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中国「臓器狩り」の見えない暗闇(3)
まさに映画「アイランド」の世界。“彼ら”は眠らされ、摘出され、二度と目覚めることはない
カナダ元アジア大洋州担当大臣 デビッド・キルガー 元国連カナダ代表 デビッド・マタス
■迫害に並行して増えた移植件数
マタス 病院の宣伝自体は、臓器提供者が法輪功学習者であることを確定することにはならない。しかし、他の提供者がだれなのかは全く分かっていない。
ここで、法輪功弾圧が始まった99年7月以降、移植手術件数が飛躍的に伸びたことについて考えてみたい。
中共は建国以来どの気功も弾圧したが、80年代には緩和していた。法輪功は李洪志氏が92年、心身の健康促進を目的に中国東北部で創始した気功である。政府の中国気功科学研究会にも登録されている。人種、国、文化を超えて、寛容と慈悲を瞑想することを教え、国境を越えて広がった。基本的に政治的活動は行わず、日本を含む30以上の国や地域で受け入れられている。北米では温和な集団とみられている。
ところが、90年代半ば学習者が6千万人に達すると、中共はイデオロギー面における独占的地位を脅かす存在とみなし始めた。中国国家体育総局の統計では、99年に7千万人。ポスト毛沢東時代の精神的空白を背景に、現代科学と中国の伝統の融合が人気を集めたとされる。
江沢民前政権は96年、『中国法輪功』と関連書籍の出版を禁止した。あからさまに邪悪な集団ととらえ、国営放送や雑誌が「迷信」と喧伝、法輪功を学ぶ数百人の党員や退役軍人らが江主席に手紙を寄せたり、抗議した。逮捕者が出て北京で新しいデモが始まるなど、摩擦は激化した。李氏は98年に米国に逃れ、永住権を取得した。
99年4月25日、1万人を超える中国人が、紫禁城そばの中共首脳の中枢機関、中南海に結集した。学習者を大量動員できる力が、政権には脅威となった。
表面的にはおかしな話である。なぜなら法輪功は組織として事務所があるわけではなく、資金もない。政治的背景は何もない。ところが、共産党員数を上回ったことから、無視できなくなったのだ。結果、膨大な数の人々が、国家の恣意と権力の標的となった。
江主席は、法輪功弾圧のため特務機関「610弁公室」を省、市、県、大学、政府機関、国有企業に設置、「根絶」を命じた。99年夏には数万人が身柄を拘束された。豪作家、ジェニファー曾氏が北京在住時代に入手した機密資料によると、01年4月末までに逮捕者は83万人に達したという。05年、米国の中国白書は、中国警察だけでも340の強制労働収容所、数百の拘置所に計30万人収容可能と述べた。
国連の拷問に関する03年の報告によると、中国内の虐待と拷問被害者の66%が法輪功学習者で、その他はウイグル族11%、風俗産業従事者8%、チベット人6%、人権活動家5%、反体制者2%、その他2%(エイズ患者等)だった。
続く
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【正論1月号】
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