スクラップにするのは惜しいと思っていたら、景気後退のあおりで延命に光が見えてきた。昨年退役した先代の南極観測船「しらせ」である。
国の南極地域観測統合推進本部は昨春、活用してくれる購入先を公募した。広島や大阪で係留・展示する案も出たが、価格面でまとまらずスクラップとなることが決まっていた。
解体を待っている間に景気が急速に悪化、くず鉄価格が急落し、解体は不都合になった。保存を求める声も根強く、推進本部が先ごろ再度購入先探しを決めた。間もなく公募が始まるという。
船名の由来となった南極探検の先駆者・白瀬(しらせ)矗(のぶ)は1912年に接岸して探検を行ったが、国立極地研究所のホームページによれば岩石を採取できず、悔しがったそうだ。それもそのはず、白瀬が立ったのは広大な棚氷の上であり、南極「大陸」ではなかった。
時が流れ、今は南極点を研究者以外も訪れる。標識は訪問者向けと本物があり、氷と一緒に少しずつ動くため本物の方は毎年元日に正確な南極点を測定し、立て直すのだそうだ。
自然について人間はまだほんの一部を知っているにすぎない。先代「しらせ」が子どもたちの目に触れる形で残り、好奇心や冒険心を刺激する役目を果たしてくれたらと思う。推進本部は「安くします」と言っている。