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中国「臓器狩り」の見えない暗闇(2)
まさに映画「アイランド」の世界。“彼ら”は眠らされ、摘出され、二度と目覚めることはない
カナダ元アジア大洋州担当大臣 デビッド・キルガー 元国連カナダ代表 デビッド・マタス
■つねに新鮮な臓器の供給源
マタス 中国では、移植の待機時間がはるかに短い。中国国際移植支援センターウェブサイトによると「適合する腎臓をみつける時間はわずか一週間で、長くても一カ月」。さらに「問題が起きたら、新たな臓器が提供され、一週間以内に再手術する」という。肝臓移植の場合、東方臓器移植センターは「平均2週間」、上海長征医院移植センターは「皆、平均1週間」としている。
一方、カナダの待機時間は03年、平均32・5カ月だった。ブリティッシュコロンビア州は52・5カ月。組織的なドナー制度があってもこれだけ長くかかる。
中国にはドナー制度は存在しない。摘出後の腎臓の機能時間は24〜48時間、肝臓が約12時間。となると、中国移植センターが、宣伝通り、驚くほど短時間での移植を患者に保障することは、大きな臓器供給源の存在を意味する。
大量の人たちが、生きたまま準備されているのだ。
中国の臓器移植センターのウェブサイトから入手した資料には、さまざまな負罪証拠(犯罪証拠)がある。大部分が、3月9日以降、カナダのメディアや米ロイター、仏AFP、英BBCなど世界主要メディアの報道後、削除された。しかし当時の情報はアーカイブ(記録保管)サイトで読める。4例を紹介しよう。
▼中国国際移植ネットワーク支援センター(瀋陽市)
中国版は削除された。英語版によると「当センターは03年に中国医科大学附属第一病院に創設された。腎臓移植手術は全国で毎年5千例。政府支援により多くの手術ができる。最高裁、同裁判所の人民裁判官、警察、司法機関、衛生省、民政局は、臓器提供が政府の支持を得るよう共同で法律を制定した。世界でも珍しい」。国家の関与は、実際に移植を受けた患者が軍服姿の者を目撃しているが、このサイトで語るに落ちている。
Q&Aも生きた臓器供給源の存在を示唆する。「われわれは提供者の腎臓機能を、生体から移植する前に保障します。したがって、他国で提供されているような、死体からの臓器より安全です」「Q:膵臓は脳死者から移植されるのですか」「A:脳死者の臓器は良くないかもしれないので、われわれが提供する臓器は、脳死者からのものではありません」。
▼東方臓器移植センター(天津市)
サイトの以下の内容は4月中旬に変更された。「05年1月から現在まで647件の肝臓移植手術をした。待機時間は平均2週間」「2248件の手術を行った」。削除された表によると手術件数は激増している。98年から年を追うごとに9件、33件、111件、240件、512件、801件と激増し、04年は1601件だった。
▼交通大学医院肝臓移植センター(上海市)
ここでも肝臓移植手術が激増した。01年から05年まで7件、53件、105件、144件、147件と推移。
▼第二軍医大学附属長征医院臓器移植センター(上海市)
「当院での手術費用と入院費用は20万元(約286万円)。待機時間は1週間」。手術件数は5年間で数件から130件超に増加。
03年、上海で腎移植を受けた患者は「まず4つの腎臓を持ってきて検査した」と証言する。適合せず、2カ月後に再入国すると「また2つ、さらに4つ持ってきた」という。この提供スピードと数に驚くが、これは同時に、1件の手術成功の裏に、幾人もの犠牲があることをも示している。
医療の専門家もこの速さに疑問を呈している。米国で国際医学会があり、クリントン前大統領の演説後レセプションがあった。ビルの周囲を、助けを訴える法輪功学習者らが取り囲んだ。ドイツ人医師が中国人医師に質問した。「天津だけで2千件の移植が行われた。ドイツは全土で7百件。いったいどこでドナーを得ているのですか」。中国人医師はこう答えたという。「外にいる法輪功の者にきいてくれ」
続く
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【正論1月号】
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