西松事件:元社長、二階派に資金提供認める 地裁公判再開

2009年7月14日 11時36分 更新:7月14日 12時50分

 準大手ゼネコン「西松建設」を巡る事件で、東京地裁(山口雅高裁判長)は14日、政治資金規正法(第三者名義の寄付禁止)違反などに問われ、いったん結審していた元社長、国沢幹雄被告(70)の公判を再開した。ダミー2団体を使い自民党二階派(代表・二階俊博経済産業相)の政治団体「新しい波」のパーティー券を購入したとされる追起訴分の審理があり、国沢被告は追起訴内容を認めた。検察側は冒頭陳述で西松が工事受注の情報収集などを期待して二階氏を支援し、パーティー券を購入していたと指摘した。

 検察側は、民主党の小沢一郎前代表側への献金を巡る同法違反などで禁固1年6月を求刑しており、この日の論告では「政治家側との癒着の実態や献金規模から見て、今回よりはるかに悪質な事実で既に求刑している」と前回と同様の求刑をした。弁護側は執行猶予を求め、公判は即日結審し、判決は17日に言い渡される。

 検察側は冒頭陳述で、同社が以前から官民の工事受注に有益な情報収集や人脈の開拓などを期待して二階氏を支援しており、新しい波が政治資金パーティーを開催するようになった04年以降、同氏の秘書からパーティー券の売りさばきを依頼されるようになったと指摘。総務部長の報告を受けた国沢被告が指示し、政治団体や同社名義などで総額844万円分を購入していたと指摘した。

 追起訴状によると、国沢被告は06年6~7月、4回にわたり西松OBが代表を務める政治団体「新政治問題研究会」「未来産業研究会」名義で「新しい波」のパーティー券340万円分を購入したとされる。冒頭陳述では、同年にこのほか、40万円分を西松が2回に分けて購入、80万円分を関連会社4社に指示して購入させたとしている。20万円以下のパーティー券購入には政治資金収支報告書に記載義務がない。

 小沢前代表側にダミー2団体を介し計500万円を送金したなどとされる最初の起訴内容については先月19日に審理し、いったん結審した。しかし、検察審査会の「起訴相当」議決後の同26日に追起訴されたため公判が再開された。国沢被告は追起訴内容の認否で「その通りであります」と述べた。

  ◇   ◇

 東京地裁は14日、国沢被告の審理に先立ち、外為法違反に問われた元副社長、藤巻恵次被告(68)に懲役4月、執行猶予2年(求刑・懲役6月)を言い渡した。山口裁判長は「国沢被告の了承を得て組織的かつ継続的に行われ刑事責任は看過できない」とする一方、「東南アジアで公共工事を受注するために外国政府高官に金を渡すなど多額の費用が必要だった」として執行猶予を選択した。

 判決によると、藤巻被告は国沢被告と共謀し06年2月~07年8月、5回にわたり海外で捻出(ねんしゅつ)した裏金の一部、計7000万円を税関の許可なく国内に持ち込んだ。【安高晋】

 ◇「問題はない」二階経産相

 二階俊博経産相は14日の閣議後会見で、西松建設をめぐる二階派政治団体のパーティー券購入について「政治資金規正法に基づき、パーティーに協力いただいたというのであれば、きちっとした報告をしている。何ら私どもの方に問題はないと信じている」と述べ、違法性はないとの認識を示した。【赤間清広】

 【ことば】▽西松建設事件▽ 東京地検特捜部は昨年6月、海外事業部元幹部、高原和彦被告(64)=15日初公判=の内部告発に基づき外為法違反容疑で本社を捜索。今年1月、元副社長、藤巻恵次と元社長、国沢幹雄の両被告らを同容疑で逮捕した。3月には民主党の小沢一郎前代表の公設第1秘書、大久保隆規被告(48)を政治資金規正法違反容疑で逮捕し、国沢被告を同容疑で再逮捕した。特捜部は、自民党二階派の政治団体への献金を巡る疑惑で、国沢被告について「既に小沢前代表側への献金で起訴され、追起訴しても求刑や量刑が変わらない」として不起訴(起訴猶予)にしたが、検察審査会が「起訴相当」と議決すると、一転して追起訴した。

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