韓国で胃がんが減らないワケ(下)
韓国人のがんにまつわる3大ミステリー
◆塩分が原因か
それ以外に胃がん発生率が高い理由を説明する要因として挙げられるのは、韓国人の塩分摂取量だろう。冷蔵庫が普及してからは、塩漬けする料理は大きく減少した。それでも韓国では汁物や煮物、塩辛、漬け物などに大量の塩分を投入し、またこれらを非常によく食べる。
2006年に発表された国民栄養調査によると、30歳から49歳の韓国人男性の1日の塩分摂取量は17.1グラム。世界保健機関(WHO)が定める基準値の6グラムから8グラムに比べて、2倍から3倍も多い。ちなみに日本は11.4グラム、英国11.0グラム、米国では8.6グラムだ。口では薄味を好むとは言え、韓国人の実際の塩分摂取量を調べると、非常に高い数値がはじき出される。汁物に使われる塩分はどこの国の料理でも基本的に多くなるものだが、韓国料理は水分も多いため塩味を感じにくくなっており、それだけ塩分の使用量も多くなるというわけだ。
塩分は胃の中に長い間とどまり、胃の粘膜を弱めて胃炎を起こす原因となる。そのためこれが胃がんへと発展する可能性が高まる。それでも韓国人の塩分摂取量は今も増加傾向にある。塩分の主成分であるナトリウムの1日の摂取量は、1998年の時点で4542ミリグラムだった。それが2005年には5289ミリグラムにまで増えた。とりわけ韓国人は胃がん発生の大きなリスク要因とされる硝酸塩が多く含まれる塩辛など、塩で保存して食べる料理を非常に好む。
元国立がんセンター院長でソウル大学医学部予防医学科の柳槿永(ユ・グンヨン)教授は、「ヘリコバクターに感染した状態で塩辛い料理をたくさん食べ、その上喫煙率も高い。これらの要因が胃がん発生のリスクを互いに高め合っている。これが韓国人に胃がん患者が非常に多い原因ではないかと考えられる」と述べた。
一方で柳教授は「西欧式の食事に慣れている若い人たちには、胃がんの発生が少しずつ減る傾向にある」との点も指摘した。日本で胃がんが減り始めたのは1990年代に入ってからのこと。塩分を抑えるキャンペーンを大々的に展開したのが功を奏した、と専門家は指摘する。韓国でも幸い、胃がんによる死亡率は徐々に低下しつつある。80年代中盤の男性の場合、10万人に60人以上だった胃がんの死亡者数は、2000年代半ばごろからは20人台に減った。がん検診の機会が増加し、早期に胃がんが発見されるケースが増えたからだ。
ソウル大学病院腫瘍内科の方英柱(パン・ヨンジュ)教授は「韓国では胃がんの発生率が非常に高いため、1年に1回は内視鏡検査を受けて胃がんを早期に発見するよう努める必要がある」と勧めている。胃がんは早期(1期)に発見された場合、完治率は92%まで高まるとされている。
金哲中(キム・チョルジュン)医学専門記者
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