核搭載した米軍艦船の日本への通過・寄港を容認することで日米両政府が合意した核密約問題で、外務省条約局長(現国際法局長)を歴任した元同省幹部は11日までに、共同通信に対し、核密約の内容を記した英語の「秘密議事録」が、冷戦時代から外務省内に保管されていたと証言した。日米安全保障条約を所管する同省北米局と条約局で厳重管理され、両局の歴代幹部、担当者の間で引き継がれていたという。
密約本文である1960年1月6日付の「秘密議事録」そのものが、日本政府内に存在していた実態が明らかになったのは初めて。これまでは元外務事務次官の証言から、同議事録の内容を記した日本語記録が存在することしか分かっていなかった。村田良平氏ら4人の次官経験者の証言後も密約を否定する外務省は、国会などから真相開示を求める一層の圧力にさらされそうだ。
冷戦後に条約局長を務めた元同省幹部によると、同局内には核密約に関する相当量の記録が残されており、条約課にそれをまとめたファイルがあった。その中には、核艦船の日本通過・寄港を、60年の日米安保改定で制度化された「事前協議」の対象外とみなすことを記した英文の「秘密議事録」が含まれていた。
また同ファイルには、核艦船の通過・寄港を認める「口頭了解」の存在を指摘した81年のライシャワー元駐日大使の発言や、核艦船の日本寄港に関する74年のラロック退役海軍少将の米議会証言を踏まえた外務省内の対処ぶりや協議内容などをまとめた記録もつづられていたという。
元幹部は「(日米両政府代表が)署名した原本は北米局、コピーが条約局に存在した」と言明。藤山愛一郎外相とマッカーサー駐日大使が同議事録を正式に交わした60年1月から、外務省がこれを保管してきたとの見方も示した。