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貨物検査特別措置法案:海自出動 特別時のみ

 政府は7日、安全保障会議と臨時閣議を開き、北朝鮮に出入りする船舶などへの貨物検査特別措置法案を決定し、国会に提出した。核実験を強行した北朝鮮への国連安全保障理事会制裁決議を履行する法案で、政府は米韓など国際社会との連携を示すため、早期成立を目指す。民主党の協力を得やすくするため、船舶検査は海上保安庁を主体とし、海上自衛隊の関与を限定。民主党の対応が注目されるが、次期衆院選に向けて与野党の攻防が激化しており、流動的な面もある。【仙石恭】

 ◇早期成立へ関与限定

 法案では、貨物検査は領海、公海を問わず海保が主体となる。対象船舶が重武装しているなど、海保が対応できない「特別の事情がある場合」だけ、自衛隊法82条の海上警備行動に基づき海上自衛隊が出動する。海自は貨物検査が行えないため、その任務は護衛艦やP3C哨戒機による情報収集や追尾が中心となる。

 貨物検査は、決議に基づき禁輸対象となった核・ミサイルなど大量破壊兵器や武器を積んでいると認められる場合に実施できるようにした。国内の港湾や空港では、税関による同様の検査ができるようになる。

 海保による貨物検査では、船舶が属する「旗国」と船長の同意を得て、対象船舶へ立ち入ることができる。禁輸物資があれば船長に提出を命じ、保管する権限を持つ。検査に応じない場合は、近くの港へ向かうよう回航命令を出せる。ただ▽立ち入り検査▽禁輸物資の提出命令▽回航命令--のいずれも旗国の同意が必要だ。提出命令に応じない場合は、2年以下の懲役または100万円以下の罰金など罰則規定を設けたが、強制力はない。「旗国の同意」は国連決議に基づく措置だが、そもそも同意を得るのは困難との見方があり、与党内からは「実効性はあるのか」と疑問視する声もある。

 海保によると、現行の海上での検査では、対象船舶に乗り込むことは技術的に難しいため、寄港してから実施している。新法でも貨物検査は、通常はなく港湾で実施することを想定している。

 ◇迫る会期 民主対応焦点に

 「それほど反対する立場ではないような気がする」。民主党の鳩山由紀夫代表は7日の記者会見で、貨物検査特措法案の成立に前向きな姿勢をにじませた。鳩山氏は6月17日の党首討論でも「できるだけ早く結論を出す」と強調していた。

 自民党安全保障調査会長の中谷元・元防衛庁長官は、法案提出前に民主党の鉢呂吉雄衆院議員らに接触し、同党の感触を探ってきた。今国会の会期は28日までで、成立には民主党の協力が欠かせないからだ。中谷氏は7日、自民党の関係部会で「法案の内容を見ると、民主党もほぼまとまって賛成していただけるのではないか」と期待感を示した。

 ただ、鳩山氏は、法案が国会承認を不要としていることについて「議論が必要」とクギを刺した。もろ手を挙げて賛成ということではなく、修正協議を早期成立に応じる条件と考えているようだ。

 法案成立は、会期中の衆院解散がないことも大前提。12日投開票の東京都議選の結果を受けた麻生太郎首相の判断によって左右される。自民党内からは「安保理決議は国際公約だから、法案成立まで首相は解散できない」(幹部)として、早期解散けん制に法案を利用する動きも出ている。

 政府高官は6日、主要国首脳会議(サミット)出発前の麻生首相に「(12日以降は)懸案の法案の行方を見た方がいいのではないですか」と進言したが、「そうだな」と短い返事だけだったという。

毎日新聞 2009年7月8日 0時40分(最終更新 7月8日 0時43分)

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