政府は、次世代の燃料資源として期待される「メタンハイドレート」の商用採掘に向けた取り組みを本格化する。今年度から海底に眠る資源を採掘する技術開発に着手、12年度後半をめどに海洋で世界初の試掘を実施し、18年度の商用化を目指す。日本近海には国内天然ガス消費量の100年分に相当するメタンハイドレートが存在すると言われており、資源小国の日本にとって有力な国産エネルギーとなる可能性がある。
経済産業省が01~08年度に実施した日本近海の海底調査の結果、西日本の太平洋側を中心にメタンハイドレートの集積層が広く分布していることが判明している。ただ、いずれも水深500メートルを超す深海の海底にあるうえ、周囲を砂と泥が混ざった軟らかい地層に覆われているため、石油や天然ガスで培った従来の技術では採掘が困難だった。
このため政府は、海洋試験に向け、強い圧力がかかる深海の環境や、軟弱な地盤を再現できる室内実験施設を整備し、具体的な採掘方法の検討に入る。同時に、メタンガスが海中や空気中に溶け出した際の生態系への影響など環境面での課題も探る方針だ。
採掘地は、東海沖から四国沖にかけて広がる「東部南海トラフ」周辺で見つかった集積層を予定しており、14年度までに2度、試験採掘する計画。海洋での資源開発や地底調査に実績のある民間企業の参加も呼びかけ、産学官が連携して早期の商用化を目指す。
新興国の経済発展に伴う需要増で石油や鉱物価格が上昇する中、商用化が進まず手つかずの状態にあるメタンハイドレートに対する国際的な関心は高まっている。日本周辺でも中国や韓国が資源調査に着手しており、政府は他国に先駆けて採掘技術を確立することで、資源獲得競争を優位に進めたい考えだ。【赤間清広】
地中に含まれる植物や動物が分解して発生したメタンガスが、低温・高圧の環境下で水と結合してできたシャーベット状の物質。「燃える氷」とも呼ばれる。石油や石炭に比べ、燃焼時の温室効果ガス排出量が少なく、クリーンな次世代エネルギーとして期待されている。シベリアなどの永久凍土層や、深海底の下の地層に存在する。採掘方法が確立されていないため、商用利用のめどがたっていない。
毎日新聞 2009年7月15日 20時29分(最終更新 7月15日 22時08分)