スペシャルコンテンツ

山田宏の'09 MotoGP ここが見所!

前戦アメリカGPでは、ホンダのペドロサ選手が今季初優勝。ブリヂストンのタイヤを装着したホンダのライダーによる勝利は、2004年の玉田選手以来のこととなりました。

'09 MotoGP Rd.9 ドイツGP ここが見所!

'09 ドイツGP 7月18日〜7月19日開催
山田宏 (ブリヂストン モーターサイクルレーシングマネージャー)

アメリカGPを振り返って
前回のアメリカGPも、カリフォルニアの青空の下素晴らしいレースが展開されました。予選日はアメリカの独立記念日だったのですが、各地で盛大なお祭り騒ぎとなったようでした。その予選ではJ.ロレンソがポールポジションを取ったのですが、予選最後のアタックで大転倒を喫しました。奇しくも最後の同じタイミングで、最終アタックを始めたC.ストーナーも大転倒。フロントローの2人が最後に転倒という事になり、フロントロー会見でも痛々しかったのですが、幸いにも大きな怪我には至りませんでした。スタートで飛び出したのは、予選4番手のD.ペドロサ。スタートはいつも良いのですが、彼も今年転倒による怪我が続き、これまで本来の結果を残せていませんでした。しかし今回は違いました。序盤から速いペースで、後続を少しずつ離します。2番手にはロッシが付けたのですが、すぐにストーナーが抜いてトップを追いかけます。しかし思うようにペースが上がらず、逆に中盤ロッシに抜き返されてしまいます。その後もペドロサは快調なペースで、中盤には2位ロッシに対して3秒のリードを広げます。一方ポールポジションからスタートのロレンソは、スタートでやや出遅れますが徐々に追い上げ、終盤にはペースの落ちたストーナーを抜いて3位に浮上します。最後まで諦めないロッシは、少しずつトップとの差を詰めます。最終ラップの最終コーナーでロッシがインに入るかに思われましたが、ペドロサが押さえきり今期初優勝!ペドロサ自身も昨年のカタルニアGP以来、1年振りの優勝でした。そしてホンダワークス+BSのタイヤでは初優勝。我々もホンダのマシンでは、2004年の玉田誠選手以来の優勝となりました。
今回の結果でランキングは、ロッシ151点、ロレンソ142点、ストーナー135点、ペドロサ92点となりました。

◆以下、前戦、Rd.8 アメリカGPのレースリザルトです。

MotoGPクラス 第8戦 United States Grand Prix
ラグナセカ 7月 5日 Fine/Dry 3.61km×32周=115.52km
決勝出走:17 /完走:12
Pos. No. Rider Tyre Team Machine Maker Laps Time
1 3 ダニー・ペドロサ BS レプソル・ホンダチーム RC212V ホンダ 32 44:01.580
2 46 バレンティーノ・ロッシ BS フィアット ヤマハ チーム YZR-M1 ヤマハ 32 44:01.924
3 99 ホルヘ・ロレンソ BS フィアット ヤマハ チーム YZR-M1 ヤマハ 32 44:03.506
4 27 ケイシー・ストーナー BS ドゥカティ チーム デスモセディチ GP9 ドゥカティ 32 44:14.012
5 69 ニッキー・ヘイデン BS ドゥカティ チーム デスモセディチ GP9 ドゥカティ 32 44:23.243
6 24 トニー・エリアス BS サンカルロホンダ グレシーニ RC212V ホンダ 32 44:23.621
7 5 コーリン・エドワーズ BS モンスター ヤマハ テック3 YZR-M1 ヤマハ 32 44:31.781
8 7 クリス・バーミューレン BS リズラ スズキ MotoGP GSV-R スズキ 32 44:34.437
9 14 ランディ・デプニエ BS LCRホンダ MotoGP RC212V ホンダ 32 44:41.905
10 33 マルコ・メランドリ BS ハヤテレーシングチーム ニンジャZX-RR カワサキ 32 44:49.608

Pole Position: ホルヘ・ロレンソ フィアット ヤマハ チーム/YZR-M1/ヤマハ
Fastest Lap: ダニー・ペドロサ レプソル・ホンダチーム/RC212V/ホンダ 1:21.928 158.627km/h 15周



ドイツGPについて
サーキットは旧東ドイツのケムニッツという町の近くにある、ザクセンリングというコースです。このコース自体は1996年に作られたサーキットで、1998年からMotoGPが再開催されています。その昔このコース周辺に公道を使ったサーキットがあり、東ドイツGPとして1961年から1972年まで世界選手権が開催されていました。(この時西ドイツGPは、現在F1が開催されているホッケンハイムで行われました。)今もサーキットの近くの公道に、昔のコースの名残があります。昔は旧東ドイツにもいくつかのオートバイメーカーがあり、オートバイレースが非常に盛んでした。その頃、ここで開催されたレースでは、48万人の観客を集めたそうです!昨年のMotoGPでも決勝日に9万8千人、3日間で22万人以上の観客を集めました。このザクセンリンクは、1周3.671kmとGPの中では2番目に短いコースで、右4、左10のコーナーからなっています。1周の平均速度は162km/hと中低速コースに入りますが、前半がテクニカルな中低速コーナーの連続で、後半が中高速コーナーという組合せです。アップダウンが多く、抜き所があまりありません。
昨年は、雨のレースとなりました。スタートでペドロサが飛び出し、後続を離しましたが、6周目の1コーナーで転倒。結局ストーナーがポールトゥフィニッシュで優勝。2位にロッシ、3位バーミューレンと我々は表彰台を独占し、10位までにブリヂストン勢8人が入るという好結果を得ました。


◆以下、昨年2008年のドイツGPのレースリザルトです。

MotoGPクラス 第10戦
ザクセンリンク 7月 13日 Rain/Wet 3.671km×30周=110.13km
決勝出走:17 /完走:13
Pos. No. Rider Tyre Team Machine Maker Laps Time
1 1 ケイシー・ストーナー BS ドゥカティ・コルセ・チーム デスモセディチ GP8 ドゥカティ 30 47:30.057
2 46 バレンティーノ・ロッシ BS フィアット ヤマハ チーム YZR-M1 ヤマハ 30 47:33.765
3 7 クリス・バーミューレン BS リズラ スズキ MotoGP GSV-R スズキ 30 47:44.059
4 15 アレックス・デ・アンジェリス BS サンカルロホンダ グレシーニ RC212V ホンダ 30 47:44.181
5 4 アンドレア・ドビジオーゾ MI JiR チームスコット MotoGP RC212V ホンダ 30 48:12.079
6 50 シルバン・ギュントーリ BS アリーチェチーム デスモセディチ GP8 ドゥカティ 30 48:16.705
7 65 ロリス・カピロッシ BS リズラ スズキ MotoGP GSV-R スズキ 30 48:34.540
8 14 ランディ・デプニエ MI LCRホンダ MotoGP RC212V ホンダ 30 48:34.645
9 56 中野 真矢 BS サンカルロホンダ グレシーニ RC212V ホンダ 30 48:46.830
10 13 アンソニー・ウエスト BS カワサキ・レーシングチーム ニンジャZX-RR カワサキ 30 48:59.332

Pole Position: ケイシー・ストーナー ドゥカティ・コルセ・チーム/デスモセディチ GP8/ドゥカティ
Fastest Lap: ケイシー・ストーナー ドゥカティ・コルセ・チーム/デスモセディチ GP8/ドゥカティ 1:32.749 142.487km/h 23周




■ザクセンリンクサーキット

3.671km×30laps=110.13km


ザクセンリンクはタイヤに対して非常にシビアなサーキット。よって、前後ともハードとエキストラハードという最もハードなコンパウンドのタイヤを使用することになります。

予選、決勝の見所
1コーナーから先はタイトコーナーの連続で、前半はまず抜けないでしょう。その後は下りと上りの高速コーナーの後、切り替えしてからのバックストレートと高速区間が続きます。後半の高速コーナー、バックストレートエンド、最終コーナーあたりがパッシングポイントとなるでしょう。ここもアップダウンや低速〜高速コーナーと多種のコーナーがあり、セッティングを詰めるのが難しいと言えます。抜くポイントが少ないので、予選順位、スタートの良し悪しが重要になります。このテクニカルなコースでの30周という長丁場のレースは、ライダーにとっても、タイヤにとっても厳しいものとなるでしょう。
現在の天候は雨ですが、週末の予報は日曜と金曜が曇りで、気温は最低13〜15℃最高19〜25℃とやや涼しいようです。そして土曜には雨の予報なので、今週は久しぶりに天気に悩まされるかもしれません。

タイヤ
ここは回り込んだコーナーと左コーナーが多いので、もともとタイヤの左側の耐久性に厳しいコースです。又、荷重の掛かる中高速コーナーによって、タイヤの発熱も高いので、熱によるタレも大きくなります。この点のシビアさは一昨年の路面改修で、更に厳しくなりました。昨年は雨のレースとなった為、ドライでの耐久性は良く判りませんでしたが、07年はかなり厳しかったと記憶しています。この状況下では、エッジグリップとトラクションと耐久性、さらに旋回性が重要です。したがって今回投入のスペックは、フロント、リア共にハードとエキストラハード、というようにこれまでで最もハードなものとなります。リアは第6戦のカタルーニャGPと同じで、左右非対称(左側がハード)のコンパウンドですが、フロントのエキストラハードは初登場です。またウェットタイヤはフロント、リア共にハードスペックです。

今回のレースは第9戦ということで、いよいよレースも後半戦に突入です。ドイツGP、イギリスGPと2週間続きますが、その後は2週間の休みとなります。この2戦は後半戦を占う意味でも大事なレースになると思われますので、またまたエキサイティングなレースになる事を期待しています。

ドイツGPの決勝は7月19日(日)です。



《[番外編] 山田宏の「MotoGPタイヤ・アロケーション」レポートを見る》

09/07/15 '09 MotoGP Rd.9 ドイツGP ここが見所!
'09 ドイツGP 7月18日〜7月19日開催
おすすめ!
09/06/30 '09 MotoGP Rd.8 アメリカGP ここが見所!
'09 アメリカGP 7月4日〜7月5日開催
09/06/23 '09 MotoGP Rd.7 オランダGP ここが見所!
'09 オランダGP 6月26日〜6月27日開催
09/06/10 '09 MotoGP Rd.6 カタルーニャGP ここが見所!
'09 カタルーニャGP 6月13日〜6月14日開催
09/05/27 '09 MotoGP Rd.5 イタリアGP ここが見所!
'09 イタリアGP 5月30日〜5月31日開催
09/05/13 '09 MotoGP Rd.4 フランスGP ここが見所!
'09 フランスGP 5月16日〜5月17日開催
09/04/28 '09 MotoGP Rd.3 スペインGP ここが見所!
'09 スペインGP 5月2日〜5月3日開催
09/04/22 '09 MotoGP Rd.2 日本GP ここが見所!!
'09 日本GP 4月25日〜4月26日開催
09/04/08 '09 MotoGP Rd.1 カタールGP ここが見所!-前編
'09 カタールGP 4月11日〜4月12日開催
09/04/08 '09 MotoGP Rd.1 カタールGP ここが見所!-後編
'09 カタールGP 4月11日〜4月12日開催
09/04/22 [番外編] 山田宏の「MotoGPタイヤ・アロケーション」レポート
おすすめ!