. and McDonald, G. M.: Potato glycoalkaloids: chemistry, analysis, safety, and plant physiology. Crit. Rev. Plant Sci., 16, 55- 132(1997).

7)    Jones, I., Roddick, J. and Smith, D.: Potatoes the poison potential. Food Manufacture, 71, 36-37(1996).

8)    急性中毒情報ファイル,第3版,p.701(1996),廣川書店,東京.

9)    Nisie, K., Gubmann, M.R. and Keyl, A.C.: Pharmacology of solanine. Toxicol. Appl. Pharmacol., 19, 81-92(1971).

10) Gonmori, K., Meguro, H., Lu, Y.Q., Yoshioka, N., Hori, K. and Kikkawa, S.: The risk of solanine poisoning in a folk remedy and solanine production in potatoes. Res. Pract. Forens. Med., 36, 91-95(1993).

11) McMillan, M. and Thompson, J.C.: An outbreak of suspected solanine poisoning in schoolboys: examination of criteria of solanine poisoning. Quat. J. Med.,48, 227-243(1979).

12) Dao, L. and Friedman, M.: Chlorophyll, chlorogenic acid, glycoalkaloid, and protease inhibitor content of fresh and green potatoes. J. Agric. Food Chem., 42, 633-639 (1994).