Googleの新しいChrome OSがMicrosoftに対する直接攻撃であるとさんざん言われている中、Appleにとってどういう意味があるのかを、一部の人々が注目し始めるのも当然だろう。世界で2番目に普及しているOSを作っている会社である。答えはこうだ。Apple社の製品には、ほとんど影響がない。取締役会には、ずっと大きく影響する可能性がある。
この件についてはすで一部の人たちが書いているが、肝心の点が抜けていると私は思う。第一に、はっきりしている点。来年Chrome OSが公開される時点での主要ターゲットは、Appleが参入していない市場、ネットブックだ。もちろん将来、恐らく来年Appleはタブレットコンピューターのようなものを出すに違いないが、それはネットブックではない。iPhone OSかOS X、またはその両方を組み合わせて特別な味付けをしたOSが走ることが確実なタッチスクリーンデバイスだ。そしてそこではiPhoneと同じくスタンドアローンアプリが動くはずだ。これはChrome OSの狙うところではない。
第二に、GoogleのChrome OSに関する長期計画が、ネットブックの枠を越えてもっと一般的なPCへと拡大していくことは明らかであり、これもまたAppleに影響するとは考えられない。Appleは高いマージンで売れるコンピューターを製造しているのだ。このためにApple製品は一部のPCより高価であり、このことはMicrosoftの広告キャンペーンのおかげで、しょっちゅう耳にしている。われわれが生涯二度と経験することがないであろうこの最悪の経済下でさえ、Appleはこのやり方をあまり変えていない。Appleの客がこの差額を払うのは、すばらしいハードウェアとAppleの揺るぎないソフトウェア(OS XとiLife)の組み合わせには、Windowsベースマシン以上の価値があるからだ。
Chrome OSは、Windows環境からは逃がれたいが、Appleのプレミアム価格は出したくないという人たちに、直接アピールするものだ。要するに、ターゲットはローエンド市場であり、これまたAppleの参加していない分野だ。
第三に、現在Appleは、はっきりとMac OS Xにコミットしているが、同社の稼ぎ頭は何をおいてもハードウェアであることを忘れてはならない。これはMicrosoftとは正反対だ。今年のWWDCで、Appleは重要なデータをごまかそうとしていたが、iPhone OSは急速に、OS Xの主要バージョンになりつつある。Appleが米国内でのAT&T独占から逃がれ(来年にはそうなると思う)、中国進出(今年の終りか来年には起きると思う)などを果たすことができれば、iPhone OSの行く手を遮るものはない。数年のうちにAppleは、普通のコンピューター会社よりモバイル会社(iPhoneとタブレット)になっているかもしれない。
聞きたくない人が多いかもしれないが、これは真実だ。トレンドは嘘をつかない。そして、Appleが2007年に社名から「Computer」を外したのにも理由がある。
そしてGoogle Chrome OSはモバイルOSではない。それはAndroidだ。多くのデバイスに載るようになれば、次の10年、Chrome OSではなくAndroidこそがOS X(Mac OS Xとは言っていない)にとって直接のライバルになるだろう。
とはいえ、AppleとGoogleの関係については、指摘しておかなければならない重要なポイントがある。VentureBeatのAnthony Haが昨晩書いたように、今回の動きによってGoogle CEOのEric Schmidtは、Appleの取締役でいられなくなるだろう(GenentechのCEOで現在AppleとGoogle両方の取締役会に籍を置いているArthur Levinsonも同様)。5月にFTC(連邦取引委員会)が、SchmidtとLevinsonの両社取締役会での役割を、反トラスト法違反の可能性があるとして調査したとき、われわれはGoogleに対する警告としか考えなかったので、SchmidtがAppleの取締役を外れることはないだろうと書いた。実際彼は辞めなかった。
ところがGoogleのOSビジネス参入によって、事態はさらに不透明になった。2つのOS(Chroms OSとOS X)がお互い大きな影響を与えあうことがないとしても、である。すでにSchmidtは、Appleの取締役会ではiPhoneの話題になると席を外すことになっている。今後はOS Xの話題でも同じことをする必要があるかもしれない。そうなると、SchmidtとLevinsonの二人がいる部屋で開かれる取締役会で、他に話すことがどれほどあるのか疑問になってくる。
GoogleのChrome OSの具体的計画について、政府が大して理解できるとは思えないが、この関係については、すぐ綿密に調べ始めるに違いない。そうすれば、少なくともSchmidtが、そして恐らくLevinsonも近いうちに辞任を余儀なくされるだろう。
二人とも取締役会で多くの先見の明を与えてきたベテラン幹部であり、Appleにとって不満ではあろうが、心配はない。COOのTim Cookが役員に加わる余地ができたことにもなる。
Chrome OSとOS Xそのものについては、これ以上無駄な考えを巡らせるのは止めにする。本格化するまでには数年かかるとしても、これはMicrosoftの中核に対するGoogleの直接攻撃である。現在両社で交されている一連の戦い(Android vs Windows Mobile、Bing vs Google検索、Google Docs vs Office、等々)の中で最も派手な動きかもしれない。いずれも相手はMicrosoftであってAppleではない。そしてAppleにしてみれば、自分のライバルでもある相手をGoogleが攻撃していることが心配で夜も眠れないとは思えない。
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(翻訳:Nob Takahashi)
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翻訳記事だとしても、長崎原爆の写真を使うのは必然性があるとは全く思いませんし、非常に無神経だと感じます。